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第94夜 玄冬の借景

青春の夢はあくまでも遠く
それでも何の迷いもなく
上塗りを繰り返し
小走りに可能性をノックし続けた

朱夏の恋は微塵も疑うことなく
相手だけを見つめ続けた
それはファインダーを覗くかのように
不要なものを全て排除しながら

白秋の皺は涙の通路として
幾度も幾度も潤乾を繰り返した
時に体躯の悲鳴
時に別れの嗚咽とともに

玄冬の眺めはひたすら明瞭
苔蒸した庵縁からの借景は
老梅に淡雪の花
冴月に凍星の煌めきか

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