文化財運営の裏側、ほんの少しお見せします。 指定管理者になった私たちが、6年間で経験し、学んだコト その①
「場を造り、育む」という発想
無鄰菴・岩倉具視幽棲旧宅での指定管理運営のミッションは「庭に集い、庭を育む」、つまり、指定管理運営を通じて、様々なお客様の集う「場」を造り、その価値に共感いいただき、ともに育んでいくことです。
これは、私たちの本業、造園業の本質である「庭を造り、育む」ことに根差し、また同時に公共財かつ文化財としての無鄰菴・岩倉具視幽棲旧宅指定管理運営の基本理念でもあります。「場」を造る、というと工事のような、ハード面での作業をイメージされるかもしれませんが、お客様の集う場所そのものを造り出すという点で、接客サービスや予約システムの設定などソフト面も含みます。
マルチタスクが、場づくりのキホン。
無鄰菴・岩倉具視幽棲旧宅のスタッフは、施設の清掃から巡回、HPの更新などのシステム業務から経理まで、ほぼ全ての業務をマルチタスクで担っています。
庭園作業は庭園管理部という職人さんの部署がしますが、朝の手水鉢のお掃除、門掃き、打ち水などは我々オペレーション担当者のお仕事です。例でいうと、無鄰菴では新規のスタッフへの最初のお仕事引継ぎは、朝の開場準備作業である、手水鉢のお掃除、門掃き、打ち水の仕方から始まるのです。
役職上は「所長」の肩書がある私も、朝の開場作業で手水桶をもって打ち水をし、トイレの掃除、カフェの対応もします。
「自分たちで全部やること」で何が見えるのか
とはいえ、やはり最初の立ち上げ時から数年は、何もないところから体制やシステムを確立することは大変でした。常に試行錯誤をしながら改善を繰り返しました。
チケットデザインやパンフレットも自分たちでデザインをしているのですが、初版のチケットは連番を印字していなかったので、繁忙期は毎日1000枚以上を営業しながらナンバリングスタンプで押印したり・・・泣。
やってみて、わかったこと
様々な苦労はあるものの、マルチタスクでの指定管理運営をする中で分かったこともあります。それは、自分たちの造り出した「場」がお客様と文化財を繋いでいることを体感することで、お客様に自信をもってサービスを提供でき、さらにやりがいにも繋がるということです。
文化財施設の運営は歴史的に価値のある建築物や庭園に関わることができる、という点で稀であり、とても魅力的なことであると思います。
スタッフは皆、無鄰菴・岩倉具視幽棲旧宅に思い入れを持ち、働いています。
さらに、その価値をお客様に伝え共感していただく「場」造りにも携わっていると感じることで、より一層自分たちの仕事の意義を実感できるようになったのではないかと、立ち上げからの6年間を振り返り、感じています。
今回は無鄰菴・岩倉具視幽棲旧宅のスタッフのお仕事について、ご紹介しました。
次回のコラムは、文化財施設を運営する上でとても大切な、学芸員スタッフのお仕事について無鄰菴・岩倉具視幽棲旧宅 主任学芸員の重岡さんに紹介していただきます。重岡さん、よろしくお願いします!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?