予告編と感情グラフ
今回は以前、バラエティー番組で目にした”感情グラフ”についてお話ししようと思います。
”感情グラフ”とは物語の進行とともに、その物語に触れた人の感情がどう動くのかをグラフに表したものです。私が見たバラエティー番組では「君の名は。」の制作秘話として新海誠監督がこの”感情グラフ”を用いたというエピソードを取り上げていました。私はこのエピソードを知らなかったのですが、これを聞いて私が「君の名は。」を観た時に感じた不自然さの原因が数年越しにわかったような気がしました。
この不自然さとは「君の名は。」を観たときの自分の感情の動きにわざとらしさを感じた、ということです。映画を観ている時にその映画の制作側が意図しているように感情が動くこと自体は普通のことです。しかし、「君の名は。」の場合、その制作側の意図に存在感があったことが問題でした。つまり、「君の名は。」を観た時の感情の動きに自分自身の主体性を感じず、操られているかのような感覚を覚えたということです。
そして、私はその原因がこの”感情グラフ”だったのではないか、と思いました。バラエティー番組ではこの感情グラフについて、”感情の起伏を激しくさせるように作り直した。”と紹介していました。確かに新海監督は感情グラフを何回か作りなおしており、最終案のグラフの線が最も激しく変化していました。しかし、演劇や漫画、小説などに比べて映画では登場人物の心情を具体的に言語化して描かないことが多いです。それは心情を説明的に言語化することは現実的ではないからだと考えられるのですが、だとするならば心情の変化の演出も現実的にすべきです。となると、映画において心情の変化を大げさにした演出は適していないと思います。
しかし、予告編の場合はどうでしょうか。物語や登場人物たちの心情の変化やそのディティールを伝えることが主目的の映画とは違い、予告編は宣伝が主目的です。さらに尺も約1~3分と短いため、激しい演出で観ている人を疲れさせてしまうようなこともありません。むしろ、印象を残したり、話題になるためにはある程度の激しさや派手さが必要です。つまり、感情グラフと予告編の相性はかなりいいのではないでしょうか。
予告編制作の場ではもう既に普通に取り入れられている手法かもしれませんが、予告編制作を目指す上で有意義な知見を得られたと思います。今回は自身の備忘録的なnoteになってしまいましたが、読んでくださった方にとっても何か参考になっていたら幸いです。
それでは。
へぷた