【覚え書き】フランス民謡『美しい羊飼いティルシス』 (Le beau berger Tircis)について

文庫クセジュの『フランス古典音楽』において著者のジャン・フランソワ・パイヤールがこの曲を「古いガヴォット」と呼んでいる。この曲(の歌詞)がきっかけで後にブリュネットbrunettesというジャンルが流行した(ジャンル名がブリュネットになったのはおそらく1703年以降)。ブリュネットはエール・タンドル air tendreとも呼ばれる。このジャンルは18世紀後半にロマンスromanceに取って代わられる。そしてロマンスは19世紀にメロディmélodieに取って代わられることになる。(ちなみに、ブリュネットの前にはエール・ド・クール air de cour (宮廷歌)というジャンルが流行しており、こちらはエール・セリユー air sérieux と名を変えながら18世紀初頭まで存続した。)

ただ、パイヤールがこの曲をガヴォットと呼んだ理由がよく分からない。フランスにおいて17世紀の半ば以降の楽譜がガヴォットのような書き方になるのはむしろ普通で、これはこの曲が17世紀の初頭にガヴォットであったことを証明するものではない。

chanson à danser(歌舞曲)というジャンル名の存在が見えてきた。これはchanson à boire「酒の歌」に匹敵するような名称である。1675年のNeues Teutsch-Frantzösisch-Lateines Dictionarium oder Wort-Buchにはドイツ語のTanz-Liedに当たると書かれている。ラテン語ではChoreuma,あるいはコレーアChoreaで、これは羅和辞典では「輪舞;天体の回転運動」とある。ギリシャ語ではコレイアーχορείαで、「踊り、特に音楽を伴う歌舞;舞曲」とある。結局これは、歌で演奏する舞曲のことなのだろう。民衆が歌いながら踊るシーンは容易に想像できる。人々は、歌って踊り、酒を飲んで歌ったのである。

おそらく、17世紀の前半はまだガヴォットはブランルのようなものであったし、人々は歌いながら踊った。そういったなかでこの曲は最初に1626年に楽譜として出版された。ダングルベールはそういう音楽を編曲し、その際には小節線を書き加え、ガヴォットと明記した。ただし後にリュリが広めるような楽譜の書き方にはなっていない。今日の我々は、舞曲は器楽曲のイメージが強いが、17世紀のフランスでは、民衆も、リュリも、舞曲に歌を付けていた。


1626年のヴァージョン

これが初出の楽譜。歌詞の最初のLは左上に大きく書いてあるので注意。1626年にBallard社から出版されたAirs de Cour et de differents autheursの第7巻の27枚目の裏(p.27v)(当時はこのようにページ数を振ることがあった)。ご覧の通り、途中に小節線が引かれていないのでガヴォットかどうかは全然分からない。途中に4分音符が2個挿入されており、音楽が一旦切れるようだ。このころのこの種の歌曲は、小節線が歌詞の終わりや、大きな切れ目にしか入っていない。しかも、強拍を示す機能もはっきりしていなかった。(ただしリュートなどの楽譜(タブラチュア)ではすでに16世紀から小節線が普及していた。)


歌詞(1626)

後の編曲ではLoin de sa belle Annette「いとしいアネットから離れて」が、Près de sa chère Annette「大好きなアネットのそばで」に変えられている。アネットは人名で、ブリュネットは褐色の髪をもつ女性を意味する。また、Tirsisは、Tircisと綴られることが多い。最初のヴァージョンの歌詞は8番まであって非常に長く、そしてティルシスの恋はあまりうまくいかない。

このころ恋の歌はしばしば、羊飼いを主人公にして歌われた。Tircis(Tirsis)は羊飼いの典型的な名前の1つである。


Le beau berger Tirsis
Loin de sa belle Annette,
Sur le bord du Loir assis
Chantoit dessus sa musette,
Ha! petite brunette, 
Ha! tu me fais mourir. 
美しい羊飼いティルシス、
愛しいアネットから遠く離れて、
ロワール川のほとりに座り、
彼のミュゼットを吹いて歌いました。
「ああ、かわいいブルネット(褐色の髪の娘)、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」

Les rochers d'alentour
A sa plainte secrette,
Comme attaint de son amour
Redisoit sa chansonnette.
Ha! petite brunette, 
Ha! tu me fais mourir. 
周りの岩たちも、
彼の密かな嘆きを聞き、
彼の愛に心を打たれ、
歌を繰り返しました。
「ああ、かわいいブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」

