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八澤氏のムビスタシリーズはどうして売れているのか?

マナビズムの八澤氏は、今夏、ムビスタシリーズから英文解釈、古文解釈の参考書を立て続けに出版した。これで、八澤氏の参考書は、古典文法と合わせて3冊となる。

これらの参考書は、アマゾンのブックレビューでは賛否が両極端に分かれているようだ。
否定的な意見は、総じて、内容が薄っぺらだとか、間違いがあるというものだ。
これに対して、これをやって英文が読めるようになったとか絶賛するものも多い(中には、出版されて間もないのに、もうそんな効果が分かるものなのかと疑問なものもあるが)。
総じて、評判は良く、売れているようだ。

自分自身の感想は次のようなものだ。
まず、高い! 
古文読解なんて、あの薄さ・問題量で1760円。レビューする気も失せた。他の本も、類書に比べて高い。後記の内容についての感想も相俟って、財布の紐が弛まない。古本屋で多少安くなっていても買う気が起こらない。
内容についての感想は、楽しくなく、これで自学自習を続けられるのだろうかというものだ。
古典文法は、出版された当時、あまりにも評判がいいので、どんな素晴らしい参考書なのかと思って立ち読みしてみたが、学校で配られる文法書・演習書とあまり変わるところがなく、絶賛されるほどのものではないなと思った。もちろん、ポイントとなるところを説明・整理・演習させて定着させようという工夫は見られる。しかし、そこで示されるポイントは、学校で配られる文法書・演習書にも書かれていることで、それを超えた面白さが本書にあるものでもない(授業動画も結局のところポイントを連呼しているだけだ。)。
参考書をやり遂げるためには、楽しくないといけない。苦痛を感じるようでは続けられない。無味乾燥の学校配布の文法書・演習書であってもやり遂げることができる(人がいる)のは、古文リーダーの授業と並行して学習しているからだろう。授業が分かる、授業でやっていたことはこういうことだったのかと実感できるから続けていける。これが、文法書・演習書だけやらされるとなると、途端に退屈で続けられなくなる。
それが本書になったとしても同じだろう。最初のうちは、分かりやすく整理されているので「分かる、分かる」と進んでいくが、覚えることが多くなってくると頭が飽和してくる(ガチガチに暗記をさせる本書は尚更であろう)。それでも続けていけるだけの楽しさが本書にあるだろうか(古典文法程度のボリュームなら一気に駆け抜けることができるかもしれないが)。
英文解釈の感想は既に別稿で述べた。要約すると、チャプター1は「何じゃこれは」という内容だが、例文演習は基本的なところから丁寧に解説されており、初学者でも取り組めるだろうというものだ。付け加えるならば、本書も、覚えることが多くなってくると、最後の方は息切れしてしまうのではないかという気がする。

いろいろ批判めいたことを述べたが、初学者を中心に本シリーズが売れているのは事実であろう。
では、なぜ売れているのか。それは、本シリーズが勉強の仕方ごと教えるものだからであろう。

まともに勉強をしたことがない者は、どの点が重要なのかを理解し、それを、どうやって身につけるのかについてのノウハウを持ち合わせていない。勉強のコツというやつだ。だから、時間を掛けても身につかないし、勉強ができたという実感も持てない。
本シリーズは、重要ポイントを図式的に整理して、暗記すべき事項を提示し、要点整理、一問一答、演習、ミニブックという仕組みで定着させていく。この仕組みに乗ってしまえば、悩める初学者も、勉強している、勉強ができたという実感を持てるだろう。本シリーズを絶賛しているのは、こういう初学者や、勉強の仕方を知らない初学者を何とかしてやりたいと思ってきた指導者であろう。逆に、上級者にとっては、「そんなこと分かっているわい」ということばかりなので、粗の方が目立ってしまうのだろう。

もっとも、学校の授業でも学校教材でも、重要ポイントや暗記すべき事項は示されたはずだし、定期テストで定着させるという仕組みもあった。しかし、自ら手を伸ばして選んだ参考書と学校教材とでは取り組む際の姿勢が異なる。そうやって取り組んだ参考書ならば定着度も高いのは当たり前だ。この参考書をやって初めて分かるようになったというレビューは、もともと、そういうバイアスがかかったものだと理解すべきであろう。要するに、初めてまともに取り組んだ参考書は神に見えるということだ。





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