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ローマの休日

[ネタバレ含みます]

公開 : 1953年8月27日
監督 : ウィリアム・ワイラー
ジャンル : ロマンス

正直10年前くらいに見て、記者の家の雰囲気がいいなくらいしか覚えてなかった。

モノクロとカラーの両方の映画があった時代。アカデミー賞も白黒部門というのがあった。
このローマの休日はお金がなくて白黒映画になったらしい。そんな理由だったんかい!本当はカラーで撮りたかったらしいが時すでに遅し。
だが結果的にこのモノクロの雰囲気が高級なアンティーク感を演出していてこの映画には合っている気がする。カラーだったらまた印象が違っていたかもしれない。
というか急遽カラーにしてしまっていたら衣装チームは相当苦労することになったのではないだろうか。モノクロなのでアン王女の衣装は一番目立つように明度の高い色、恐らく白で統一されていた。細かいディティールよりもシルエットを重視した衣装デザインがまた素晴らしい。デザイナーのイーディスヘッドはアカデミー賞の衣装部門に輝いている。

「公務の自覚がなければ私は戻らなかったでしょう」というようなアン王女のセリフがあったが、これで「ローマの休日」って王女の休日って事なのかと今更初めて気づく。
王女の脱走とか逃亡とかじゃなく「休日」という表現が粋だ。あくまで息抜きですが何か?みたいな。
どんなに忙しくても時には休暇は必要。国のトップが突然休んだところで大事な用事があったとしてもどうにでもなってしまうんだから、休むことを怖がらないで限界がきたら皆休もう。

19世紀〜20世紀にかけて女性の社会進出が盛んな時代となっていく。
王女の髪を短く切る、バイクに乗り後ろに男性を乗せる、追っ手は自分で撃退する。などの描写は女性らしさからの脱却、自立した女性像を描いており、現代の女性達からも根強い人気があることも納得だ。

ただ、これはフランスを舞台にしているが、あくまでアメリカから見たフランスの図であって制作もアメリカということは重要な点だろう。アン王女も某国とボカされているし記者のジョーもアメリカの会社という設定である。
第2次世界大戦後の1950年代、戦勝国のアメリカと一応連合国の一員だったがドイツに支配され政情が不安定だったフランス。トランプ政権が度々言っていた「強いアメリカ」というのはこの1950年代を指すらしい。
ファッションはオートクチュールが上流階級から徐々に一般市民にも広がっていき、オートクチュールの黄金期としても1950年代は有名だ。
一方女性達は中々働きづらい社会だったようで、女性の社会進出が本格的になっていくのはこの10年後くらいからだ。
そしてフランスでの撮影では市内で暴動の起こる街中で行われたそうで、この「政情がどうであろうと関係ねぇ!おれだおれだ〜!」みたいな強行する感じがアメリカっぽい。と言ったら怒られそうだがそういうイメージは否めない。
さらに劇中に出てくる登場人物たちは全員白人。黒人の姿は見かけない。19世紀後半から移民を受け入れていたというフランスは様々な人種の人たちが混在しているはずだ。もしかしたら当時は今よりも人口は少なかったかもしれないか全く居なかった訳はないだろう。
この辺りの背景はトランプ政権のイメージと合致する。「強いアメリカ」「古き良きアメリカ」というのはフォーマルな衣装に包まれた白人だけの世界ということなのだろうか?
このローマの休日は当時のアメリカの「休暇は綺麗なフランスで過ごしたい♡」みたいな理想像を体現したものだったのかもしれない。


一応書いておくと、この作品を引き合いに出してもう終わってしまった政権を批判したいではない。私はこの作品が嫌いなわけではないしむしろとても面白かった。しかし、「面白い」「綺麗」だけが世の中を作っているわけではないという事は忘れないようにしたい。


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