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ぼくらの100日モラトリアム(14/100)

93日前(7月25日・火)

まつげパーマに行く。ただでさえ体調不安があるので、せめてまつげくらいは上を向いていてほしいので。
サロンの担当さんに「妊婦さんはまつ毛が抜けやすいので、気をつけてくださいね」と言われるも、私の自まつげはきれいに斜め下に伸びていくので、たぶんビューラーでグイグイやる方が抜けると思う。だから。結果まつパの方がダメージが少ない……と思う。

いまいち仕事のやる気が出ない。 良くしてもらってると思う。
だけど体も心も追いつかない。ずっと何かしら欠けたところがある。
その気力を補うための整体とまつパだったけど、はたして意味はあったのか。 それでも、ホルモンが乱れた時のメンタルの乱れ具合には程遠いので、生理の再開が怖くて仕方ない。
浄化ついでに、時間を吸い取られていたたまごっちのアプリをアンインストールする。だけどその時間がツムツムに戻っただけだった。これが262の法則……。

どうにも疲れきってしまい、風呂に入らず寝ることにする。
夫にチャチャッとシャワーすればいいじゃんと言われるも、いやシャワーはそれでいいんだけど、髪の毛が30分乾かないんだわ。と思う。


92日前(7月26日・水)

ここのところ、家事も夫にお願いすることが多くて悪いなあと思い、彼の好物であるどら焼きを買って帰るか悩む。
しかし私は検診でひっかかってしまった妊娠糖尿病の再検査が週明けにあるので、悩んだけどそれを終えてからにしようと決めた。

在宅で仕事をしている夫が忙しいらしい。今住んでいる部屋は胸を張って狭いと言えるのだが、その近距離に私がいるので集中できないらしく、「(いつもは早く寝たがるくせに)寝ないの?」と煽られる。
それなら、と思ってふて寝するで準備していたのに、寝る直前で「リフォームの壁紙早く決めて」と言われて眠らせてもらえない。 明らかに機嫌が悪い。ああ、どら焼きを買って帰るべきはやっぱり今日だったのだ。この狭い部屋には、感情を受け止める余裕も逃がすスペースもないのだから。
かといって、リフォーム先、つまり産後住む予定の家に早く引っ越ししたい、と言えない程度には未来への未知の不安がある。

あーあ、私ってよくこの自分の作業机のない部屋で一年以上もやってきたよな。在宅勤務多めのあなたの机が必須なのはいいとして、私だって落ちついて座って作業できる場所が欲しかった。そういう場所がないから、ついつい布団に転がってしまうのだ。という言い訳を作ってしまうからダメなのだ。
深夜のダメ恋図鑑に課金しながら、夜が更けていく。


91日前(7月27日・木)

ネガティブなことを考えるから体調が悪いのか、体調が悪いからネガティブなことを考えるのかわからない。
夫が出社の日だが、帰りが遅くなるという。こんな日は、こんな時、私のご飯を美味しくないと思うから早く帰ってこないのかなとか考えてしまう。
ていうか、私基準では十分食べられる食事なんですけどね。

たぶん、夫は仕事が忙しいと同時にマタニティブルーなんだと思う。マリッジブルーもしっかり発症してたし。
自分の機嫌は自分で取ってくれよと思う反面、顔色や言葉の裏の裏を読む癖は抜けない。誰に対してだってそうだ。

胎動で腹が波打つ様子を目視で確認する。 かなり強めに蹴られることも増え、成長を感じる。 それに比べりゃあ男なんて確かに何の実感もわかないし、プレッシャーだけが増えてマタニティブルーになるんかなぁという気持ち。 やっぱり自分の機嫌は自分で取ってほしいけど。

リフォームの壁紙などを選ぶ。 リビングはさすがに四六時中目にするものだから無難なものにするとして、和室やトイレや洗面所くらいは遊ばせてほしいが、どうなるか。


90日前(7月28日・金)

昨日帰りが遅かった夫が、半分寝ている私をかなりキツめに弄ってきたので、対応するのも腹立たしくスルーして寝た。結果、メモを残しておいたのに、たったひとつだけお願いしていた家事(ラップで小分けにした米、寝る前に冷凍庫に入れてね)がスルーされており、朝からイライラしている。
なんだよ。それ以外全部何もしないでいいようにしてやったのに、ごはん作って待ってたのに、ごはん食べるとも食べないとも言われなかったから、寝るギリギリまで待って色々処理してやったのに、自分はたった一つのことも出来ないのかよ。
「してやった」という感情は、やはりとても危険だ。自分の中にその感情があるだけで気分が悪い。

