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ファイヤーダンスを花束に

12月21日(土)

テレビ越しでも「勝てそう」な人って、何となくわかる。
引退間際の浅田真央は、いつも何かに負けないようにしている寂し気な表情が尾を引くように残っていたし、レクイエムを演ってた頃の安藤美姫は負ける気がしなかった。オリンピックの代表を掴んだ時の鈴木明子もそうだった。

そういう意味では坂本花織は不安げな顔をが衣装の強さに負けていたように思うし、紀平梨花は4回転を入れそうな顔をしていなかった。それでも紀平がトリプルアクセルに3回転のコンビを付けてきたのはさすがだったけど。
樋口新葉は、今までだったら気持ちだけ先走ってミスをしてもおかしくなかったと思うのに、全日本にピークを合わせたと言っていただけはあった。全日本のタイトルがない。グランプリシリーズでも結果が残せない。まずは、シーズン後半に進まなくては。その気持ちが痛いほど伝わってきた。彼女は今の日本では珍しいタイプだし、出来ることなら、全日本に照準を合わせずに世界に照準を合わせて欲しいけれども、スコープが手に入らないようじゃ話にならない。彼女はその身の程を知っていた。密かにずっと応援していたので、良い演技が出来たことが本当に嬉しかった。

私はそもそも、闘志むき出しの女性が好きだ。フィギュアスケートは芸術でもあるがスポーツだ。スポーツである以上、勝ちたいと思うのは当然だ。
太田由希奈、中野友加里、樋口新葉。まあ、私が好きになった女子スケーターについて、共通点を拾うのは難しくないかな、と思う。

それと同時に、スケートを滑るのが本当に好きだ、というのが溢れてしまうスケーターもまた好きだ。三原舞依もそのタイプだが、今年の女子でいうと圧倒的に新田谷凛が良かった。ショートだと本田真凛も良かったけど、フリーは失速してしまった。
新田谷は今年で引退と明言しているから溢れる感情が多かったのだろうとは思うが、心がピークを迎えても、技術が合わせられるとは限らない。心体合わせてあの表情、あの演技。私は新田谷について多くを知らないが、きっと彼女の積み上げてきたものが全部はまったんだろう。

一方で、体が追いつかなかったのは大庭雅だ。引退を迷って、それでもスケートが好きだからを手を尽くしてスケートを続けてきた人だ。演技中の幸せそうな笑顔は誰にも劣らないと思う。シリアスな顔が出来るのかと不安になるほどに。うまくいってほしかったけど、ショートのミスが大きく、フリーの演技を全日本の舞台で見ることはかなわなかった。
いつかは彼女も引退を決めるだろう。それがいつのことかはわからないが、彼女の納得できるタイミングであってほしいと切に願う。

それを見ながら思うのだ。私にとって人生の大切な選択は、あと何個あるのだろうと。みんな何かを選んでいる。そして、終わりを決めるタイミングは特に難しい。誰かが引導を渡してくれるのならば楽ではあるが、それは責任を伴わない代わりに実感も伴わない。

これから先、ちょっとしたものから大きなものまで、何かを捨てる選択をしなければならない時が来る。まずは、今は問題なく使えてている大型家電。いずれ耐久年月が来て廃棄を迫られるだろう。その処理は、たぶん思っているより難しい。
それから、生家。親が死んだとき、後始末をするのは私しかいない。その時私は、進む勇気や引く勇気を持ってしてそれらの適切な処分ができるだろうか。
最後に、自分の命。延命治療をしないという選択がもしも一般的になったとして、口からものが食べられなくなったらとか、文字が読めなく/書けなくなったらとか、自立できなくなったらとか、私は自分に線引きができるだろうか(というか、これはまず親について選ぶ日が先に来るのだろうけれども)。明日になったら何か変わるかもしれないし、という悪魔のような妄言に惑わされて、あらゆる迷惑を掛けながら千切れていくことを安易に選んでしまわないだろうか。いや、その頃には妄言も耳に届かないか。

明日は男子フリー。引退を選び、物議を醸しながら現役に復帰し、来期はアイスダンスに転向する高橋大輔。出来栄えと4回転アクセルに拘る羽生結弦。今季どっぷり沈んだ宇野昌磨。氷の上には人生がつまっている。
ちなみに男子は友野一希を応援している。本田武史、小塚崇彦、友野一希。こっちの好みの傾向は、ちょっとラインが取りづらい。

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