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第32夜 種を、蒔け。

その男の拳は振り上げられた
そしてその手は大きく開かれた
拳の種は風に乗り
荒野に散らばった

何度も何度も拳は振り上げられ
風は時に向きを変え
種はくまなく広がった

風よ来い
雨よ来い
陽よ来い

この荒野を埋めるのだ
様々な色の花で
それはいっときかもしれない
のちに乾きくすみ萎びた野になってしまうかもしれない
だが私は種を蒔き続ける
必ずそれは殻を破り柔らかな緑色を芽吹かせるはずだ

蒔かなければいけない
でなければそれはいつまでもやってこない
拳を突き上げよ
風を呼べ
そしてその手を大きく広げよ
必ずそこは命の色で満たされるから

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