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メガネ朝帰り羽根【毎週ショートショートnote】

 主人が寝静まってからのメガネが何やってるか知ってるかい?
 羽根を伸ばして飛ぶんだぜ。いやホントホント。

「いやー。もう一日中こき使われて汗だっくだくでよ」
「俺の主人なんざいくら拭いたってレンズから脂拭き取れてくれねえ」
「メガネ掛けてる奴がみんなメガネ好きってわけじゃねぇんだよな。結構手入れしてくれてねぇんだよな」
「俺の主人なんかガキの時からで『もう顔の一部』とかぬかしてやがる」
 月に照らされた夜のメガネ界にも別嬪は存在するらしく、艶やかな笑顔に釣られフラフラ飛んで行く厚縁セルロイドメガネが、鼻先であしらわれては主人宅の屋根から転げ落ちたりしている。
 当今は丸メガネが人気なのだが、ひと昔前の類似系とは峻別される。メガネ界も人界同様に厳しい。落ちたとて窓からしゅるりと、主人の枕元かメガネケースに戻れるのだが。
 そんな次第で極めて稀ではあるが、目を覚まし顔に掛けたメガネの、レンズが片側だけ外れている事がある。


(407文字)

 メガネケースに入れて寝たのになぜだ(主人談)。

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