愛を犯す人々 「カーテンコール」
【合わせて読みたい:これは一話完結の連作短編集『愛を犯す人々』のシリーズ完結記念スペシャルイベントです。「花野さん大困惑!おんなまつり座談会 女性だけ集めてみました」、精一杯の、ありがとうの気持ち。】
※皆さん、500回記念式典の時にちょっと見かけただけ。なんとなく、顔見知り感はあるものの、一部を除きお互いのことはほとんど知りません。フェンは陽菜子・美津紀・戸田先輩と同じ会社なんで知り合いですが、まあそこはそこ、お互いもう大人ですから。ちなみに、入れ違いの入退社で、陽菜子・美津紀と戸田先輩は面識ありません。
花:ええと…「本日はお忙しいところお集まりいただき誠にありがとうございます。早速、アイスブレイクといたしまして、パートナークイズを行いたいと思います。皆さん、スクリーンに映りました男性陣の写真をご覧になり、関係をお持ちの男性以外の誰かを選んで、ご自由にお話しください」。
フ:これ、もしかして、男の人たちにもしたの?悪趣味だと思う。
沙:同感です…。
戸:「あなたの愛読度チェック」的な企画でしょ。いいんやないの、たまのお祭り騒ぎで。実を言うと、うち、三谷くんと高坂くんがいるのが気になるんよねえ。まあ詮索はしないけどね。
美:…? どうしてご存知なんですか? お仕事?
フ:戸田さんはOGだよ。いまみっちゃんのしてるお仕事、戸田さんが取って来た仕事の、保守からの再開発契約。
戸:あーあ世代交代やねぇ。まだ女性少ないの?
美:ああ、少ないですね。私はあんまり、女の人ばっかりでも苦手なので、いいですけど…。
凪:あの…どうして誰も陽菜子さんのこと突っ込まないんですか?
フ:うーん…コンセプトが読めない?から?インスタレーション?イベント?かな?って。
花:あ、そうか。文章には画像がないのだった。
陽:あ、の…困り、ます…。
紬:どうして? 可愛いよ…。
紡:お腹、すべすべで柔らかい。細いのに、ちゃんと柔らかいんだね。全身、触ると反応返ってきて楽しい…ね、そんな気持ちいい顔されたら、やめられないな?
花:まあ、いいか…一応服は着てますので。だいぶめくれてますが。放っておきます。そのようにとの指示が出ています。
陽:え、で、も、みんなで、お茶会、って…。…!…!…ゃ…。
花:うーん…何かに抵触する気がするので陽菜子さんにはあんまり話を振りませんから、存分にお楽しみください。皆さんも、これは陽菜子さんの趣味でもありますから、お楽しみください。
沙:いいなぁ…。
美:そういう趣味なんですか?
沙:いいえ、なんだか、純粋に気持ち良さそうで。私、いつも少し、なんというか、その、辛いから…。
フ:あんまり口出しするのはよくないかもしれないけど、自分を大事にしてくれない人といるのは、自分にも失礼だと思うよ。
沙:大事には、してくれるんですが…。
戸:違うよこの子、自慢してるんよ、ほら、見てここ、うっすら縄跡あるもん。
凪:…! ほんとだ。ご結婚なさってるんでしょう。そんなの、大丈夫です?
沙:いえ、これは、主人のお仕置きで…。
一同:…。
美:話題変えましょう。ずいぶん、本筋から逸れてます。
戸:えー、面白そうよ。
凪:私も興味ある。
花:…。どうぞ。男性陣には、オフレコです。
沙:私、あのうちのおひとりと恋愛関係になって…それで、ずっとお付き合いしてたんですが、最近、主人が探偵を入れてしまって…。主人は私の、お相手を訴えることもできると言うんですが、私の「反省」次第では考え直してもいいと、言うんです。
戸:いーねぇ。なかなか、そこまでちゃんとやってくれる人って、いないのよね。
沙:私、どうしていいのか…心の中では、そんな主人の執着に喜んでいる自分がいて、でも、私、お相手の方のことも、とても好きで、気持ちが混乱してしまって…それで、普通の感じに憧れがあるんです。
フ:なるほどね。とはいえ、これは普通じゃないと思う。
紬:ううん…普通だよ。陽菜子には、とっても気持ちいいのが、普通。ね?
陽:へ…? や、普通では…っ…。
凪:私、こういうのちょっと憧れます。
紡:ほんとに? うちに、おいでよ。陽菜ちゃんは紬のだから俺、勝手できないの。紬の前だけなんだよね、こんな、…。
陽:ぅ…。み、みみ、耳…だ、めぇ…。
凪:…。本気…?
