かえりみち
「みなさん、寄り道せずに気をつけて帰って下さいな。くれぐれも1人で帰らないように!」
どうやら昨日、通学路におかしな人が出没したらしく帰りの会で先生は念入りにそう言う。ただ僕にしてみればそんなことを言われたってどうしようもないのだ。というのも僕が住んでいる家は集落から遠く離れていて、通学路の半分は1人で歩いて帰るしかない。
小学生の頃の僕はそんな「ひとりぼっちの帰り道」が好きだった。1人で帰るというのが大人みたいで少し誇らしくもあった。昨日通学路に出没したおかしな人とは僕のことなのではないかと思えるほど大きな声で歌を歌っていつも帰った。頭にこびりついているCMの曲だったり、毎日帰りながら磨き上げたオリジナルソング(笑)だったり、、、。ひとりぼっちだからこその帰り道である。
そんな順風満帆とも思える帰り道であるが、1つの関門があった。それは通学路の終盤、道沿いの家で飼われていた大型犬である。その家の前を通るたび、恐ろしく獰猛にけたたましく僕に吠えるのだ。僕は彼が怖かった。(彼女だったかもしれないが)
そこで僕はほぼ畦道ではあるが、彼を避けて通る新しいルートを確立した。それからは卒業までずっとそのルートを使って帰った。我ながらとても可愛いエピソードではないかと思う。
大人になるにつれて怖いモノ、苦手なモノを避けることはいけないことだという空気を感じるようになってくる。でも避けていいし、逃げても良い。最近の僕はそんな風にも思う。だってそんな僕たちは可愛いのだから。
▼ちたへんりーの曲「かえりみち」はこちらからお聴き頂けます。
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