「ぜいたく」
自分はつくづく貧乏性だと思う。
中華屋に行けば、黙って注文した料理を待っているよりも、できれば厨房を覗きたいと思ってしまう。
まだ10代のころに無限にお金があったら、どうするのかを考えた。
とりあえず、プール付きの大きな家に住んで、毎日贅沢をするのかとも考えたが、恐らく自分はそんな暮らしに耐えられそうもない。
家が広ければ、それだけ掃除をする面積が増えてしまう。
この考え方がすでに貧乏性で、無限にお金があれば家政婦でも雇えば良いのだが、自分の家を他人に出入りされ掃除をしてほしくないと思ってしまう。
そんな風だから、お店でサービスを受けるのもうれしい時もあれば、そっとしておいて欲しい時もある。
基本的には、黙ってサービスを受けるよりも、どうしても自分で色々と調べたりしてやってみたくなってしまう。
今年の夏は、沖縄県の伊江島という島に行って、塩作りを直に見てせてもらった。
自分は普段、塩を取らない日はないし、当然どんな料理にも使うのに、その塩を作ったことがない。塩というのは、それくらいに当たり前に身の回りにあるものだ。
今回見せてもらった塩の作り方はいたってシンプルで、海水を港で汲んできて、登り窯のような窯で炊いて水を蒸発させていく。
ただ燃料の廃材のパレットを一個一個解体して窯に入る大きさにチェーンソーと丸のこで炎天下の元、切り刻まなければならない。
首の裏はジリジリと焦げるように焼けて、2リットルのペットボトルの水もあっという間になくなっていく。
そんなふうに、廃材を30時間から40時間ほどくべ続けたり、途中でサウナのような窯小屋の中で灰汁や小さなごみを取り除かなければならない。
その後、脱水したら出来上がり。
ただ、そうやってできた塩で塩結びを食べたらとても美味かった、貧乏性の自分にとっての贅沢とは、こんなものらしい。