【世界仕事のキーワード #2】Constructive Criticism
【世界仕事のキーワード】シリーズでは、日本の枠を越えて仕事をする時に、知っておくと役に立つ用語やコンセプトなどを解説しています。
今回は "Constructive Criticism" = 建設的な反論、というコンセプトをとりあげます!
What is "constructive criticism"? - constructive criticism の意味
『Constructive Criticism』、日本語訳としては『建設的批判』が一般的な訳語としてある程度定着しているのではないでしょうか。
しかし、この訳では本来の意味がわかりにくく、誤解されてしまっているケースをよく見るので、ここで一度きちんと整理しましょう。
まず、『constructive(※形容詞。元の動詞は construct)』の語源はラテン語の『construere』。
『con(一緒に)』+『struere(積む、建てる)』、という言葉です。
これを踏まえて下の『constructive』の意味を見ると、ニュアンスが頭に入りやすくなるのではないでしょうか?
Serving to improve or advance; helpful: constructive criticism
Of or relating to construction; structural
(Law) Inferred, imputed, or presumed from circumstances
一番最初の定義の用例にそのまんま『constructive criticism』があります。
つまり、『constructive criticism』における『constructive』は、『何かの改善や前進に役立つ』という意味、と言うことができます。
続いて『criticism』の方を見ると、こちらの語源の大元をたどるとギリシャ語の『krinein(判事、裁判官、意思決定)』に英語の『-ism(体系や思想を示す名詞を作る接尾辞)』を足したもの。
『Criticism』の定義については、調べると『criticize すること』的な定義が出がちなので、ここではこの『criticize』の方を見てみましょう。
To find fault with
To judge the merits and faults of; analyze and evaluate
To act as a critic
これを見ると、『欠陥、欠点を探す』『長所、短所を判定する』『分析し評価する』という意味なのがわかります。
そしてこれに『-ism』を足した『criticism』は、この定義の最後に『〜行動(欠陥、欠点を探す行動、など)』が足されたもの、ということですね。
まとめると、『constructive criticism』の意味とは、『物事の改善や前進に役立つ分析・評価をする行動』ということになります。
なぜ constructive criticism が必要なのか?
Constructive criticism の必要性は、「もしそれがなかったら」という想定をすると非常にクリアに見えてきます。
周囲をイエスマンで固めると、何が起きますか?
問題があるのがわかっているのに、社内で忖度しあった結果、問題がある製品を世に送り出したら?
あるいは、改善や前進につながるかどうかを検討せず、相手の受け取り方も考えず、一方的に相手のダメなところを列挙した場合、そこからどんな結果や影響が生まれますか?
Constructive criticism は、協力関係にある組織や人間関係において、落とし穴や傷を見つけ合い、ふさぎあう行為です。
外の世界にも優しい人や組織はたくさんあり、同じように穴や傷をふさごうとしてくれる場合もありますが(※そういう相手は大事にしましょう)、穴や傷に刃を突き立てて、ついで塩を塗り込まれるケースも多々あります。
また、そもそも穴や傷が大きすぎ、周りが何もしなくても自分が耐えられなくなって倒れてしまうこともあります。
このような大きな問題を事前に防ぐため、および問題が発生した時によりよく対処していくために欠かせないプロセスがこの constructive criticism、ということです。
Constructive Criticism:具体的には?
では、『constructive criticism』という概念を、より具体的な行動レベルに落とし込んでみましょう。
Step 1:あえて反対意見を述べる立場を取り、ツッコミどころを探す
まずはツッコミどころに気づくところが第一歩となります。
本心では自分が大賛成、大好きなものが対象であっても、当事者の視線では気づかない落とし穴、傷を見つけてあげるために批判的に見つめ直してみましょう。
この時点では、情報が精査できていなくてもよく、誤解があってもよいので、とにかく問題点、問題になる可能性のある点にできるだけ多く気づくことを重視します。
まだ情報は精査できていないので、この時点では、自分の気づきをそのまま提供すべきではありません。
Step 2:問題点を精査し絞り込む
相手に情報提供する前に、まず自分で下記をしっかりチェックします。
自分が見つけた問題が、criticism の対象物にとってなぜ問題であると言えるのか
その問題により生じる影響、結果は何か
その問題は現実的に修正可能か
その問題の影響、結果と、修正にかかるコスト(※資金面だけでなく人、物、時間などのコスト含む)を対照 → それでも修正が必要か
優先度はどのくらいか
チェックの結果、優先度の高い問題点を絞り込んだら、続いてさらにそれをふるいにかけていきます。
Step 3:Constructive criticism を提供する
ここでは Step 2 で絞り込んだ問題を俯瞰的に見て、実際に相手に提供する項目をふるいにかけていきます。
考慮すべき点には次のようなものがあります。
そもそも constructive criticism がこのタイミングで必要か
問題の緊急度
問題の優先度
相手の現在のキャパシティ
相手の(わかれば)性格(特に constructive criticism への反応の仕方)
そしていよいよ情報提供…というところまでいったら、ここで重視するべきなのは次のポイント。
Be specific:問題視している箇所、対象、言動を具体的に明示
Focus on the facts, not your opinion:実際に見聞きした事実に集中し、「自分がその事実をどう解釈したか」は情報提供に含めない
Focus on the situation, not the person:問題が起きた状況、環境などの外的要因に集中し、『人』を責め(ているように聞こえ)るのを避ける
Make it actionable:constructive criticism を受ける相手が実際に取れるアクションに話を落とし込む
Remember "more is not always better":「多ければよい、というものではない」ことを覚えておく(=提供する情報の量を絞り、相手のプレッシャーを軽くすること)
どれも、自分が提供する constructive criticism が物事や状況を改善する、または前進させるための行動・変化を起こす原動力となるよう最大限努力する上で必要なことです。
「相手の成長を願って厳しいことを言う」という人、周りにもいるのですが、それで相手が潰れてしまったら成長もへったくれもありません。
第三者として全体像を俯瞰できる立場ならば、相手の反応まで見極め、最大限の効果を発揮するよう調節するところまでやって初めて「いい仕事した」になります。
人に改善点を指摘したのに改善されなかった → 「やっぱりあの人はダメだな」と思ったことがある人(※過去の自分含む…)は、自分の constructive criticism スキル不足を反省して、技磨きに精進した方がいいかもしれません。
その技磨きにも constructive criticism が活用できるので、ぜひ使って、全体の生産性や効率、品質アップに貢献していきましょう。