紬:(囁き声)凪ちゃん次第。
花:うわぁぁぁぁ! 私の出番がありません。ところで、写真の出番もありません。
美:他の人の男って、なぜか興味わかないですよね。ピンとこないというか。
フ:あ、わかるなあ。
凪:ふーん。
戸:ん?誰か気になる人いる?
凪:あの、ちょっとちっちゃい感じのキレーな人かな。エッチ強そう。
戸:(ニヤニヤ)ふーん。うちもそれはちょっと、思てたよ。
凪:それ以外は…年上すぎて、イメージ湧かないなあ。
戸:えーねぇ、可愛いねぇ。
美:年上の人って安定感あるけど、文化ずれててわかんない。
フ:それもわかるなあ。私は大体同年代かほんの少しだけ下だよ。年上の人って、だんだんみんな、元気なくなっちゃって、残るのギラギラしたおじさんぽい人ばっかり。
戸:ギラギラも嫌じゃないけどねぇ。私くらいになると、いい人にはいい人、がっつりついちゃってるんよね。比べてきたりして、面倒よねぇ。とはいえ、元気あるのは大体お子様やから、それを可愛いと思えるかどうかになるし。
フ:おっきく年下は年下で、若い子に取られちゃった時悲しいんだよね。だから大体、危うげになると、こっちから切っちゃうかな。
凪:わ。年上のお姉さんと経験がある人がこっちに回ってくる仕組み、そこにあるんだ。
美:で、今度は取られる側に回るのかぁ。やだなぁ暗い。
フ:まあ、別れにこだわらなくなるし、そもそもあんまり恋に落ちなくなるよね。私は最近の方が、頻度は下がったけど、全然いい恋愛してるなあ。
戸:ああそれはあるかもね。振り返ると自分、人として成長してるなぁって、思うよね。
沙:皆さん、色々、ご経験おありなんですね…。
戸:沙織さんはその辺、心配よ。エスカレートがね。天井打ったあと、何にも残んなかったりしてね。
フ:戸田さん、意地悪だと思う。
沙:いえ、いいんです、私もちょっと…心配で。もう普通じゃ駄目なのかもって思う時があるんです。
凪:してみたらいいじゃないですか、普通の恋愛。私は断然、普通の恋愛派。
美:どうかなぁ。私は分かりますよ物足りない感じ。掘っても掘っても何にも出てこない徒労感というか。働いて結婚してるとまず、割ける時間がそんなにないから、外れ引くと、ダメージ大きいんですよね…。あんまり、賭けにも出たくないし。
戸:数も大事よ。経験。文化資本。
フ:そう? 私は割り切れないかなあ。出会いは大切にしたい。
沙:その、お相手とは、普通の恋愛をできていると思うんですが…。
花:うん。冷静になりましょうね。普通なわけないからね。
沙:あ、私には、その、気持ちの上では普通の、大切な恋愛なんです…。でも、主人とあんなことがあって、今度、この跡が消えたら、私から誘ってみろって、主人は言うんです。でないと…でも、私はお相手に、どんな顔をして会えばいいのかわからなくて…。
一同:…。
花:ええと。…! あ、はい。はい。あのですね、埒があかない旨の指示が出ましたので、お題にお答えの方から、お帰りになって結構です。お題…「お相手の一番好きな癖は、なんですか?」。
戸:あーいいねえ。待って…うん、心に葛藤があるときに無理矢理笑顔をつくる癖。かなぁ。丸わかりなんやけど、強がってるんね、って可愛いよね。なんや、楽しいのに、一番上がりになっちゃうね。
凪:あ、私も似てるなぁ。言いたいこと我慢して、頭撫でてくれる癖。
フ:え、そんなにすぐに出てくる? …何にも考えてないくせに「困ったな」って、とりあえず言って、相手の出方を見る癖。かな。
花:はい。戸田さん、凪さん、フェンさん、OKになります。あ、これ、お土産です。皆さんに一箱ずつ。チョコレート。ベルアメール詰め合わせ。
戸:わ、かわいいね。
凪:ふーん、いいんですかこんなにいっぱい。
フ:ありがとうございます。じゃあ…
戸・凪・フ:お疲れ様でした。
美:え、うそ、ないってないない…ひとまず、パスで…。
沙:…。あ! 癖かどうかはわからないですが、ホテルに入ると、必ず、結婚指輪を外してってお願いされるんです。ちょっと、ドキドキします。
花:判断に迷いますが、沙織さん通過で良いでしょう。はい。お土産どうぞ。あ、最高級ではないかもしれませんが、ノーコメントでお願いしますね。ご参加、ありがとうございました。
美:…お財布にいつも新札が入ってるところ…? あ、お箸の使い方が綺麗なところ…?