Pour suivre tes beaux yeux
Ou l'Amour fait retraitte,
l'abandonne ces beaux lieux,
Mon trouppeau & ma houlette.
Ha! petite brunette, 
Ha! tu me fais mourir. 
君の美しい目を追いかけて、
愛が失われるその場所に、
この美しい場所を、
僕の羊たちと杖を置き去りにしました。
「ああ、かわいいブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」

Tu ne l'ignore pas
Gentille bergerette,
Ou bien tu ne me vois pas
Sur l'esmail de ces fleurette.
Ha! petite brunette, 
Ha! tu me fais mourir.
君も知っているよね、
かわいい羊飼いの娘さん、
小さな花の上で、
僕を見ていないのかな。
「ああ、かわいいブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」

Eccho Nymphe des bois,
Aux forests plus secrette
Redisoit autant de fois
Ce que chantoit ma musette.
Ha! petite brunette, 
Ha! tu me fais mourir.
森のニンフ、エコーが、
隠れた森の中で、
僕のミュゼットの歌を
繰り返し歌いました。
「ああ、かわいいブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」

Si tu sçauois combien
Dans mon cœur je regrette
De ne joüir de ce bien
Que tant de fois je souhaitte.
Ha! petite brunette, 
Ha! tu me fais mourir.
君が知っていたら、
どれほど僕が後悔しているか、
願っていたその幸せを
得られないことを。
「ああ、かわいいブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」

Les eaux qui vont coulant
D'vne source si nette,
Sont les pleurs qui vont meslant
Aux larmes que Tirsis jette.
Ha! petite brunette, 
Ha! tu me fais mourir.
澄んだ泉から
流れる水は、
ティルシスが流す涙と
混じり合っているんだ。
「ああ、かわいいブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」

Les amoureux Zephirs
D'vne haleine si nette,
Font esclore les soupirs
Pour dire le nom d'Annette.
Ha! petite brunette, 
Ha! tu me fais mourir.
優しいそよ風が、
澄んだ息で、
ため息を誘い、
アネットの名を呼ぶんだ。
「ああ、かわいいブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」



1633の歌詞

『ミューズの山、踊りと酒の歌』Le Parnasse Des Mvses Ov Chansons A danser & à boire

恋人の名前のAnnetteが、Amiette「女の恋人」になっているのは誤植なのか?

(機械翻訳なのであとで見直して修正すること)

Le beau berger Tirsis
Loing de sa belle Amiette,
Sur le bords du Loir aßis
Chantoit dessus sa musette,
Ha petite brunette,
Ha ha ha ha tu me fais mourir.
美しい羊飼いティルシスが、
愛しいアネットから遠く離れ、
ロワール川のほとりに座り、
彼のミュゼットを吹いて歌いました。
「ああ、かわいいブルネット、
あ、あ、あ、あ、君は僕をドキドキさせる。」

Les rochers d’alentour
A sa plainte discrette,
Comme atteints de son amour
Redisoient sa chansonnette,
Ha petite brunette,
Ha ha ha ha tu me fais mourir.
周りの岩たちも、
彼の静かな嘆きを聞き、
愛に打たれて、
彼の歌を繰り返しました。
「ああ、かわいいブルネット、
あ、あ、あ、あ、君は僕をドキドキさせる。」

Au lieu d’aller paissant
La pointe de l’herbette,
Tout son troupeau languissant
Couroit apres sa houlette,
Ha petite brunette,
Ha ha ha ha tu me fais mourir.
草を食べる代わりに、
全ての羊たちが苦しんで、
彼の杖を追いかけました。
「ああ、かわいいブルネット、
あ、あ、あ、あ、君は僕をドキドキさせる。」

Tu ne l’ignore pas
Gentille bergerette,
Ou bien tu ne le vois pas,
Sur l’esmail de ces fleurette,
Ha petite brunette,
Ha, ha, ha, ha, tu me fais mourir.
君は知らないのかい?
かわいい羊飼いの娘、
それとも君は見ていないのかい、
この小さな花の上で。
「ああ、かわいいブルネット、
あ、あ、あ、あ、君は僕をドキドキさせる。」

Les eaux qui vont coulans
D’vne source plus nette,
Sont les pleurs que vois meslant
Les larmes que Tirsis iette,
Ha! petite brunette,
Ha, ha, ha, ha, tu me fais mourir.
澄んだ泉から流れる水、
それはティルシスが流す涙と混じり合う。
「ああ、かわいいブルネット、
あ、あ、あ、あ、君は僕をドキドキさせる。」



1661年の歌詞

Recueil des plus beaux vers, qui ont esté mis en chant, avec le nom des autheurs tant des airs que des paroles

歌詞だけが大量に載っている本がある。著者はBénigne de Bacilly

VILANELLE

Le beau Berger Tirsis,
Loin de sa chere Annette,
Sur le bord du Loire assis,
Chantoit dessus sa Musette,
Ah! petite Brunette,
Ah! tu me fais mourir.

