シェア
henshu_ckr
2018年2月25日 20:25
「おいお前ら、なんの話をしてるんだ!」 痴話喧嘩に興味を持ったわけではないだろうけど、剣呑な雰囲気だったことを察知した岡本に訊ねられる。 大変な時に、身内がすいません、という気持ちになりながら、「彼女、別れた恋人なんです。五年ぶりに偶然再会して」と釈明する。「五年ぶりの再会に水を差して悪かったな」「いえ、昔のことを責められていたんで、助かりました」 お前も大変だな、と同情してもら
2018年2月22日 18:53
バスの中に執念深い元警官が乗っているということはわかったが、交渉には向いていないようだった。 十二月の風に身震いしながら目を開くと、目の前にはあかいくつバスが停留していた。運転手の顔を見て、またか、と思いながら俺はバスに乗り込んだ。 これで、六周目のバスになる。 警察は頼りにならなかったから、やはり自分の力でバスジャック犯をどうにかするしかない。 乗り込み、運転手に「港の見える丘公
2018年2月18日 19:48
俺は四回、同じバスに乗った。四回バスジャックに遭い、四回死んだ。 時を繰り返して四回も死ねば、少しずつ慣れてきて、考えをまとめられるようになった。慣れとは恐ろしい。 そこで得た情報は、俺を振った恋人が乗っていること、バスジャック犯人が次のバス停で乗って来ること、駆け落ち中のお嬢様とガタイの良い男が乗っていること、探偵と警察関係者が乗っていること、だ。 警察が乗っている、という情報は大
2018年2月15日 19:01
十二月の風が吹き抜け、体がぶるっと震えた。コートを着ていても、まだ足りない寒さだ。 あれ? 熱は? 爆発は? と目を開けると、そこには、あかいくつバスが停まっていた。運転手が、「乗るの? 乗らないの?」という視線を俺に向けてくる。 今、犯人は自分がピンチだと悟ると運転手にスピードを上げろと要求し、逃げようとした。 つまり、バスジャックそのものに目的があるのではない、という
2018年2月11日 19:36
「動くな! 動くとこの女を殺すからな!」 そう言いながらバスジャック犯が咲子さんを引きずるように歩き、運転席の隣まで移動する。「いいから、バスはこのまま走らせてろ」 運転手への命令を聞き、このままだと一周目と同じく、桜木町駅で爆発してしまうぞ、と内心で舌を打つ。「お前、なんでバスジャックが起こるって知っていたんだ? あいつの仲間なのか?」「まさか。あの人質になっているのは、俺の元
2018年2月8日 19:08
十二月の風が吹き抜け、体がぶるっと震えた。コートを着ていても、まだ足りない寒さだ。 あれ? 熱は? 爆発は? と目を開けると、そこには、あかいくつバスが停まっていた。運転手が、「乗るの? 乗らないの?」という視線を俺に向けてくる。 さっき、バスは爆発したはずだ。それも、二度もだ。 俺はセールストークを使って犯人に立ち向かったが、失敗した。 なのにまた、バスに乗る前に時間が戻っている。
2018年2月4日 19:56
グループ行動で、身勝手な行動をしてはいけません! そんなことは、小学校や幼稚園で教わるようなことだ。だけど、彼女は教わってこなかったのかもしれない。 いや、わたしには関係がございませんわ、と思っているのかもしれない。 このバスは目元と口以外を隠した男にジャックされているのに、お嬢様は気丈に声を張る。「城ヶ崎《じょうがさき》貿易という名前をご存知ないですか?」 城ヶ崎、と言われる
2018年2月1日 19:47
俺はバスジャックテロに遭い、一度死んだのに時を繰り返し、再びバスジャックされたバスに乗っている。 犯人の格好を確認する。 目出し帽で顔を隠し、紺色のもこもことしたダウンジャケットを着て、黒いリュックサックを背負っていた。ザ・強盗犯というわかりやすい格好だ。「いいから、このまま走らせろ!」 と運転手に命令をしている声は、聞き取り辛く、呂律が回っていない。テロを起こそうとしているのがバ