「過去を乗り越えない主人公の魅力」ビルドダイバーズリライズ感想
※ネタバレ上等で荒ぶってます。ご了承ください
終盤最高に盛り上がった。いえ、ブチ上がった作品である「ビルドダイバーズRe:RISE」
特に印象的だった「18話」「20話」「22話」にスポットに当てつつ、主人公ヒロトについて感じたことをぶちまけていきたい。
リク「俺たちの好きが生んだ命がサラなら、俺たちの手でサラを消したりしちゃいけない!自分達の好きを、自分達で否定したくないから!」
前作主人公の決め台詞が、ここまで抉られる言葉に変貌するとは夢にも思いませんでした。そんな作品ある?
この直前。ヒロトは大切な人に伸ばした手を閉じた。大切な人を救う方法が、それ以外無かったから。
前作主人公であるリクとは残された時間も、人脈も、持ち得た情報も違う。あの時ヒロトが足掻いたとしても、手を伸ばし続けたとしても、恐らくイヴは助からなかった。
だけど目の前に、諦めず手を伸ばし続け、希望を捨てずに、遂に奇跡を成し遂げた少年がいる。それを撃墜するチャンスが、ヒロトの目の前に飛び込んでくる。
ヒロトは大切な人の為に希望を捨て、諦めることで大切な人を救った。目の前の少年は希望を捨てず、大切な人を救う奇跡を成し遂げようとしている。自分が届かなかった未来に、今正に届こうとしている。
撃つなと言う方が無茶な話である。
「君は」「俺は」「君を」「オレは」
ヒロトの叫びの行間は、想像して余りある。ただ「君」が指す対象はリクであり、イヴであったとも思う。
「これからも、誰かの為に頑張れるヒロトでいてね」
彼女との約束を寸でのところで思い出し、銃口を下げ、ビームを地上に逸らすヒロト。空を飛んでいたリクには当然当たらず、その衝撃で泥を被る愛機アースリィガンダム。
しかし撃ってしまった事実は変わらない。
イヴの願いとは真逆の感情をぶつけようとしてしまったヒロトは、彼女の願いすら守れなかったことに絶望し、GBNから遠ざかることになる。
そんな心理状態を引きずったまま始まるのが、ビルドダイバーズリライズという作品である。
視聴者もチームメンバーもヒロトの過去を知らないまま、物語は進んでいく。名前も見たくないはずの「ビルドダイバーズ」をフォース名に使われ、その名を聞く度に露骨に嫌そうな表情を浮かべながらも、どうしても過去のことを思い出してしまうヒロト。
ヒナタに過去のことを聞かれ「ただのデータ。記録に過ぎない」と言い放ってしまうヒロトと、それを言わせてしまったヒナタの表情が切ない。
ただ共感が難しい「ガンプラに感情がある」等の話に同意することができたのはイヴとの思い出があってこそであり、あの会話がほんの少し後押しになって、チームメンバーのパルは空を克服することができた。
閉じておきたい過去であっても、気付けばそれに背中を押してもらっている。序盤のヒロトは、そんなキャラだったように感じる。
そして迎える18話「完璧な狙撃者」
この機体は撃つべき場所に撃つことができる「完璧なアナタ」と自称し、ヒロト達の前に立ちはだかるアルスアースリィ。あの時アナタは迷わず撃つべきだったと、無機質な声で問いかけてくる。地雷原土足侵入である
忌避したいトラウマを無意識に刺激し、同じ特性を持ち、スペックは格上。ヒロトにとって最悪の敵であるアルスアースリィを倒す鍵になったのは
トラウマで封印していた過去アーマーとの部分接続(リミテッドチェンジ)
イヴとの約束を破った事件の象徴である銃と再びドッキングし、あの時撃つべきだったと嘯く偽者をゼロ距離で撃ち抜く。リライズに惚れたと断言できたのは間違いなくこの瞬間でした。この戦闘数億回見れる。
戦闘終了後から過去語りがはじまるのも、過去との接続(ドッキング)をヒロトが自ら選んだ暗喩なのかもしれません。
ヒロト「そうか……繋がっているんだ。人も、想いも」
過去を独白し泣いた後のヒロトのセリフ。呪いに近い、果たされなかった約束の言葉が、ここで少し意味を変えてきます。その答えが明示されるのが、僕が一番荒ぶった回である22話。
22話で会するキャラクターはIFヒロトでもある
「味方サイドである聖獣クアドルン」「操られているシドー・マサキ」「アルス」の3キャラは、ある意味IFのヒロトとも言える存在だ。
「クアドルンは大切な誰かを救う為に、本人を消すことを選び」
