「びみょい」
今年(2022年)春に大学生になったわが娘から採取した言葉です。
わからない人も、次のスキットを読めば、文脈から想像できます。
娘「あたし、くつが欲しいんだよね」
母「あれは、どうよ」
娘「う~ん。ちょっと色がびみょいんだな」
はい。「びみょい」とは「微妙い」のようです。そして、ここでは「微妙」が持ついくつかの意味のうちの、否定の婉曲表現で使われているみたいです。つまり、「その色、嫌いだ」。
「微妙」は名詞ですから、それに「な」を付けると、学校文法では「形容動詞」、日本語教育では「ナ形容詞」と呼びます。
それが、学校文法では「形容詞」、日本語教育「イ形容詞」と呼ばれる品詞(赤い、青い、高い、低い)として使われているんです。
実は、似たような誤用はほかにも多いんです。まず、代表的?なのが「きれいな」です。「綺麗」は名詞ですから、「な」を付けて、「形容動詞・ナ形容詞」であるのが正則。しかし、音が「きれ・い」と「い」で終わるので、そこがポイント。「綺麗」の否定は「綺麗じゃ(では)ない」が正しいはずですが、「高い」の否定が「高くない」になるような統辞法に引きずられて、「きれくない」となり、もしかしたら、今や、「きれくない」と使う人の方が多いかも。
※同じのに「黄色」がありました。「黄色くない」と言っても、もはや誤用ではないですね。
先達があります。「違う」という動詞です。これが活用されて、「違い」という名詞になります。「違いのわかる男。う~ん、マンダム」とか。この、動詞を名詞にする活用形は、学校文法で「連用形」、日本語教育で「マス形」と呼んでます。「いじめます→いじめ」とか。
で、「違い」という動詞の名詞化は、同じように「い」で終わるので「イ形容詞」として扱うという誤用です。どうなるかというと、もう、みなさんご存じですよね。というか、みなさんはすでにお使いじゃないですか。わたしの見るところ、年齢50代までなら半数以上の人が使っているようなんですね、以下のように。
「ちがくて」「ちがくない?」
最近、「エモい」なんてのが流布しておりますなあ。「エモーション」「エモーショナル」の「エモ」で、まあ「感動する」「心に響く」というような意味です。
こいつも、一昔前なら、「エモな」というふうに、「エモ」を名詞として扱い、それを修飾語に使いたければ、「な」を添えたんじゃないかな。でも、今は「イ形容詞」にしてしまったようです。どうも、「イ形容詞化」というのが現在の流れのようですね。おっと、ことばにイノセントな若い連中たちのことですが。
昔、例の「空白の一日」事件を受けて、「エガワる」ってのが流行りました。動詞にしてしまったんですね。事件は1978年のことでしたが、それよりもっと以前のことだったら、もしかしたら、「エガワなことをする」というふうに名詞に「な」を付けたぐらいの流行語になったかも。逆に現在だと、たぶん「エガい」だな。絶対だよ、たぶん。
※この項、久しぶりに酔っ払いで書きました。醒めて読み直したら書き直しする可能性大。それまで寛大なお志でお取り扱いくださいませ。ヒック。