ピンときた、パンと突き放した、ポンと生まれた
波がある、冷静さだけが手綱になると知る、
とても穏やかな太陽、秋の日はこれまでの日々の一番綺麗なところだけを思い出させるから、もし自死をするのなら絶対によく晴れた秋の15時がいい、ちょっとだけ、どうでもいい海の岸辺あたりがいい、何人かの、大好きな人の顔を思い浮かべながらがいい、その時だけは音楽を聴かずに、頭の上をちょうど烏のつがいが飛んだ時がいい、
少し前に犬が死んだことをまだ受け入れられていない、写真を直視できない、胃の中にあいつの毛の塊が生まれてしまう、捨てられない毛の塊、あれどこにいったかな、爪を切られるのが嫌いで、雷も嫌いで、両親がそれぞれため息とドアノブを吐くとき、眉を顰めて静かに丸まっていた、犬、10年間私も同じ気持ちだったよと今更伝えられない、犬、気がついた時には冷たい犬だった、いつもしていたみたいに頭に顔を埋めても、だんだんと腐った肉の匂いがしていった、眠っていた、体をビクビクとしならせて、あんなに静かで利口だったあいつからは想像できないような声が、とめどなく溢れていた、犬、やさしい犬が、いたことを忘れて毎日忙しなく生きている、艶のある黒髪がお揃いだったのにもうずっと同じ色じゃない、茶色、オレンジ、オリーブにピンク、ブルー、シルバー、その間もずっと犬は黒いまま、あの小さな丘の上で眠っていた、犬、あまりに突然だった、犬はきっとまだずっと生きていると思っていた、愛していた、愛していると思っていた、犬はあたたかな洗濯物の匂い、気まぐれに帰ってもいつでも私のピアノですやすや眠ってくれた犬、綺麗な瞳、短い足、縮れた根元、星の匂い、