
アトツギラボ【vol.8】
2か月連続でピッチイベント、アトツギ縁日と盛りだくさんでしたが、しっぽり少人数で開催。今回は勉強会要素強めのアトツギラボでした。
創業300年
「B Corpムーブメント」に関する日本初の本格的な入門書『B Corpハンドブック:よいビジネスの計測・実践・改善』で監訳者に名を連ね、編集を担当し、フリーランス編集者であると同時に、京都の老舗呉服問屋「矢代仁(やしろに)」のアトツギである矢代真也さんをゲストにお迎えしました。

株式会社矢代仁は享保5年(1720年)京都室町に創業。 300年企業で、織・染・繍のメーカーとして、全国の百貨店や各有名呉服店と取引されています。


YSN
家業に戻った矢代さんは、創業350周年に向けて、「YSN:ゆっくりしっかりのこす」というプロジェクトを開始。2024年5月に京都市で開催された写真フェスティバル「KG+」のプログラムとして、「着物を考えるための調べもの」と題した展示会を開催されました。そこで初めてお会いしたんですが、その時からいつかゲストでお呼びしたいと考えていました。
展示会では、「職人の高齢化が進むなかで、技術をいかに受け継ぐことができるのか?」「猛暑化が進む日本で、着物の生地がもつ機能はどう生きるのか?」「江戸時代の柄を、現在の目線でいかに解釈しうるのか?」「都市空間の中で、伝統的な着物はどう映るのか?」といった問いを立てながら、夏休みの自由研究のような気持ちで、着物にまつわる様々な事象について調べられたことを表現されていたのが印象的でした。
B Corp
さて、今回のテーマは「B Corpを家業に」!
米非営利法人B Labが運営する B Corporation認証(B Corp認証)のことで、社会や環境に配慮しながら、利益と公益を両立できる「よい企業」のための認証制度です。アセスメントは、①ガバナンス・②従業員・③コミュニティ・④環境・⑤顧客という5つの領域に分かれています。質問項目はSDGsのどれかのゴールと紐づいているものも多くあります。日本では51社(2025年1月時点)が認証されており、世界では約9000社以上、スタートアップや家族経営等の中小企業も少なくないそうです。

この「B Corpムーブメント」に関する日本初の本格的な入門書『B Corpハンドブック:よいビジネスの計測・実践・改善』で監訳者に名を連ね、編集を担当し、現在B Labの日本支部である「B Market Builder Japan」でコミュニケーションリードを務めているのが矢代さんです。
B Corpについての概要、取得するメリットや具体例を聞きながら、参加者全員で理解を深めました。
- “株主中心の資本主義が社会にネガティブなインパクトを与えているであれば、そうじゃない経済をみんなでつくっていこうというムーブメントが現在世界で起こっていて、それを日本でもどうやっていくかということを考えながら取り組んでいる。”
- “第三者機関の認証であるB Corpを取得することで、企業の信頼性が向上し、採用やメディア露出にメリットがある。”
- “特定の何かに依存しないように経営をしていくことが、基本的には長く経営を続ける秘訣な気がする。”
- “リスクを取れる人がいなくなってきた社会で、リスクを取って社会を変えていくみたいなことをできる存在はもうアトツギぐらいしかいないのではないだろうか?”
- “B Corpになることは難しいが、審査項目を自社と照らし合わせながら確認していくと、何ができていて何が不足しているのかなどを把握し考えるきっかけになるので、会社の健康診断的な使い方ができる。”


B Corp認証の取得には、まず「B Impact Assessment(Bインパクト・アセスメント)」というツールを使用して自己評価を行い、80点/200点以上を獲得する必要があります。その後、グローバルな審査を経て正式に認証が与えられます。
認証は3年ごとに更新が必要で、スコアの向上が求められるなど、認証企業には継続的な活動が要求される仕組みになっています。

さあ、アトツギの皆さん。まずはアセスメントに登録するところから始めましょうか。
コテンラジオの深井さんは「ポスト資本主義に活躍するのは、儲けることと社会や地域に良いことをすることの両方をやってきた“アトツギ企業”である。」と話されています。地域に根差し、儲けることでなく続けることを主眼に経営をしてきたアトツギ企業だからこその深い対話の時間でした。
最後に、参加者の皆さんの感想を共有しておきます。
◆B Corp認証がある企業は信頼できる、働きやすいということになれば、アトツギ企業だけでなく、一企業として入社したい、あるいは、事業承継を前向きに進める判断材料になるのかと思いました。
◆B Corp認証の判定基準や指標は、事業運営の指針や社会的価値の可視化に役立つと感じます。アトツギ企業が自身の強みや課題を再確認し、次世代に託す価値を整理するフレームワークとして活用できると思います。
◆各社がB Corp認証を取ることのメリット(金銭的だけではなく、無形価値を含む)を具体化させることが重要だと思います。
◆難易度は不明ですが、一度に全方位的に対応を求められるのはかなり負担がかかるので、戦略的に活用方法を検討すべきだと思いました。
◆ソーシャルグッドな会社がどんな会社かを知れる教科書のようなものだと感じた。
良い会社
近江商人の経営哲学のひとつとして「売り手によし、買い手によし、世間によし」を示す「三方よし」が有名ですが、参加者のアトツギの皆さんに「あなたにとっての良い会社とは?」を聞いてみました。三者三様で興味深いです。
◆社員が指示待ちにならず自発的に活動し、その成果が社員に還元される、ヒト・仕組・環境がある会社
◆利益だけでなく社会や環境への貢献を重視し、従業員が安心して挑戦できる環境を提供し、次世代にも価値をつなげる企業。むしろこれからの時代は、社会や環境に配慮することでさらに会社の利益にも繋がるという理想の循環が生まれることを強く願います。
◆①継続して、安定的に利益を創出している→②創出した利益を成長と分配にきちんと配分できている。 → ③成長と分配の方向性が「よそ様に迷惑をかける」やり方でないこと。
◆従業員の7割が良い会社と認識している会社
◆今の自分にとっては、自社・顧客・従業員を満足させている会社だが、今後は環境や地域社会も含めて考えていかなければならない。


交流会
烏丸御池にある創業は享保元(西暦1716)年の老舗京料理店「松長」さんを会場にお借りしました。気さくな女将の長谷川真岐さん。以前「京都市未来まちづくり100人委員会」でご一緒したご縁から、ようやくアトツギラボで来れました。料理は美味しいし、会話も弾む、楽しいひと時でした。


対話中心で少人数で濃く話せる良さを感じたvol.8。アトツギラボは、対話形式・ピッチ形式・講義形式など、引き続き色々試しながら開催していきます!


アトツギラボ vol.8 開催概要
【日 時】2024年11月26日(火)18:30〜21:30
【場 所】OGY(矢代個人事務所)
【ゲスト】株式会社矢代仁 取締役 矢代真也 氏
【撮 影】村山俊輔
アトツギの描く未来は地域の未来。
人生にアトツギという選択肢を。
to be continued…