岡埜家家訓【ミヨコそこに座んなさい】
面白そう、
と言うよりそれこそ頭に湧き上がってきたので、
香坂兼人さんの以下の企画に参加してみます。
(文字数:約1000文字)
ミヨコ、ちょっとそこにお座んなさい。
あんたもうちのチャランポランな父親、
あんたにとってはおじいちゃんが、
酒に酔う度にやたら威張り散らして繰り返してた、
「岡埜家家訓」は知ってるよね。
そうそう。
やってもいいけど見つかるな、ね。
それは覚えていていいんだけど。
具体的にどういった行動か分かってるかい?
キャベツは取り尽くすなって事なんだよ。
言ってる意味が分からない?
そうだろうね。
それを今から説明してあげるから、
よくお聞き。
いいかい。
お母さんが大学に通っていた頃にはね、
学生寮ってものがあったんだよ。
学生たちが通う食堂、
学食なんてのもあったね。
今みたいに近所の人もランチできるような、
オシャレなメニューなんか無いよ。
ただとにかく安くで食えるから、
みんな助かってたわけだ。
それでね、
学生寮と学食は建物同士が割と近くにあって、
屋根付きの渡り廊下で繋がってて、
学食側の出口そばに、
業務用のそれはおっきな冷蔵庫があったんだよ。
観音開きになっている上の扉を開けたら、
結構な量のキャベツがいつも詰め込まれててね。
学生たちは時々、
親からの仕送りやバイト代なんかを集めても、
どうしても余裕が無い時なんかに、
同室の4、5人とでこっそりと、
そのキャベツをひと玉拝借したりしてたわけだよ。
何それドロボウじゃんだって?
ハハハ……。
その通りだよ。
暮らし向きに余裕が無い時にはだね。
人は生き抜くためにある程度の事はやるんだよ。
だけど、
だけどもね、
ある時どこかの馬鹿野郎が、
たった一人で、
一度に5玉も6玉も取りやがってだね。
翌日から冷蔵庫にはカギが掛けられちまったんだよ!
それも業務用のでっかい南京錠がね!
いいかい。
キャベツは取り尽くすもんじゃない。
時々、みんなで、ひと玉くらいだったら、
気付かれたって目をつぶってもらえるんだよ!
そしてキャベツを取り尽くした奴は、
得たキャベツ以上の恨みを、
周りの各方面から長期に渡って買うんだよ!
ああわりかし一生涯忘れちゃもらえないんだよ!
こうして折に触れて子孫にまで語られるくらいにね!
この話は人生の要所要所で応用が効くからね!
やってもいいけどせめて、
キャベツを取り尽くす奴にだけはなるんじゃないよ!
(余談ですがこのお母さんはキャベツを取ってません。
実家から歩いて通える国立を選びましたので。
ミヨコもその事なら知っているという関係性です。)