花:そんなに…? エッチな話でもいいそうですよ。皆さんには振りそびれちゃったけど。
美:…。…。特に好きなところは、ないです…。遼くんは、たくさんあります。
花:うん。わかった。無理しなくていいよ。はい、お土産。
陽:あの…。
花:陽菜子さんは、それどころじゃないですね。紬・紡さんも当然それどころじゃないですね。免除です。はい。お疲れ様でした。
陽:あの…っ。
花:はい…?
紬:陽菜子。大丈夫。ちゃんと言おう?
陽:…。…い、…っいきます…。……っ…ぅ…。
美・花:……………………………!
紡:…。うわぁ、かーわいい。ね、上に部屋、とってくれてるって。俺と紬とどっちがいい?どっちも?
陽:……。え…。
紬:いいんだよ。
陽:…。…あ…。…。(蚊の鳴くような声)どっちも…。
紡:よくできました。
花:ずっと、言いそびれてましたが私は未経験なんです。目の前であんまり濃ゆいのは、困ります…。
美:…! あ、…帰らなきゃ。って、皆さん、あすこで見てますよ。まあ、帰れないでしょうね…。
はいはいはいはいはい! 解散解散解散しましょう。陽菜子もひと段落したところで。はい。女性というのは集まるとほんとよく話しますね。参っちゃう。
あ、美津紀ね、祐介さん、車で仕事して待ってるから、終わったら連絡してって伝言を承ってますよ。
美:…困るなぁ。
陽菜子のことずっと見てて、体もいい感じでしょう。
美:だから困るんです。…伝言ありがとうございます。じゃ。
はいはいー。皆さんも。凪、凪はちょっと待って。紡がねこれ、連絡先。
凪:いえ、私は本気では…。
紡は女の子大好きだから楽しいのでは。凪と遊びたいの、本気は本気よ。
凪:考えます。
ではでは。
…滝本くんが迎えに来てるの、言わなくてよかったかな。よかったか。啓志郎が西田に連絡させたんですね。啓志郎って、何考えてるんだか、わかんない時あります。あ、プレッシャーかけてんのか。私は駆け引きは、あんまり得意じゃないんですよねえ。啓志郎は相変わらず、頑張っているのですね。
そういえば花野さん、蒼唯は? ずっと蒼唯の写真見てましたね。
花:スカイツリー行ってもんじゃ食べようって。
はあ。下町デートですか。
花:さっきちょっと、手を握って、でも蒼唯くん、私が硬くなってるの見て。いいよ、俺、待つの慣れてるから全然、花野さんの気持ち大事にしたいし、ゆっくり、距離縮めていこ?って…。
うーん。笑顔が優しくて素敵だったんでしょ。言ってくれた言葉が、声と一緒にぐるぐる回っちゃうんでしょ。え、慣れてるってどゆこと?って思うんだけど、思いやりのある手の感じが、残ってて忘れられないんでしょ。ガチで距離縮めていく気ですか。うーん。うーん。まあ花野さんのペースでね、蒼唯、ほんと気が長いからそこは大丈夫。実はね、花野さんみたいな人は現実にタイプなので、心配してます。
花:でも、沙織さんのあんな話聞いちゃうと…。
あーそれね。難しい話はしません。花野さん、それはそれで、恋愛の醍醐味なんですよ。不安で、ドキドキして、もしかしてって思うでしょう。そんなことをあの人があの人とって、思うでしょう。こんなことやあんなこと、私はあの人とって、思うでしょう。そのドキドキがね、醍醐味なんですね。はい。蒼唯もそれがわかってるんでしょ。守秘義務の件だけ、忘れずにね…!
花:つらい…。
楽しいって、読み替えましょう。ね。
そして、
皆さま…
ありがとうございます。
このカーテンコールをもちまして『愛を犯す人々』連作は一応の完結となります。
お楽しみいただけておりましたら、これほどの幸せはありません。シリーズ全篇を通読してくださった皆さまには、深く、深く、御礼申し上げます。皆さまに支えられて、彼らがここにいます。いつでもまた、会いに来てください。いつでもまた、彼らの恋を盗み見て、少しだけ、恋っていいな、って、思ってください。過去の恋でも、今の恋でも、まだ見ぬ、なにもかもを叶えてくれるような、素敵な恋でも。そして周りを見て、あなたをいま、あるいはあなたがいま、どんな形でも、愛している人の、あるいは愛している人への、愛情を感じてください。その愛情の…優しさも、冷たさも、弱さも、強さも。
皆さまにはどうか、美しく幸せな恋と、深くゆるぎない愛を。
これからもどうぞ、彼らともども、よろしくお願いします。皆さまからいただいた、あたたかい応援と声援を、こぼれ落ちないように、両手いっぱいにしっかりと抱えて、連作『愛を犯す人々』の作者として、こんにちは世界はいま、皆さまの前で深々と、頭を下げています。
以上、です。