「マサキは犯してしまった事に囚われ、やり直すこと等無理だと叫び」
「アルスは大切な人との約束を、今尚守り続けている」
ヒロトは大切な人を自ら撃ち、約束を守れず、犯した罪に囚われていた。
「じゃあ貴方はどうなる? 彼を撃てば、今度は貴方が苦しみ、押し潰されるんじゃないのか! 今ここには、貴方「には」それ以外の選択肢がある。二人の絆を、こんな形で……そんなの」
「俺と同じ後悔を、貴方にはさせない!」
はい。ここで数億回泣きました。無理でしょこんなの。
この台詞はマイナスの側面を持つ、似た経験を持つヒロトだから言えた言葉で、ヒロトだから届かせることのできた言葉です。
失ったものも多く、後悔だらけの過去であっても、それらを経験したからこそ届かせることのできる相手がいる。繋げることができる。
ヒロトは劇的に何かが変わった主人公ではない。過去を振り切ることも、後悔も、今後も消えることは無いかもしれない。
だから、繋げる。
「これからも、誰かの為に頑張れるヒロトでいてね」
果たせなかった約束は、呪いの言葉から、本来の願いへと戻っていく。
そしてこの最高の展開である
「マサキは任せる」確かにそう言ったクアドルンの意思を継ぎ、ビルドダイバーズはゼルトザームに挑んでいく。
カザミの「ヒロトォ!」も、ヒロトの「ヴィーナストゥサターン!」の叫びも音楽も最高なので是非本編も数億回再生して欲しい。イージスナイトはこの回の直後から売り切れ続出とかなんとか。
「繋げる」の極致、エクストラリミテッドチェンジ
最終回放送時は僕の中での「繋げる」に対してのエモさが限界突破していたので「過去全て(?)を載せたアーマーとかエモ過ぎだろ……」と一人エモエモの実の能力者になってしまいました。合体しながら戦うとこも好きです。リライジングも大好きです。
このアニメプラモの必要ある?とはよくある常套句の一つですが、プラモは繋げて組み立てるものなので必要しかありません。僕の中ではそうです。
他にも見所は沢山あります。アルス戦や最終回。無印メンバーとの模擬戦。二週目だとメイとヒロトが似てるシーンでやたら2828する呪いがかかったり、パルやカザミの活躍話。チャンプの空気の読めなさ。
語りたいことは山ほどありますが、内容が取っ散らかりそうなので今回はヒロトメインで許してください。なんでもしますから。
……と、〆る前に語りたいことが降ってきたので最後に一つ。
ヒロトとリクとの会話シーン 感情を飲み込んでる表情がとてもいい
本心では謝罪の内容を伝えたかったと思うんですが、リクに「謝らないでください」と言った時点で、きっと色々と飲み込んだと思うんですよね。ヒロトがあの時の事を告白し、謝罪したとしても、それはリクとサラの幸せには繋がらない。
「誰かの為に頑張れるヒロト」「妹に幸せに生きて欲しい」
イヴの願いを戦闘以外でも叶えているのだなぁ……とここでも涙。
ヒロトは劇的に変わった主人公ではない
後半別人のように成長する主人公も沢山いる中で、ヒロトは劇的に変わったとは言い難い主人公だと思います。でも別人のように成長されてしまうと、思いがついていかないように感じるのも正直なところです。
過去と向き合えるようになったといえ、彼はこれからも過去に後悔し、過去に痛みを覚えることがあるかもしれないけれど、それとは決別しないまま、誰かの為に繋いで行くヒロトであり続けるんだろうな……と僕は思うのです。だからこそ本当に良い主人公だったな、と。
そしてヒロト達が救ったエルドラでもまた、新しいリライズが
本来処分されてもおかしくないヒトツメの生き残り
この二人も過去を水に流したわけではありません。お互い目配せするシーンからもそこは読み取れて……そこから出た言葉は「乗ってけよ」
ヒロトが救った人達もまた憎しみだけに囚われず、手を差し伸べ、新しく繋いでいくのでしょう。筆者はここ一分弱のシーンが、これからのエルドラがほんのり素敵なものに見えて無限に好きです。帽子の位置直すのが俊敏過ぎるのもまたいい。
記事タイトルの「乗り越えない」は少し違った表現だったかもなと思いつつ、ニュアンスが伝わって頂けたら幸いです。どちらかといえば一緒に連れ添ってるイメージが強いので。
それではバトローグでの後日談に滅茶苦茶期待しつつ、今回の記事を〆ようと思います。