また原点回帰してる人がいる。
ストラスブールに来ている。
(日本の)三連休を利用して、アルザス地方のストラスブールという街へやって来た。ちょうど10年前に留学として訪れた場所だ。当時乗っていたトラムに乗り込み、降りていた駅で降り、住んでいた寮から歩みを始める。さあ、原点回帰のはじまりはじまり。
変わったもの、変わらないもの。
さすがに10年も経った。いろんなものが変わっていた。
トラムのチケットはタッチ決済になった。ユニクロができた。寮の看板が新しくなった。ケバブ屋さんはタコス屋さんになった。Escargot au Raison は Escargot になった。それ故、一発で注文を聞き取ってもらえた。(Raison がいつまで経っても発音できない)
変わらないものあった。
トラムの音。無造作に並べられたレタス。10種類ものトマト。語学学校のちょっと重い扉。服装ミスってまず到着したら上着を買う私。0.6€のチョコチップクッキー。やっぱり美味しい Escargot au Raison(レーズンに敬意を示してわたしはこう呼ば続ける)。
原点回帰しがちな人。
すぐ、しみじみする。わたしの知り合いであれば、そんな印象があるんじゃないだろうか。わたしもそう思う。神戸、京都、木場、そして、ストラスブール。ちょっと暮らしただけですぐに離れるのが恋しくなり、久々に訪れるだけで勝手にひどくしみじみする。今回もまさしくそうである。フランスに来たのに新しい場所には行かず、一目散にストラスブールへやってきた。そう、しみじみしに。
過去に感謝し、今を生きる力を育む。
「しみじみ」という言葉をそれっぽくいうと、「原点回帰」に近いかもしれない。知らんけど。
わたしの場合は「わたしはこの時から成長できてるんだろうか」と比較するという感じとはちょっと違う。もちろん、過去と比べて失ったものもあるはず。でも、さすがにその頃よりは成長してるっしょ、と思っているから、過去は完全なる比較対象にはならない。
比較というよりも、「ここで色んな経験をさせてもらったからこそ、今のわたしがあるんだよな」って気持ちが生まれる。お世話になったあの人やこの人の顔が思い浮かぶ。元気にしてるだろうかと想いを馳せる。ちょっと連絡してみたりもする。
これが感謝の気持ちというやつだろうか。そうやって「しみじみ」しながら、いまを生きる原動力が培われていく。
戻れる場所がある、という安心感。
感謝という気持ち以外にも、また別の気持ちがある気がする。
いろんな場所で生活をしてきた。どれも大変で楽しいひと時だった。それぞれの場所を訪れるたびに、どの場所も大好きだということ、どこでも自分は生きていけるという謎の自信と、戻れる場所があるという安心感がある。それらがまた、いま生きる場所で新たに挑戦する力をくれる。
実は、たくさん新しいこともしている。
自分はなんでこんなにしみじみするんだろうと考えてみた。そしたら、実は私は「日常」において、変化の多い環境にいた。いや、環境のせいというよりも、自ら変化を選ぶ人間だった。
何食わぬ顔で「新しいこと好きなんで!」と喜んで変化の道を選ぶ。仕事もプライベートも、そうやって生きて来た。
でもそうやって新しいことをやり続けられているのも、過去を振り返り、支えて来てくれた人たちがいること、どこででもやってこれたという事実から、今をよりパワフルに生きる自信を蓄えているのかもしれない。
だから、定期的に懐かしい場所に帰りたくなるのかもしれない。そんな気持ちが芽生えた時は、ちゃんと自分に従ってあげたいと思う。
あ、そろそろ動かねば。パリ行きの新幹線が出る時間だ。
ちょっとかっこいいから言ってみました。完
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