覆面編集者からみた作家への道~「賞をとってデビュー」だけが作家への道じゃない時代~
某社の編集者たち(※コルクラボの愉快な仲間たち)が会社の垣根を超えて活動する「覆面編集者プロジェクト」では、作家志望者の方に役立つ情報を定期的にお届けします!
今回のお題は「覆面編集者からみた作家への道」についてです!
私、覆面インタビュアーUMが、覆面編集者TTに最近の「作家への道」について、話を聞きました!
「賞をとってデビュー」だけが作家への道ではなくなった?
覆面インタビュアーUM(以下UM):
昔は文学賞に応募して、賞をとったらデビューというルートが一般的でしたが、近年はWebで人気の作品が書籍化される流れも、だいぶ定着してきたと感じます。そんなWebから人気の作品が出てくる状況を、現役編集者として、どのように見ていますか?
覆面編集者TT(以下TT):
おっしゃる通り、近年は多くのヒット作が、投稿サイトやSNSなどのWebから出て来るようになりました。
それまでは文学賞などのお墨付きを持ったものが、コンテンツとして世に出ていました。TVや出版社が流行を作っていたんです。
それがネットやSNSが普及したことによって、「●●サイトでランキング一位」といったような作品が流行するケースが増えてきました。
UM:
確かにテレビや出版社など、旧来のメディアが主導しているコンテンツの価値が弱まってきていると言われることはありますね。
TT:
それでもまだまだパワーはあります。
ただ、何がウケるのか、売れるのかというと、「ユーザーや読者に選ばれた」「書店員に選ばれた」といった実績が大きく影響している。権威ではなく、コンテンツが持つ勢いそのものに価値が出てきています。
UM:
なるほど。
TT:
もちろん文学賞を獲る、ということもまだまだ重要です。ただ小説投稿サイトのランキングで上位だったり、「読書メーター」のようなレビューサイトで人気だったり、そんなユーザーから既に支持された作品の価値が高くなっているんです。
UM:
確かに作品を手にとりたくなるきっかけになりますね。
TT:
なので、出版社側としても、そういったユーザーの注目度が高い作品を書籍化したり、メディアミックスにてアニメ化したりと、広げていくというのは当然の流れですよね。
「コミュニティ」が重要な鍵に?
UM:
その他で注目されている動きなどはありますか?
TT:
あとはコミュニティの存在が重要になってきていると感じますね。
例えばガンダム好き、ドラゴンボール好きなどのファンコミュニティは緩やかにあったと思うのですが、なかなかリアルで集まったり、情報交換したり、ということまではできなかったはずです。
それが今はSNSで交流し、そこからリアルで集まったりすることが容易にできるようになりました。
UM:
Twitterなどでファン同士が仲良くなって、オフ会する、なんて流れもよくみかけますよね。
TT:
はい。そうした交流を通してコミュニティが拡大し深化することで、コンテンツが「勢い」という名のエネルギーを持つようになるんです。
僕が編集者として注目しているのは、そんなファンコミュニティが形成されているWebコンテンツの強さです。そこに出版社といったメディアのパワーを使うことで、さらに大きな渦を作ることができると考えています。
ランキング上位は既に飽和状態
UM:
小説投稿サイトでは、主にランキング上位作品に注視されているんですか?
TT:
ランキングは当然見ますが、ランキング入りの作品や作家に関しては、既に発掘が完了している、つまり発掘飽和状態と考えています。
有名な小説投稿サイトは、ランキング100位ぐらいまでは全部書籍化されていたり、すでに声がかかっていたり、何かしらの話が進んでいると思ったほうがいいです。
なので、各編集者の好みや特性に合わせて深堀りして見るのが、編集者としての本流じゃないですかね。
UM:
TTさんは、どういった作品を深堀りされているんですか?
TT:
僕はお仕事小説が得意なので、現代ドラマやファンタジーなどジャンルを問わず、「仕事」にフォーカスしている作品を見ていますね。お店屋さんや食べ物屋さんなどを題材にした作品を深堀りしています。
同僚の編集者の場合では、「ラブコメ」が好きだったり、「歴史上の人物が登場する作品」が好きだったりと、それぞれです。もちろんレーベルとして大きな企画方針を採っている場合もあります。
Webを活用し、自分の能力や影響力を高めていくのが鍵
UM:
それでは最後に作家志望者へのメッセージをお願いします。
TT:
昔は作品を書いて文学賞に応募して、地道に結果を待つしかなかったんです。
ところが今は、小説投稿サイトを利用すれば、読者のフィードバックがすぐにもらえることもあり、改善点を見つけ、成長していける機会が増えています。
さらに言うならば、必ずしも編集者にプロデュースしてもらう必要はありません。良いものを書けばファンがつき、それがコミュニティとなり、勢いを増していくことも可能です。もちろん編集者がプロデュースすることで、その勢いを加速していくことが僕たちの仕事でもありますが(笑)
いずれにせよ、こういった形でWebを活用し自分の能力や影響力を高めていくことが、作家デビューへの近道の一つと言えるのではないでしょうか。
UM:
文学賞だけが作家への道だった時代と比べ、チャンスが増えたということですね。いろいろお話ありがとうございました!
●文責
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