壁に少々らっきょう呪法【毎週ショートショートnote裏お題】
「壁に少々らっきょうペーストを塗る、と……」
「なんでですか」
メモを取りながらの私の質問に、白衣姿の教授はペースト塗りかけの壁から振り向いてきた。
「なんで、……って言われても昔から、このやり方で教えられてるから。困るなぁ理由とか訊かれても」
「らっきょう、じゃなきゃダメなんですか? ショウガとかニラとか、ニンニクとか、せめて梅干しでは」
「いーや知らないよそういうのも。何で? 何か困るの?」
「私、この世のありとあらゆる食材の中で、らっきょうだけはムリなんです!」
「ああ。大丈夫大丈夫。何も口に入れなくたって良いんだから」
「いえ。臭い自体がダメなんです!」
丸眼鏡をクイッと上げて教授はめんどくさそうな溜め息をついた。
「じゃあね。もう君、諦めなさい。うん。向いてない才能無いから」
「おお。らっきょうの臭いさせてな得られん才能なら要らんわい!」
そう啖呵を切ったがために私はいまだ世に知られていないのかもしれないが。
か?
(409文字)
裏お題がとにかく気になったもので。
実際には私らっきょう食べられますよ。
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