人物造形のヒント プロローグ
“Those who have charm usually get listened to and often get extra chances. They are given opportunities other may never get. They can be forgiven for things others would be crucified for. They will be told things that others may never hear. People make excuses for them, go out of their way for them, and always give them the benefit of the doubt.”
(The Power of Charm, Brian Tracy & Ron Arden -CHAPTER 3 : What Charm Can Do)
のっけから引用で申し訳ありません。でも大事なことが書かれているので、どうか引用させてください。
これは、私が『愛を犯す人々 番外 啓志郎』の「凪はこんな人(だと思う)」、『春を謳う鯨』㉑の執筆当時、参考にしていた部分です。(実は、手元に日本語版がなく、英語が苦手なかたには…大変恐縮です…「凪はこんな人」の「アレを持っている人」の説明部分、㉑で佐竹さんの説明する鈴香の「徳」が大体同じ内容です)
魅力的な人物を描きたいですか?
海外ドラマの主人公のように? 日本純文学のヒロインのように? それともそんな「ように」を超えた、新しい魅力を持った人物…?
魅力的な人物というのは必ずしも「真」「善」「美」「正」といったポジティブな要素だけで成り立っているわけではありませんね? 醜い人柄を見せつけられて嫌々ながらも頁を繰る手が止まらない時もありますし、悪に染まる主人公と共にドキドキハラハラする時もあれば、とりたてて特徴のない「普通」な主人公の物語に、なぜか引き込まれる時もある。一見、彼らにはこれといった共通点があるようには思えません、しかしながらその一方で、言葉にはできない「何か」を彼らが持っていて、そのせいで私たちは物語に引き込まれているようにも思われます。
私たちはどうしてその人物に引き込まれるのでしょう?
あるいは逆に、ある人物がもっともらしく描かれているにも拘らず、その人物が魅力的に見えないことがあるのは、なぜでしょう?
人物を描くとき、私たちは彼らがどのような人かを伝えるのに必死になるあまり、彼らが持つ物語上の特殊な性質、話素としての作用性を忘れがちです。けれどもこれは物語の裏側を支えている、大事な性質。少なくともすっかり忘れているのでは、せっかく生まれた人物が、物語のなかで自分の力を発揮できません。そうです…何も、人物を丸ごと書き換える必要はないのです(せっかくそこに作り上げたのだから!)、ただ、ちょっと魅力が欲しいと思う時、私たちは読み手の目と書き手の手でもって、物語の動線に、少しばかり目を引く動きを持たせるだけでいい。
「人物造形のヒント」では、頭に浮かんだあなたの「その人」を、形としてはどうやって落とし込めば魅力的に描けるのか、あるいは現実的な説得力でもって描けるのか、内容面でのヒントでなく、あくまで技術面でのサポートを、お届けできればいいなと思っています。例えば…背景と個性の違い、感情と行動の関係、読み手にとっての心理描写の奥行きがどうやって決まっているか、など…更新は…乱れ打ちしてしまうかもしれませんし(躁状態のあいだは 笑)、たまにになってしまうかも、しれません。が、次回作までの中休みのあいだの箸休めシリーズとして、お楽しみいただければと…(読み手の皆さんにも、ちょっと小説が楽しく読めるヒントになりますように!)
もちろん私なりの、という留保付きです。
私の作品を読みにいらして、励ましをくださった、たくさんの書き手の皆さんに、私なりの精一杯の感謝の気持ちを表そうと思って、書いています。書きます。
お役に立てれば、これほど嬉しいことはありません、時には面白くないことを書いてしまうかもしれませんが、そんな時はどうぞ読み飛ばして、「ふーん、そんな人もいるんだ」くらいの感じでいつもどおり気軽に、気長にどうか、お付き合いください。
次回までの宿題:
魅力的な登場人物がなぜ魅力的なのか、ちょっと詳しく、理論的に考えてみましょう。※ここでいう魅力的とは「目が離せない」「続きが読みたい」ようなという意味です。 →答えがある宿題ではありません。これは「きっかけ」という、私なりの感謝の表現形(のつもり)です。ひらめきがあったらぜひ、教えてください!
今日は明日、昨日になります。 パンではなく薔薇をたべます。 血ではなく、蜜をささげます。