祐介はこんな人(だと思う)
【あわせて読みたい:これは短編「愛を犯す人々④美津紀」の付録です。読むと二度美味しくなる裏設定を、全部載せでお届け。騙されないで!危険人物です、人間だと思わない方が理解しやすいです、それなりに努力してます、ごめんなさい沸き起こる妄想に逆らえないので書きます、祐介の好きなもの。他】
祐介さんに魅了されてしまった女性読者の方…!いますよね、私はいると踏んでいます。
あのね…すみません。騙されてます。
特に未婚の人、心を支えてくれる他の誰かがいない人は、絶対に近寄ってはいけません。人生の花盛りの無駄遣いになります。いいの、騙されてても。という猛者のみ、祐介さんにチャレンジしてください。ね。楽しめる人には結構、楽しい人です。今回は、若くて割と美人な花野さんを守るために、射程距離外の私が祐介のお相手をします。射程範囲外と断言できる理由は、後ほど…。
さて、祐介さんの恋愛遍歴は教養小説が編めるレベルなので、「その男、祐介」くらいの感じでスピンオフできるのでは。と思い、少し編んでみたところ、一匹のモンスターと、そのモンスターが食い散らかした乱雑なエロの残骸が乱雑にとっ散らかっただけでした。後半はまだエロだけは丁寧になったけど、エロだけで小説を書くと純粋なエロ小説になるので趣旨に反するのですね。あーあ。
祐介さんの失言例を挙げてみましょう(閲覧注意です、すみません)。
「えー?君とはもう10回はしてるからなぁ。普通?普通に勃起できるレベル?まあ、抱き慣れた美人より、初めて抱くブスの方が断然、燃えるよね(本音)」→この発言があったデートのあと、お別れメールが来ました。
「君、そこそこ可愛いけど、もうそろそろ市場価値なくなっちゃうんじゃない?収入ないし、早く結婚した方がいいよ(本音)」→会ってもらえなくなりました。
「そりゃ女は若い方がいいよ。25くらいじゃないの、曲がり角。本当は、きれいで年取ってるより、ちょっと残念でも若い方がいいんだよなぁ(本音)」→相手28才彼氏なし。泣かれて、別れられました。
「だってゆるいんだよね。俺、全然気持ちよくなれないよ。君も気分、もたなくなってきてるでしょ、もう口でして終わりにしようよ(本音)」→その場は乗り切れましたが、お祈られました。
「うっわ、やっすい生活してるんだね。生きててつらくならない?(本音)」→返信が来なくなりました。
「うーん、俺は出せればいいからねぇ(本音)」→殴られました。
「≪女≫って、減価償却なんじゃないの。捨てられたくないなら、もっと危機感持って、スピード感出して価値上げていかないと。まあ、それでも資産としての女の価値は下がる一方だけどね、無駄に足掻く人、俺は好き(本音)」→頭からジョッキビールぶっかけられて、立ち去られました。
「このさぁ、成功した男がそのへんのふっつーの女をタダ同然の金で買ってる感じ、すごくいいよね(本音)」→嫌われたうえ、やれませんでした。
さ、さいてい…!念のため確認しておきますが、祐介は職務遂行能力や生産性については男女を完全に公平に評価し、仕事の成果に対して年齢は全く考慮に入れません。そりゃそうでしょ。だから、プライベートの男女関係においての発言です。とはいえこれはひどい。ひどい以外に何の言葉も出てこない。このひどいのを120人分くらい反復試行し、ちょっとマシだけどふとした大幅減点のせいで即不合格になるのを40人分くらい試行錯誤し、ようやくギリギリ大丈夫なのを、出口戦略立案訓練を重ねながら5人くらい竜頭蛇尾した結果、やっと今の祐介さんがいます。しかし、最底辺から力づくで這い上がって来ましたね。努力家なんですね。
祐:うん。素直が取り柄って思ってたのね俺、でも、言うと怒られちゃう本音があるでしょう。だから女の子が嫌そうな顔、したことある考えはね、思っても言わないことにしたの。そしたらだんだん、すごく女の子に愛されるようになってね。しかも可愛い子に。
機械学習ですか。
祐:そうなんだよね。実は、理由はわかんないの。好きだったら、自分の気持ちに気付いたり、面白いこと思いついたら、伝えたいなあ、って思うでしょう。けど、言うとひどい目に遭って、言わないとすごくモテるんだもん。とりあえず一回辞書登録した一言は、二度と言わない。
言ったらひどい目に逢うようなこと、思ってるんですね。
祐:えー、絶対、言わないよ。思想は自由だよ。
ちなみに美津紀は。
祐:あ、来た来たそういうの。俺、本人のいないところでも、その人が気を悪くする話、絶対しないよ? 美津紀は、超いい子。可愛いし、綺麗だし、細いし、白いし、賢いし、エロいし、俺、あの子大好き。
思ってるんだ。
祐:ふふ。俺、こうしようって自分で決めたら、ちゃんと貫ける人なんだよね。仕事にも、そういう勘所あるでしょ。俺は美津紀が嫌がりそうなことはね、美津紀がいないところでも、火炙りにあっても、言わない。俺は美津紀を超いい子だと思ってて、大好き。
困った人ですねえ。