朝10時頃、夫からLINEが届く。
昨日私が晩御飯用に作ったごはんを食べた、ありがとう、今日も頑張ろうとのメッセージ。たぶん寝る前のキツめのいじりか、ごはんについての何かに対する罪悪感、もしくはここ最近の自分の機嫌に纏わる気づきがあったんだろうと推測された。普段はそんなメッセージなど送ってこないのだから、はあ、素直じゃなくってかわいいねえ。と、つい思ってしまう。
こうして痛みを忘れていくから生きていけるし、また同じ過ちを繰り返してイライラしたりもする。生きるのは難しい。

私は自分の機嫌を取るために、通販サイトでドゥ・ラ・メールの化粧水とクリームを買ってしまう。元来の目的はクラランスのアイメイクリムーバーで、そのサイトの最低購入金額に達していなかったため、他に何か買うものを探していたんだけど、割引率が良すぎたのでつい。ものは公式で買う主義なんだけど、公式関連で一切売ってないんだもの。
割引率が良かったと言ってもそこはドゥ・ラ・メール、購入総額で変わる割引クーポンで、アイメイクリムーバーがタダになるほどのお値段を使ってしまった。

夜はすっかりマタニティブルーが板について元気のない夫のために、残り物で済ますつもりが、追加でささみともろこしのガリバタ炒めを作ってやる。
「作ってやった」という感情があるも、普通に美味しくできてうれしいし、これは本当に偉い。ささみのカットが大きすぎた以外は成功だ。

その後リフォーム先の壁紙や床材選び。
あまりに2人の好みや考えが違いすぎて、そしてあまりに夫の無邪気で少ない語彙が私の心にぶっささり、不覚にも泣きそうになる。
彼が言う言葉は、言葉が持つ定義の半分程度しかその意味がなく、あと半分はヤバい・スゴい・かわいい・尊い・ウケるー的な意味で構成されている……と私にはわかっているのだが、それでも一度は定義上の言葉を受け取ってしまって傷つく。
わかってほしいというエゴ、理解してほしいというエゴがこびりついて離れない。この人と結婚するとき、この人にはそういうものは望めないと既にわかっていたので、そういう欲はすべて捨てる必要がある、と覚悟していたはずなのに。

前ページの柄と次ページの壁紙の柄の違いもわからなくなってきた頃、ようやく壁紙類が無事に決まった。私は思わず拍手をしてしまった。
お疲れさまわたしたち。


89日前(7月29日・土)

ポケモンスリープ、あと1分で8時間睡眠達成だったのに起きてしまう。

実家から電話がかかってくる。 懸念事項、連絡事項などを伝える。
実家をリフォームする関係で、連絡しなければならないことがいくつかあったのだが、先延ばしにしていたので助かる。
あと、先日私が妊娠糖尿病の検査で引っ掛かり、再検査になったことをかなり気にしていた。うち、父方も母方も一切いないもんね、糖尿病。

義実家がベビーカーを買ってくれると言うので、義母とデパートへ行く。
私が家庭板に入り浸っていた15年前は、海外製のベビーカーなんて気取ってる、みたいな風潮だった気がするが、売り場の大半が海外製で驚く。
それでも国産メーカーのものがトータルで1番使いやすそうで、その国の人に合う合わないはやはりあるのだなぁと思う。
(後日追記)国産メーカーのものだと思っていたけど、ドイツ製だったことがわかった。でもドイツと日本は少し似てるから仕方ない……わけないな。

売り場を訪れたのが夕方だったこともあり、その場では製品が決められず、夜ご飯を買って帰ることに。
実の息子である夫が「メロンだったら買ってくれてもいい」とゆすりのようなおねだりを言い、良いメロンを買ってもらう。ヘタが枯れたら食べ時、なんて知識では知っていたけど、実物を見て教えられると、改めてなるほどなぁとなる。夫を含め、義理の実家はいい食材を見る目を持っているのだ。

