私の「どこでもない場所」
幼い頃、雨の日、いや、ピカピカに晴れている日でも、それは起こった。突然、何か胸の奥がザワザワして拠り所のない感覚に襲われる。視界にモヤがかかって、なんとも気持ち悪く、どこにも、誰にも触れたくないような。あぁ、またこれか、とその日はじっと耐える。はりついた笑顔を浮かべ人と接し、ウチに帰れば毛布に包まった。そして、次の日にはケロっとしていた。
大人になってどうしようもなく寂しくなるコトはあっても、あの、居場所のない心許なさは忘れていた。たぶん、その感覚が来てもやり過ごす術を身につけていたんだと、思う。
浅生鴨さんの「どこでもない場所」を読んで、それを、思い出した。鴨さんはきっと、逃げずに孤独に向き合える人。足掻くんじゃなくて、それでいいんだって、フラットに。そこに希望を見出す私は甘ちゃんかな。
なんだか胸の奥底で小さな目が、こっちをじっと見ている。「マリアンヌの夢」に出てくる石の目のような。でも、不思議とこわくはない。ただ、どうしようもなく胸が締め付けられるのだ。これが私の、孤独、なのだろう。