Les Echos d’alentour,
D’vne plainte discrette,
Comme atteints de son amour,
Redisoient la Chansonnette;
Ah! petite Brunette,
Ah! tu me fais mourir.

Les eaux qui vont coulant
D’vne source si nette,
Se vont encore meslant
Dans les pleurs que Tirsis jette;
Ah! petite Brunette,
Ah! tu me fais mourir.

Au lieu d’aller paissant
La pointe de l’herbette,
Son troupeau tout languissant
Se couchoit pres sa houlette;
Ah! petite Brunette,
Ah! tu me fais mourir.

Le Soucy jaunissant,
La pâle Violette,
Sont les fleurs qui vont naissant
Des larmes que Tirsis jette;
Ah! petite Brunette,
Ah! tu me fais mourir.


1693の辞書

Annetteがフランス語の辞書の1項目になっている(リンク)。Chanson à dancerというジャンルの存在も確認できる。


1703年のヴァージョン

次の音源はBrunetes ou petits airs tendres, tome 1 (1703)からのもの。

1703年に出版された『ブリュネット、あるいは小さなエール・タンドル Brunettes ou Petits airs tendres第1巻』の最初の曲は当然この曲である。

小節線が加わっており、しかもそれはガヴォット的なものだ。歌詞も変化している。Second Coupletとあるのでロンド形式になっていることがわかる。

この本のタイトルにあるように、ドゥーブルを加えたり、舞曲との融合が図られたりしている。ガヴォットの流行を鑑みれば、既存の曲がガヴォットの装いを持つようになることは考えられる。

(踊りについては、1724年にはクリストフ・バラールはさらに『ロンド、舞踏用歌曲集第1巻 Les rondes, chansons à danser, Tome 1』を出版している。)

おそらくフランスで民謡がガヴォット的な記譜をされるようになるのは、このころからなのだろう。

1703その1
1703その2
1703その3
1703その4
1703その5
1703その6
1703その7
1703その8
1703その9
1703その10

歌詞(1703)

(機械翻訳なので後で修正すること)

Le beau Berger Tircis,
Près de sa chere Annette:
Sur les bords du Loir assis,
Chantoit dessu sa Musete;
Ah! petite Brunete,
Ah! tu me fais mourir!
美しい羊飼いティルシス、
愛しいアネットのそばで、
ロワール川のほとりに座り、
彼のミュゼットを吹いて歌いました。
「ああ、かわいいブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」

(Second Couplet.)
Ah! petit àpetit,
Je sens que je m'engage:
L'Amour prend trop de credit,
Je n'en dis pas davantage;
Ma bouche soyez sage,
Mes yeux en ont trop dit.
(第2クプレ)
ああ、少しずつ、
僕はどんどん深みにハマる。
愛があまりにも力を持ちすぎて、
もう何も言えないよ。
口は黙って、
目はすべてを語りすぎた。

(Autres Couplets.)
Le soucy jaunissant,
La pâle violette:
Sont les fleurs qui vont naissant
Des larmes que Tircis jette;
Ah! petite Brunete,
Ah! tu me fais mourir!
(他のクプレ(複数))
黄色く色づく悩み、
青白いスミレ:
ティルシスの涙から生まれる花、
「ああ、かわいいブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」

(Second Couplet.)
Au lieu d'aller paissant
La pointe de l'herbette:
se couche près sa houlette:
Ah! petite Brunete,
Ah! tu me fais mourir!
(第2クプレ)
草を食べる代わりに、
杖のそばで横になり、
「ああ、かわいいブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」

(Troisiéme Couplet.)
Les Ruisseaux vont roulant
Leur onde pure & nete,
Et murmurent, se mêlant
Aux larmes que Tircis jete:
Ah! petite Brunete,
Ah! tu me fais mourir!
(第3クプレ)
澄んだ清らかな流れ、
ティルシスの涙に混じり、
ささやきながら流れる、
「ああ、かわいいブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」