義母と別れた帰り道、夫に「ベビーカー押してみたり、子供の重さ人形持ったりしてどうだった?」と聞いたら、「生まれる実感が少しわく」と言った。先日見たような、マタニティブルーっぷりは見られなかった。
くどいかなとは思ったけど、チャンスと思って、「子どものものなんて何を準備すればいいかわかんないよって思ってたけど、こっちの心の準備にもなるのかもね」と喋りかけると、夫は珍しく素直に「そうだね」と言った。


88日前(7月30日・日)

リフォームの参考として、LIXILのショールームへ行く。
出産後、実家の空スペースをリフォームして住むことになっているのだが、夫がテレワークをすることになるだろう部屋にはカーポートに繋がる大きな窓があり、防音のためと人(つまりはうちの両親)が通ると気が散るため曇りガラスを入れたい、という要望が夫からあったからだった。
私はリフォームなんてとにかく安く済めばいいし、そんな曇りガラス要らないんじゃないかと本音では思うけれども、妻の実家に同居する、という点において完全アウェイの夫に、心地よく過ごす仕掛けくらいは設けてあげたい、という気持ちもある。

今はなき2ちゃんねるの家庭板とかに侵されていた頃は、自分は何があっても配偶者の味方をする!と決めていたけれども、その裏で両親と意見が合ってしまった時に、なにとなく罪悪感を覚えてしまう。
実物のガラスを比較させてもらった後、やはり夫は曇りガラスをいれたそうだったので、私の意見は伝えたうえで採用することにした。私はエネミーになっていないだろうか。

ショールームでは他の水周りも見させてもらう。この前壁紙を選んだ際には明るい色調のもの一辺倒だった夫が、洗面所やトイレなんかはもう少し私の好きに変えてもいいなどと言い出したので、本当にこの人には実体験させることが大事なのだなぁと実感。今までにも、実物を見たら意見を変えると言うことはあったので。

その後一件用事を済ませ、ジョナサンで遅い昼食を取ることにする。
ジョナサンのドリンクバーでは、コーヒーマシーンにカフェインレスコーヒーのボタンが用意されていて、淹れたてのコーヒーが飲めて嬉しい。思わぬ発見。
各テーブルに据え置きのメニューなどを一通り見ていたら、ネコ型ロボットが配膳することがあります、みたいなパウチが挟んであり、思わずはしゃいでしまって夫に呆れられる。
実際ご飯を運んで来たのはネコ型ロボットだったので、にこにこしながら受け取り、さらに呆れられる。

しかしその後ドリンクバーに立って戻ってきた時、夫が神妙な顔をしていたのでどうしたのかと聞くと、向かいにいた2人組の女性のうち、1人がネコ型ロボットに舌打ちしてウザイといった趣旨の愚痴を言っていたらしい。
そこで「ネコ型ロボットに舌打ちする嫁と、ネコ型ロボットににこにこする嫁どっちがいい?」と聞くと、がっくりと項垂れたまま、「多少変でも、にこにこの方がいい……」と言った。多少変でもとはなんだ。
一緒にいる人間なんて、いつだって機嫌がいい方がいいに決まってるだろうが。

リフォームの注文で、クロスと天井の壁紙を揃えていたのを、バラバラにしてもいいんじゃないかという話になり、一旦アクセントカラーの水色みたいなのを選ぶが、寝る前に思い直してベージュに変える。
まだ何色の家具を置くか決まっていないから。


87日前(7月31日・月)

出社して仕事。明日は妊娠糖尿病の再検査があるので、ランチに血糖値があがりやすいと聞いたことがあるカレーを食べるか悩み、カレー屋に行くのをやめ弁当屋に足を運ぶ。それなのに、メニューが豊富なこの弁当屋の本日のラインナップにカレーピラフがあり、結局頼んでしまう。
だけどカレーといえば血糖値があがると思っていたけれども、そうでもないパターンがあるようで、結局よくわからない。

ボロボロになってきたTシャツの代わりをメルカリで購入しようとするも、カード決済が出来ませんというエラーが出てきて焦る。今までと同じカードなんだけど。
不正利用でもあったのか? 慌ててアプリでクレカの利用明細を確認すると、特に不具合はなさそう。いずれにせよ今は夜なので、問合せをするにしてもメルカリのエラーだとしても、明日まで待つしかなさそうだ。

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