「DIY」
村に来てから、色々と自分でやることが増えた。
必要に迫られてやる場合もあるし、自分から興味を持ってやることもある。それにしても、村の人たちは、なにかと身の回りのことを自分でやっている。
普段着のほかに作業着を持っているし、乗用車のほかに軽トラを持っている家は多い。
ちょっとした小屋を建てたり、草を刈ったり、家のメンテナンスをしたりと、みんなよくDIYをしているように思う。わざわざDIYなんていうよりも、ただ自分でやるのが当然と思ってやっているだけかもしれない。
自分でやれば費用も安く済むし、腕さえあれば自分の好みに仕上げることができる。もし、失敗をしても文句を言う相手がいないから文句も出ない。100パーセント自分が悪いのだ。
そうやって、自分の手でやっていくなかで色々と学ぶこともあるし、作ったものに愛着も湧いてくる。
人から聞いた言葉だが、「物は買ってすぐに自分のものになるのではなく、時間と手間をかけて段々と自分のものになっていく」らしい。
自分で愛着を持って作り育てたものは、他人にとってはなんてことのないものでも、自分にとっては、宝物とはいかないまでも、お気に入りにはなるだろうと思う。
多くの言語が話せて、多くの人とつながって、多くの本を読んで、多くの経験や可能性や物を集めた先に、一般的な「豊かな世界」があるのかもしれないが、自分の足下から広がって、目と手の届く範囲が気に入ったものや人によって満たされた「小さな世界」を生きるのも、悪くないないように思う。