基本、素直で嘘つかないんですねこの人。だからあれです、卓球で打ち返せなくなったら負け的な感じで、失言するまですごく愛されます。機械学習、させてみたことありますか? あれね、精度上がってきたと思っても、はぁぁ?って、わけわかんないほどわかりやすい問題を落としちゃったりするんですよね。あれです。だから付き合いが長くなってくると、黒ひげ危機一髪感がすごいです。ヒヤヒヤとドキドキの連続です。ああ心臓に悪い。
さて、そんな祐介は、女心、というか人の心に全く共感できないのと同様に、実は良いとか悪いとかにもいまいちピンと来てません。数字がすべて。HPがすべて。スカウターがすべて。だから、社会を生き抜くために得た技として、数字がつかないものについては基本的に、人が評価したものを評価するという傾向があります。実を言うと、寝取り趣味もその一種。お相手の彼氏や旦那の話(特に労働時間や年収)をめちゃくちゃ聞きたがります。自分の感性に自信ないんですよね。本篇で切り取られた一夜、いきあたりばったりを装いながらも、祐介はお店を6件チェックしてて、食べログの点数順に上から見て回りました。ラブホも様々なラブホ専門サイトの点数を合わせてからの選択。美津紀を見送ったあと自宅までの経路はマイナビとヤフー乗換案内を見合わせ、勧められた経路が違うことにうんざりしつつ、明日の天気を3つのサイトでチェックしました。買い物する時は価格コム・アマゾンに加えて商品属性に沿って4サイト、読む本は新聞の書評かダ・ヴィンチかFIGAROに載ってる本、クラッシック専門誌とロック専門誌で勧められる音楽を聴き、映画専門誌で特集を組まれた映画を必ず見ます。村上春樹が飲むウィスキーを飲み、池波正太郎が行ってた洋食屋に行き、ミシュランの星付きレストランの予約合戦に慣れてます。パソコンは雑誌やネットでも勿論調査しますが、口コミが固まるまで買い替えません。なお、ミモフタモナイ内容のツイッターのフォロワーは7000人。炎上しない程度に力加減してるのが、また小賢しいんですよねえ。いいねしてきた人がどんな人かは必ずチェックしに行き、そのフォロワー数を合計して自分のツイートのいいね度を評価します。フォロワーのアカウントを見に行くたびに、伏せ字をする以外に祐介を守ってあげる方法がないような感想を抱き、ちょっとばかり疲れた気持ちになります。
疲れるよ。これは。
ただまあ、「量は質を変える」んですね。そんなに共感する心が無いのに、まあ随分な調査と情報収集で、ここまでたどり着きました。見たところ、少年のような純粋さと有り余るお金を持ち合わせた、教養もセンスも理解も仕事もある素敵なおじさまです。諦めないという言葉はこの人には、よく似合います。
気になってきてますね、奥様ですね。はい。自由が丘に豪邸と言っても過少評価に聞こえるくらいのキンキラキンの実家があります。奥さんのお母さんは芦屋嬢で、お父さんは業界最大手小売の名誉顧問。よく浮気バレないね?と思いますが、祐介は日頃フルスロットルで働いてるハイパービジネスパーソンにつき、「仕事で」あるいは「付き合いで」が9割5分がた真実。奥様は奥様で、関西に本社を置く母方のお爺様の会社の取締役をしてますので、不在がちでお忙しいのですね。この奥様が祐介の、人としてどうしようもないところを深く愛してやまない、という、これまたどうしようもない人なので、二人は仲良く人生を謳歌しています。そういうわけでして、奥様は祐介ベンチャー時代からの、糟糠の妻。ダブルインカムノーキッズ、パワーカップルですね。ブランド品以外は着ない奥さんと、ブランド品以外は買わない旦那さん。美男美女。二人とも高学歴高身長高収入。奥様に至ってはお家柄までよし。大変、お似合いです。
祐:ね。俺、最近、あとは死ぬだけって思うよ。
おお。案外、暗いんですね。いま、うっかり親近感が湧きそうになりました。
うーん、振り切れてきたところで、もう一発、振り切っちゃおうかな。(※祐介がこんな人「だと思う」というこの付録のタイトルを思い出してください…すみません、私、振り切ります。)
祐介は23歳以上30歳未満の女性としか、セックスしません。よって、現在36歳の奥さんとは、奥さん30歳の誕生日以降、完全にレス。はともかく、美津紀の「期限切れ」を前に、半年前から25歳の既婚OLちゃん(パワープレイヤー、子どもを作る意思なし)を見初めてあり、株を教えるのを口実に色々なことを教え込んでます。祐介は忙しいのでロックオンしたらあまりブレないんですが、移行期間は並行稼働でプライベートが忙しくなります。ほんと、元気なおじさまですねぇ。月経が軽く短くなることを理由にピルの処方を非常に強く勧め、最近は「友人」の要くん(プロ)や「先生」のミホさん(プロ)を招いて月2ペースでパーティ、露出指示、メール調教。この先は伏せ字の嵐。などなどですね。OLちゃんもメロンメロンです。そんなことはもちろんおくびにも出さず、美津紀を先日も、高いラブホの一番高くて広い部屋のベッドでニャーニャー言わせて、ヨシヨシいい子いい子しています。ひぃ。誰か、誰かいませんか、通報してください。
美津紀に、もうすぐさよならの件は言わないの?
