シェムリアップの風にふかれて考えた私の休み方
シェムリアップの空港に降り立つ。ふわりと小さな風が吹いてくる。鼻をくすぐる湿った甘い空気に、心がゆっくりとほぐれはじめるのがわかる。
アメリカに来て18年、数少ない日本への一時帰国以外には海を越えて旅する機会がなかった。だからカンボジア、シェムリアップは10数年ぶりの「海外」旅行。
知らない言葉が飛び交う、これまで体験したことのない街の空気と匂い。次に何が起こるのか予想がつかないワクワク感。そうだ、アメリカに初めて来たときも、こんなふうにワクワクしていたっけな。
そのワクワク感に包まれると、日々の生活でぎゅうぎゅうにちぢこめられていた自分の心が、ゆっくりとしわを伸ばして広がっていくのがわかる。
私はその感覚にふわふわと身をまかせるのがたぶん好きなのだ。
たった4日間のシェムリアップだったけど、仕事はもとより日本とアメリカに置いてきた「日常」(その時はほんとうに苦しい日常にがんじがらめになっていた)からすっかり離れることができて、気がつけば頭も心もリフレッシュされていた。
考えてみればアメリカに来てからずっと、(もちろん基本的に週休2日であるものの)私はきちんと休んでいなかったような気がする。「休む」ということについて、ゆっくり考える余裕もなかった。
でもシェムリアップで気がついた。
日々の生活から飛び出して、知らない遠い場所で過ごすことが、私の休み方なんだ。普段とまったく違う世界に自分を放り込むことで、ワクワク感に心のしわがのばされて、頭の中も完全にリセットされる。日本にいた時にはそんなことわかっていたはずなのに、すっかり忘れていたんだな。
だからふわりと吹いてきた風がなつかしくなるころには、また知らない街へ休みにでかけるのだ。
(見出し画像はシェムリアップではなくて、乗り継ぎ中のベトナム・ハノイのノイバイ国際空港です)
ライティングを学び合う会員コミュニティ「sentence」のメンバーが、月ごとのテーマに沿ってマガジン「gate, by sentence」を更新していきます。
3月のテーマは『あなたの「休み方」について』です。