蝉の声が聞こえない。 と気付いたのは9月14日の朝、出勤時だった。 年々、蝉の声を聞く時間が短くなっている気がする。そして見つけるのも下手になっているように感じる。 イヤホンをする時間、スマホを触る時間が増え、周りの音に耳を澄ませたり、周囲の景色をゆっくりと楽しむ機会が減ったからだろうか。 だとすれば、なんだか哀しい。 四季がある日本に生まれ、比較的緑豊かな土地に暮らしているにもかかわらず、自分から周囲の自然を意識する時間を減らしているのだから。 こうした気付きがある
朝から小雨が降っていた。 もう3月にも関わらず、空気は冷たい。 出勤時間まで余裕があったので、コンビニで缶コーヒーを買って飲む。 突然頭によぎったのは、幼い頃に父親と行ったサービスエリアで温かい飲み物を買ってもらった記憶。 薄暗く冷たい空気、人はまばらにしかおらず、少し遠くを走る車の音がよく聞こえる。 湯気と白い息が消えてゆく。 なんてことない情景を、こんなにも鮮明に思い出せるものなのかと少し驚いた。 短いノスタルジーに浸り、仕事場へ向かう。