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第55夜 超肉眼フェーズ1

 AIでの画像表現が自在になり実際の視界はリアリティを欠き始めた。つまり自分の目で見ているものが自分で信じられない事態になったのだ。アウトドアでの視界はまだしも、窓越しの景色はモニターと区別がつかず、ガラスというフィルターが意識をそうさせた。
 目の前の事象は網膜、水晶体、光の働きにより、分子で構成された物体を認識する。いわゆる肉眼と言われるものだ。AI画像は数多の事象を混在させフォルター越しに肉眼で視覚させるもの。だがそれはこの世に存在するもの、想像できる範囲のものに留まり、非現実な脳内イメージを具現化するにはまだ時間がかかるようだ。つまり高精度光学顕微鏡で到達し得ない事象はAIに備わっていないことになる。
 さて、高精度光学顕微鏡はある一点の中に入り込むことから始動する。そこに周囲という概念はない。外的作用がない環境ほど集中度は増す。だが、その微なる世界に外的作用が働かないことはあり得ない。どうしたって周囲の中での存在だからだ。では周囲もろとも微に迫るには? 画素数を莫大にしていくのが現時点の解だ。しかも億単位で。
 機材のブレを排除し眼前のパノラマを撮影する。25億画素は彼方の白波を伸ばした手のひらより間近に表示する。では同じ手のひらほどの間隔でキャンバスにスパチュラで盛られた油絵の具を写す。そこには色彩の山脈、いやその岩肌や森林の苔までもが見える。
 イメージではなく実在するものを肉眼では成し得ない形で視覚する。25億画素、この数値はさらに進化していくだろうが現在は肉眼を超えた段階、フェーズ1である。次フェーズでは分子を写し、さらなるフェーズでは素粒子を写す? それは視界にこの世の摂理が写ることを意味する。宇宙を構成する摂理だ。不可侵領域? いやすでに意識としてはそこを認識しているので、写すことで地上の全肉眼で確認できることになるだけだ。その初期段階、今はフェーズ1なのだ。



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