見知らぬ空隙
「本の効果について。さすがは名作であるとか、刺激的であったとか、知識が得られたとかとは別に、その本の大切な部分というのがあるようにみえる。何の意味が…自分の人生に対して、何の意味があるのかさっぱり分からないような一場面、一画面が、奇妙なことに心に浮かんでいるようにみえるとき、けれどもそれはひとつの、記憶と思想のありようなのだ。その視界のちらつきは、思考として正しい手順の上に発生しているのであって、そのことが意味するのは、だから、私が意味を理解していないそれが、私にとって大切な意味を持っているということだ。
本当のところ、私はもっと、色々なことを考えている。
書き尽くさない限り、考えるだけの場所は作れないものだ。この「考える」とは、この「私」が考えるということを言っているのではない…私はさんざん書いてやっと、真実を告げる一文を見出すことが多いが、そんな時のその一文は、ただそこにずっとあったかのようにそこにあって、私はそれを自分が書いているという気がしない。そんなふうに見つけられた真正な、ある種の恩寵としての一文を、私は誰に話すこともないにせよ、生涯忘れずにいるだろう。
私には、私だけが訪れる、秘密の食糧庫がある。」
日記からの、引用です。
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今日は明日、昨日になります。
パンではなく薔薇をたべます。
血ではなく、蜜をささげます。