席数減らして営業するべきではない!
厚生労働省が推奨する“新しい生活様式”は国策として掲げる必要があると理解できるが、これを遵守せよと言うことは飲食業、特に居酒屋・パブ業態(アルコール売上比率の高い業態)にとっては死刑宣告も同じである。
小売業や飲食業の売上算出式は“客数×客単価”。飲食業の場合、客数は“席数×回転数”によって算出される。回転数は営業時間によるが、摂食は生理行為なので一般論として人が空腹になる時間は同じで、且つ、始業・休憩・終業時間の兼ね合いもあって、店側の都合で変えることは出来ない。更に、居酒屋業態の店舗滞在時間は120分以上とファストフードや専門店・レストラン業態の滞在時間30~90分と比べて長時間であるので、そもそも回転数の増加は困難である。
となれば席数が重要であるが、コロナ禍で言われる“他人との距離”、を取る為に席を間引いて営業すると言う事は席数を減らした割合分、確実に売り上げ減少となる。
それを回避するには客単価を上げればいいと言う理屈になるが、客単価は店側が対処でき出来る事に違いなく、“単品単価×注文数”によって算出されるが、注文数は人の胃袋の大きさによるものなので、食べる量を増やすことは困難で、酒類などの飲む量を多少増やせるものの、それに伴い滞在時間が延びたり酔う度合いが深まるので店側も客側も喜んで行う事ではない。
となれば単品単価が重要であるが、単価を上げる前提で創意工夫しようも従来の商品の単なる値上げとはいかないので、従来品に手を加えては従来顧客が逃げてしまう可能性を孕むので、新商品として提供しようも余程の価値が備わっていない限り、それを注文しようとはならず、なったとしても何割のお客が注文し続けてくれるのだろうか大きな疑問が湧く。そもそも、コロナ禍で不景気感漂う時勢柄、店側が値上げを行う事は、ただでさえ減少が見込まれる客数の更なる減の大きな一因となる為、決して取ろうと思う手段ではない。
長々と如何に“人との距離をとる=席数を減らす”事が店側にとって愚行で店を死に至らせるかを述べてきたが、言いたいことは“席数を減らす”という事をせずに、従来通りの席数で営業し、違った方策で営業すべきという事である。
そもそも、何故“人との距離”をとらねばならないのか?この点を理解しなければならないし、伝えなければならないが、どこにも書かれておらず、事象だけが独り歩きし求められている。要は、空気感染しないと言われている前提で、他人の唾液を主とする体液を浴びない、自分のものを飛散させないようにする為、である。
これが“人との距離をとる”本質的な理由なら、席数を減らさずして他にとる手段は見えてくる。
・入店時に店員による手の消毒
・歓談時のマスク装着の同意取り付けと店内声掛け
・隣席、対面席間の透明アクリルやシートによる間仕切り
・シェア回避の為の料理ポーションダウン
・客席換気扇の増設と焼肉店レベルの排気能力アップ
私に言わせると、お客の自己責任で来店し、自らも予防回避に努めてもらえばいいだけの事。100%の対策など無いし出来る訳もない。悲観的になったり気後れする必要もない。店側がとれる対策は最大限講じ、堂々と明るく元気に外食でしか味わえない出来立ての商品、食欲をそそる知識と情報の詰まった商品説明や心地よくなる接客の提供に邁進する事だと思う。
言い換えると、お客と店の信頼関係を如何に構築するか?が生き残る道と言える。特に滞在時間が長く複数人での来店になり、歓談・談笑する事を主たる目的として利用する居酒屋・パブ業態は“商品力”は勿論、“接客力”を以て、来店するお客と積極的に接点を設け、意思疎通を行えるか?が問われていると思う。
敢えて言うならば、商品力も接客力もない店は確実に滅びる時と言えよう。何となくやっていた店、やれていた店はこれを機に無くなり、店の真偽を試されている。言うなれば飲食店の質の向上となる変革期に入っていると言え、玉石混交を打開する“本物だけが生き残る”いい機会とも言える。
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