祐:大丈夫だよ。美津紀には彼がいるでしょう。俺ね、こんな人間だからこそ、人を見る目は結構あるの。美津紀、彼とセックス再開したみたいじゃない。ぜったい子作り狙いだね。美津紀は周期も安定してるし、若いから年内に子どもできるんじゃないかな。言いたがらないけど、去年入籍してるでしょ。女の子って、簡単に雰囲気変わっちゃうよねぇ。そういう、生ものって感じ、堪んないよね。美津紀はね、もっと、美津紀が若い時に会えてればよかったのにな。俺が付き合える期間は、もう終わり。大好きだからって、年取らないわけじゃないんだもんねぇ。寂しいよ。
ほらね、近寄らないで…!
…うーん?そういえばしかし…そんな、ちょっと?かなり?やばい感じのがお好みなのに、美津紀のことはそろそろとお姫様のように抱いてるんですねぇ。腑に落ちないな。
祐:俺は素直が取り柄だってずっと言ってるでしょう。美津紀のことはね、ほんとう、大好きなんだよ。美津紀がしてほしいことや喜ぶことは、なんでも、してあげたいの。叶えてあげたいの。それが、「大好き」の意味でしょ。
…OLちゃんは?
祐:俺の答え、わかってる癖に意地悪な質問するね…?俺、色々な力あるけどさ、記憶力も結構あるんだよねぇ。あの子のことは…「ほんとう、大好き。あの子がしてほしいことや喜ぶことは、なんでも、してあげたいの。叶えてあげたいの。それが、『大好き』の意味でしょ」。ね。正解しか言わないでしょう俺? しかも俺、黙ってることも多いけど、言うこと全部、本心だからね。あの子も超いい子で、俺、大好き。やりたいこと全部、していいよって言ってくれるんだけど、全部やったらきっと、心も体も壊れちゃうなぁ。悩ましいよ。幸せな悩みだよね。
…ほらね。近寄っちゃ、いけませんよ。危険です。
祐介の好きなもの。ウィスキーを片手に、自宅書斎のマホガニー本棚に並ぶ世界文学全集50巻を眺めて、「途中で苦労があっても、やると決めれば投げ出さずにやり抜く力」が自分にはあり、その結果、人より抜きんでるだけでなく、人より豊かな人生を送ることができている、と確信すること。社長にイライラせず、部長に叱責せずに済む奇跡の一日。通勤電車に乗ってる時に、この人たちが全員、服を着ていなかったら…と想像すること。中古で買ったゼニアのネクタイを、そうと気づかれずに褒められた時の見下した気分。これといってお金の使い道がないなぁ、とひとりごちる時。若くて綺麗な女性。のつむじに後ろから突然キスして、びっくりされる自分を想像し、興奮すること。忙しくて全く乗れないんだけど、季節に一回くらいは奥さんとドライブに行ける、奥さんと共同でローン支払い中の、ベントレー。エレベーターの鏡に映る自分たち夫婦の姿と、周囲の憧れに満ちた眼差し。人間椅子の座り心地。大切に世話されている獣の毛並を思わせる、美津紀の髪の手触り。舐めあげたくなるような、美津紀の美しい脚。美津紀の脇や草叢の、甘くてくらくらさせる性の匂い。に、埋もれている感じ。美津紀の舌遣い。美津紀の、細いのに骨ばってない、優しい手首。美津紀のしなやかな指に、自分のよく手入れされた指を絡めること。セックス中だけちょっと高くなる、美津紀の声。射精。と、射精する直前の、一瞬。美味しいものを食べた時に、ため息をつくために小さく開く、美津紀の、可愛らしい口元。
以上です。
本篇は、こちら:
美津紀は、ここにいます:
今日は明日、昨日になります。 パンではなく薔薇をたべます。 血ではなく、蜜をささげます。