アナスタシア
[ネタバレ含みます]
公開 : 1997年11月21日
監督 : ドン・ブルース、ゲイリー・ゴールドマン
ジャンル : ミュージカル・アニメーション
セル画からCG作画に切り替わる時代のアニメーション。コピーできるとはいえ相当な枚数を描いたはず。しかも約90分の超大作。映像美に圧巻だった。
声を先に録音し、役者が動きまで演じたということなので、恐らく実写で動きを撮影し、それをトレースしているのだと思う。人間の表情の描き方が独特で、人間の筋肉の動きまで伝わってきた。ファンタジー映画だが、どこまでも写実的というか、現実的なアニメーションだと感じた。
一瞬のシーンに何人もの人の手が加わって出来上がっている。どのアニメーションにも言えることだが、本当にとんでもない労力だ。
パリでのシーンはゴッホ的な背景描写やロートレックが描いたようなムーランルージュの世界を取り入れることで、当時20世期前半のパリが芸術の最先端であったこと、世界中の人々が憧れそこに集まってきていたことがわかる。
最後はアナスタシアが自分の手でラスプーチンを仕留める訳だが、謎のプリンセスパワーや概念で悪を浄化するみたいな描写ではなく、彼女のフィジカルで魂の入れ物を粉砕していたのがなんとも人間味が出ていていいシーンだった。ディミトリは「男は弱虫だから」と自虐していたが、女性が守られる立場、男性は守る立場みたいな考え方じゃないのが他のプリンセス系(?)とは違うこの映画の味になっているように感じた。
見終わった後アナスタシアについて調べたが、実在の話がベースになっていることを初めて知った。アナスタシアの外見的特徴、性格は資料に残ってる内容に沿ったものになっているらしい。
悪役のラスプーチンの見た目がそっくりで驚いた。
このお話はアンナアンダーソンという記憶喪失の女性がアナスタシアを生涯名乗って過ごしていたという実話が元になっているらしい。彼女の死後、1994年にDNA鑑定でアナスタシアではないと判明したので、1956年の『追想』という映画のリメイクしたこの作品は彼女が本物であるという前提で作られているという事だ。
7歳の時の宮殿での記憶がない設定が謎だったのだが、そういう事か。
史実では、アナスタシアは17歳で殺され、遺体はバラバラにされたようだ。
ラスプーチンも恨みを持つ者に暗殺され川に捨てられたのだという。
この現実を知ってしまうと、この物語を見る視点もまた変わってくる。
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