(Quatriéme Couplet.)
Les Echos d'alentour
Que sa plainte discrete
Fait encor sécher d'amour,
Redisent la Chansonnete;
Ah! petite Brunete,
Ah! tu me fais mourir!
(第4クプレ)
周りのエコーが、
彼の静かな嘆きで、
再び愛に乾かされ、
歌を繰り返します。
「ああ、かわいいブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」

(Autre Couplet.)
Rêver incessamment,
Chercher la solitude,
S'habiller negligemment,
Cherir son inquietude;
C'est-là toute l'étude,
D'un malheureux Amant.
(他のクプレ)
絶え間なく夢を見て、
孤独を探し、
だらしなく服を着て、
不安を愛おしむ。
それがすべての勉強、
悲しい恋人の。

(Autre Couplet.)
Vous negligez mes soins,
Ma tendresse vous gêne;
Mes tristes yeux sont témoins
De vôtre nouvelle chaîne:
Et pour comble de peine,
Je n'en aime pas moins.
(他のクプレ)
僕の心遣いを無視し、
僕の優しさが君を困らせる。
僕の悲しい目は見ている、
君の新しい絆を。
そして、痛みの頂点に、
僕は少しも愛が減らない。





歌詞(以後のヴァージョンの1つ)

Le beau berger Tircis,
Près de sa chère Annette
Sur les bords du Loir assis
Chantait dessus sa musette
Ah petite Brunette
Ah, tu me fais mourir.
かわいい羊飼いのティルシス、
大好きなアネットのそばで、
ロワール川のほとりに座り、
彼のミュゼットを吹いて歌いました。
「ああ、小さなブルネット、
ああ、君は僕をドキドキさせる。」


編曲

ダングルベールによる編曲(ガヴォット第1段階)

J.-H. ダングルベール(1629–1691)の第2組曲ではこの曲がガヴォットと書かれている。しかし譜面はガヴォットに特徴的な小節線を持っていない。ダングルベールはリュリより3年年長の鍵盤奏者で、同時代にルイ14世に仕えた同僚だった。この楽譜の印刷自体は1689年であるが、これは晩年に自分の作品をまとめて出版したものであって、曲自体ははるか以前に作られたものであろう。ガヴォットの定型的な記譜法がとりわけリュリによって普及するより前のやり方を守っていた結果なのではないかと思われる。フランス語の歌詞を考える必要のない器楽曲では、ガヴォットを特殊な小節線によって書く必要性は全く生じないのだからなおさらである。

ダングルベールによるアレンジ。こちらもクリストフ・ルセChristophe Roussetの演奏。

イタリアのチェンバロ奏者フランチェスコ・チェーラFrancesco Ceraによる演奏


興味深いことに、次の曲のタイトルはLa Bergère Annette. Vaudeville「羊飼いアネット、俗謡」となっている。ティルシスは愛しいアネットと一緒になれた、というわけだ。


J.–B. リュリによる編曲(1684, Amadis)

未確認



テオボン夫人の写本 Le Manuscrit de Madame Théobon

1672年までルイ14世の愛人であったテオボン夫人の写本(Le Manuscrit de Madame Théobon)にクラヴサン用のアレンジが残されている。クリストフ・ルセChristophe Roussetの演奏。この写本は2004年に、ルセによって発見された。



J.(–M.) オトテールによる編曲(1710–1730ごろ)

次の音源はジャック=マルタン・オトテール(Jacques-Martin Hotteterre, 1674–1763)によるフルートのためのアレンジ。

『フルートのための2声と3声のエールとブリュネット』Airs et brunettes à 2 et 3 dessus pour les flutes traversières (1710–1730ごろ)

M. P. d. モンテクレール(Montéclair)による編曲(1721–24ごろ)

次の動画のCDの解説が見つかった(pdf)。Premier Recueil de Brunettes, Suite No.1の第2曲である。(NAXOS)



L.-N. クレランボーによる編曲(ガヴォット第2段階)

1730年から1750頃に書かれた、ルイ=ニコラ・クレランボー L.-N. ClérambaultのCantates et airs de différents auteurs「様々な作曲家のカンタータとエール』に、J.-B. リュリによる『美しいティルシス』が掲載されている(楽譜)(p.193)。編曲じゃなくてただの抜粋の可能性もある。

Le beau berger Tircis près de sa chère Annette



1731

Les Parodies du Nouveau Théâtre Italien

https://books.google.co.jp/books?id=GFxbAAAAQAAJ&vq=tircis&pg=RA1-PA28#v=onepage&q&f=false









おまけ

『ある日羊飼いのティルシスが』Un jour le Berger Tircis

Un jour le Berger Tircis, A l'ombre d'un Chesne assis :
Prés le Troupeau de Silvie, Chantoit d'un ton plein d'amour ;
Je t'aime plusque ma vie, Je t'aime plus que le jour.

