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東洋医学の隠れた名脇役:心包三焦

はじめに

鍼灸師の皆さんにとって、東洋医学の基礎知識は日々の臨床に欠かせないものです。今回は、重要な役割を担いながらも、その捉えどころの難しさから、理解が曖昧になりがちな「心包」と「三焦」について、古典に基づいた基礎知識をわかりやすく解説していきます。

1. 心包:君主を守る忠臣、心の安定を司る

心包は、西洋医学の解剖学には対応する臓器が存在しません。中医学では、「心の保護膜」と表現されるように、概念的な存在として捉えられます。

黄帝内経・霊枢・邪客篇には、「心包は、心を主る。邪気が、まず営気を通じ、次に衛気を通じ、最後に心包に伝わる。そこで、心包が邪と戦う。」と記されています。

これは、心包が心臓(心)を外部からの邪気から守り、その機能を正常に保つ役割を担っていることを示しています。

心は、五臓六腑の大将として、精神活動や意識、思考などを司る重要な臓器です。心包は、この重要な心を精神的なストレスや過剰な感情の揺れ動きから守り、安定した状態を保つ、いわば「忠臣」のような存在と言えるでしょう。

1-1. 経絡と心包:心包経との密接な関係

心包経は、手の厥陰心包経として、心包と密接な関係を持つ経絡です。心包経の経穴は、精神的な緊張を緩和し、心のバランスを整える効果があるとされています。心包の病変は、心包経の走行や経穴に影響を与えると考えられています。

1-2. 心包の機能と臨床での考察

心包の主な機能は、以下の通りです。

  • 心の保護: 精神的なストレスや邪気から心を守ります。

  • 心の安定: 過剰な感情の揺れ動きを抑え、心を安定させます。

  • 血脈の統率: 心と協力して、血脈の運行をスムーズにします。

心包の機能が乱れると、動悸、不眠、不安、精神不安定などの精神的な症状が現れることがあります。鍼灸治療では、心包経の経穴を用いることで、これらの症状の改善を目指します。


2. 三焦: 全身の氣化を司る、目に見えない統括者

三焦もまた、西洋医学には対応する臓器が存在しません。中医学では、三焦は「上焦」「中焦」「下焦」の3つに分けられ、それぞれが異なる機能を持つとされています。

  • 上焦: 横隔膜より上の部分を指し、「霧」のように、呼吸や循環を司ります。肺と心の機能と深く関わり、呼吸により体内に取り込まれた清気を全身に運びます。

  • 中焦: 横隔膜からへそまでの部分を指し、「泡」のように、消化吸収を司ります。脾胃の機能と深く関わり、飲食物から栄養を抽出し、全身に運搬します。

  • 下焦: へそより下の部分を指し、 「溝」のように、排泄を司ります。腎臓、膀胱、大腸、小腸の機能と深く関わり、不要なものを体外へ排出します。

三焦は、これらの機能を統合し、体内の気、血、水の循環をスムーズに行うことで、生命活動の維持に貢献しています。

2-1. 三焦と経絡: 全身経絡との密接な関係

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