ベースが語る果てしない物語
ミニチュア。君がコレクションを楽しんでいるのであれ、ペイントを楽しんでいるのであれ、ジオラマ製作やゲームのためであれ、ミニチュアホビーにおいて欠かせない「いの一番」、それがミニチュアの存在だ。
そして多くの趣味人がことさら意識せずによく触るものがある。違う、カラーや筆、工具やダイスの話じゃない。今日俺が君に届けたいのは、ミニチュアの立つ場所…つまりベース(台座)の話だ。
「幻想世界の窓辺から」シリーズの一つとして、今回はミニチュアのベースが持つ歴史とシーンでの変遷を掘りさげてみよう。
それじゃあ始めようか!
ミニチュアのベースはどうして存在するのか?
そもそもの話となるが、どうしてミニチュアにはベースがつくのだろうか? 見た目がいいから? ゲームルールのため? なんとなく? いやいや、実のところ、ものすごく根源的な理由だ。それは、ミニチュアが自立し、倒れないようにするためである。
小さな人形というものは、ゴムであれ、塩ビであれ、プラであれ、レジンであれ、メタルであれ、倒れずそのまま自立することが難しい。ヒザをついているとか、寝転んでいるなどで設置面が広ければなんとかなることもあるが、立っている状態だと、まずムリである。
我々人間は、全身の骨格と筋肉をうまく使って体を支えているわけだが、ミニチュアはどんなに精巧に作られていても自分で体のバランスを調整できない。だから、台座なしでそのまま立たせ、なおかつ倒さずに保持することは難しいんだ。
キン消しやネクロスの要塞チョコについていたロールプレイングモデル、魚肉ソーセージに付属していた特撮ヒーロー消しゴムなんかを知っている人はわかるだろう。いくら人の形をしていても難なく自立させるのは至難のわざ。重量バランスが良くて立てる奴はたまにいるが、それでもちょっと揺れただけでパタンと倒れてしまう。
塩化ビニール製やゴム製の人形なら倒れても壊れたりしないが、メタルミニチュアの場合、倒れたら衝撃で壊れたり、ペイントがハゲたりしてしまうよね。ゲームで用いるならなおさらだ。
それゆえに、メタルミニチュアは、ファンタジーミニチュア黎明期とよべる70年代、あるいはそれ以前からずっと、台座であるベースと共にあった。
一体型メタルベースしかなかった時代
10mm、15mm、25mmといったミニチュアならではのスケールは、元々ヒストリカルミニチュアゲームと深く関連した縮尺だ。70年代にファンタジーミニチュアシーンが形成されると、25mmミニチュアと銘打つ各社のミニチュア(TSR、ヘリティジ、グレナディア、ミニフィグなどなど)がD&Dを始めとしたRPGでも用いられるようになり、やがては28mm、30mm、32mmとミニチュアの縮尺は大型化していった。
スケールやジャンルの広がり、あるいはメーカーの区別なくメタルミニチュアたちについて回ったのがベース…つまり、彼らが自立するための台座の存在である。
当時からミニチュアには台座がついていた。それは円形だったり、楕円形だったり、四角だったりして、各社のシンボルマークともなっていたんだ。
ミニチュアのポーズに関わらず、正方形の薄い四角メタルベースはヘリティジのシンボルマークでもあった。ダンジョンの石畳を思わせるディティールが造形されており、公式版権の看板こそないものの、すでに流行していたD&Dでの使用をかなり強く意識している。実際はベースの安定が悪く、トップヘビーなミニチュアはしばしばこけた。趣味人たちはしばしば硬貨やプラ板に接着してゲームを楽しんだという。
グレナディアは、ベースの形状や厚みに一貫性はないが、それぞれのミニチュアが安定して自立できるよう配慮され、地面が造形されているものもある。ベースの統一感ではなく、それぞれを引き立てる台座。そしてベースの載せ替えを必ずしも必要としない安定感。それらは当時の革新であり、まさにグレナディアの真骨頂だった。
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