La Bergere l'écoûtant, Se facha pour un instant :
Mais se sentant attendrie, Elle redit à sontour ;
Je t'aime plusque ma vie, Je t'aime plus que le jour.

ある日、羊飼いのティルシスが、
樫の木の陰に座り、
シルヴィーの群れのそばで、
愛に満ちた声で歌いました。
「君を自分の命よりも愛している、
君を日の光よりも愛している。」

羊飼いの娘がそれを聞いて、
一瞬怒りましたが、
心が温かくなり、
彼女も同じように繰り返しました。
「君を自分の命よりも愛している、
君を日の光よりも愛している。」

(※おそらく第9小節の最後のドの音には♮が必要)



リュリの『やさしい歌』は偽作である

ブリュネットの別名がエール・タンドルair tendreである。エール・タンドルは直訳すると『やさしい歌』となる。リュリの『やさしい歌』として出回っている曲はJohn Loeillet(1680–1730)(Jean-Baptiste Lœillet (de Londres))が1712年頃に書いた曲である。(楽譜)

Gavotte tendreとは?

Brunetteについてのフランス語のwikiよれば、「リュリやラモーは、ブリュネットをgavotte tendreの名前でオペラに導入した」との説明がある。

La brunette est également introduite dans l'opéra, par Lully et Rameau (sous le nom de « gavotte tendre »1) notamment3, ainsi que dans l'opéra-comique2 (comme timbre1), et devient aussi instrumentale, au clavecin (insérée dans des suites par exemple), à la flûte, au hautbois ou au violon2,5, utilisée par exemple par Michel Blavet et Michel Pignolet de Montéclair1.

しかし、ガヴォットに様々なテンポのタイプがあることも言われる話。どうにも話が繋がらない。

しかし2拍子のブリュネット(エール・タンドル)は、楽譜の上ではガヴォットと全く変わらないので、ガヴォットとして利用しやすかったであろうことは想像できる。


1761年、ティルシスとアンネットその後

Le Chansonnier français, ou recueil de chansons 9, 1761

↓なぜこの楽譜はト音記号がイタリアみたいな位置にあるのだろう?

QUAND Tircis à la jeune Annette
Offre d'apprendre une Chanson,
Elle s'en va toujours seulette
Avec lui derrière un Buisson.
Ils sont dans le bel âge ;
Je n'en dirai pas davantage.
ティルシスが若いアネットに歌を教えようとすると、 彼女はいつも一緒に行って、 茂みの後ろで過ごします。 彼らは美しい年頃、 これ以上は言いません。

EN la regardant, il soupire
Et baise sa main tendrement ;
La Belle n'ose rien lui dire,
Mais le repousse foiblement.
Ils sont dans le bel âge ;
Je n'en dirai pas davantage.
彼女を見つめて、ため息をつき、 彼女の手を優しく握ります。 美しい彼女は何も言わず、 そっと彼を押し返します。 彼らは美しい年頃、 これ以上は言いません。

ELLE ne dit mot & s'ennuie 
Dès qu'elle ne voit pas Tircis ;
Si-tôt qu'il vient dans la Prairie, 
Ce ne sont que Jeux & que Ris: 
Ils sont dans le bel âge ; 
Je n'en dirai pas davantage. 
彼女は何も言わず、寂しがり、 ティルシスがいないときは悲しみます。 彼が草原に来るとすぐに、 二人は遊び笑います。 彼らは美しい年頃、 これ以上は言いません。


1760年頃のメロディーについて

Le Chansonnier français, ou recueil de chansons 9, 1761のシリーズは楽譜が付いているわけだが、ちょっと弾いてみると明らかにバロック時代のメロディーとは違っている。1760年と言えば、すでにイギリスではJ. C. バッハが活躍し、パリではJ. ショーベルトなどがいた時代だ。響きは完全に、古典派のものになっている。おそらく、1740ごろに、何かものすごい革命があったのだろう。



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