海外版と日本版の違い
今回は海外(主に欧米)で公開されている予告と、日本で公開されている予告の違いについてお話します。
ハリウッド映画など海外で作られた映画には海外用のオリジナルの予告があります。しかし、その映画が日本で公開される際には日本専用の予告が制作されることがあります。この”日本版予告”は稀にに和訳されただけの場合もありますが、日本の予告編制作会社さんが日本市場に向けてカスタマイズした予告が制作されることが多いようです。
今回のnoteではそんな海外版と日本版の予告を見比べてみたいと思います。
まずは極端な例から。
・「キャビン(原題 ”The Cabin in the woods” )」
※本編未鑑賞の方は日本版予告は説明をすべて読んだ上でご覧ください。
まずは日本版予告。察しの良い方は注意書きがある時点で気づくかもしれませんが、この予告は本編内容の9割を説明しています…。ネタバレがとんでもないです。また、内容の説明に大量のテキストを使用しています。ナレーションも多いです。
一方で海外版
序盤はよくある展開に見せていますが、開始1分を過ぎたあたりで流れが変わり、この作品の正体が徐々に示されていきます。この1分以降の見せ方が絶妙で、所々にコメディ要素を入れることで緊張と緩和のバランスをうまくとっていたり、BGMに合わせてシーンを細かく連続させて畳みかけることで切迫感を演出しています。日本版とは異なり、テキストは回数も量も少なめです。ナレーションはありません。
・「キングコング:髑髏島の巨人(原題 ”Kong:Skull Island” )」
まずは日本版
ナレーション、テキストともに主張が激しく、存在感が強いです。しかし、「キャビン」の時と違うのは雰囲気にマッチしている点です。大きく、派手な色のテキストや、アニメなどで有名な声優さんによるナレーションによって”怪獣モノ”というコミック感の強い本編の売りや雰囲気を忠実に伝えています。
一方の海外版
こちらも「キャビン」と同じくナレーション無し、テキストも事務的な情報のみです。この予告で最も重要視されているのはストーリーや設定などの本編の情報ではなく雰囲気を伝えること、また、それを視聴者に強く印象付けることです。そのため、前後関係は無視した状態で映像とBGMを強引につなげることでMADのような音楽的な気持ちよさを生み出し、視聴者の記憶に残る仕組みになっています。
以上の2例を挙げましたが総括すると、
”日本の予告はテキストやナレーションによる説明が多く、海外版は本編の映像や台詞による説明が多い”
ということです。こ「キャビン」の例では日本版が悪いように説明しましたが、それはテキストやナレーションが多いからではなく、その内容に問題があったためです。テキストやナレーションには「キング・コング」のように雰囲気をうまく醸成し、視聴者に伝える効果もあります。ですから、ナレーションやテキストが多いから悪いとか良いとかではありません。
個人的には日本版の予告は説明的過ぎて無粋なように感じてしまうことも少なくないため、本編のカットをうまくつなぎ合わせることで、本編の伏線やトリックを暗に示したりする海外版の方が好きなことが多いですが、これを日本でやってしまうと予告としての本来の役割を失いかねないなど難しい問題があります。
なぜ、日本では海外版のような示唆的な予告が少ないのか、それが良しとされないのかについては私にもわからないため、日々、様々な予告を見ながらあれやこれやと考察しているところです。
今回はここまでです。いかがでしたでしょうか。海外版の予告は字幕もないので何を言っているのか理解するのは難しいかもしれませんが、本編を見た後なら何となく理解できるので、本編鑑賞後に日本版と海外版を見比べてみるのも面白いかと思います。
それではまた。
へぷた