九十九里のいわしと地はまぐりが食べたくて片貝海岸に行った日
自宅から九十九里有料道路を走って30分ほどで、片貝海岸に着いた。
千葉・房総半島の太平洋側、旭市の刑部岬(ぎょうぶみさき)から、いすみ市の太東岬(たいとうみさき)まで延々と約66kmに渡って伸びているのが、九十九里浜。29か所の海水浴場がある遠浅の砂浜だ。
その九十九里浜の真ん中あたりに、片貝海岸はある。このあたりはいわし漁が盛んなだけでなく地はまぐりが採れるので、海に沿った県道沿いには浜焼きや魚料理のお店がこれでもかと立ち並ぶ。
この日は「焼きはまぐり」と「いわしのなめろう」を食べたくて出かけたのだ。
お昼までにはまだ間があったので立ち寄ったのが、片貝漁港の目の前にある「海の駅九十九里」。
ここには日本でただ一つの青い丸型郵便ポストがある。もちろん現役だそう。
青と一口に言ってもさまざまな色味があるけれど、このポストはとてもきれいな青。いわしが泳ぐ九十九里の海の色なのだ。
海の駅九十九里は、魚介や野菜の直売やお土産を買えるだけでなく、いわし資料館が併設されていた。
水槽の中の3,000匹のいわしが迎えてくれるこの資料館では、九十九里のいわし漁からいわし文化まで、大型の写真パネルや船の模型などで丁寧に説明されていた。
いわし漁はもともと地曳き網から始まったのだそうだ。江戸時代に紀州から伝わったと言われている大地曳網漁。二艘の船でいわしの群れを網に追い込んでそのまま海岸まで運び、海岸で待ち受ける漁師たちがイワシの群れを網ごと引き寄せるというわけだ。
夏休みに祖母の家を訪ねて九十九里へ来ていた子供の頃、海水浴場で行われていた観光地引網に参加したことを思い出したけど、いわしを持って帰ったのかどうかは思い出せない。
地曳き網漁に使われた船の模型に目を引かれた。ちょうど館内の消毒と掃除をしていた方と少し話をしたり。「この模型、細かいところまできっちり作られているので、掃除をするのが大変なんですよ」と笑っていらした。どうりで塵一つなくきれいなのは、毎日この方が掃除されているからなのか。
地はまぐりについての説明もあった。稚貝を放流したり、大きさによって採る量を制限したりしながら「九十九里地はまぐり」のブランドとして育てているのだそうだ。
ちょっと物知りになった気分でいわし資料館を後にしてお昼ごはんに向かったのは「九十九里倉庫」という名の、水産加工場跡が食堂になったお店。
中玉(8cmくらい)の地ハマグリは、身がふっくらとして柔らかく、貝殻が開くと磯の香りが鼻をくすぐる。お店特製のたれをちょっと垂らして食べると最高の味になるのだ。
いわしのなめろうは、捌いた身にお味噌やねぎ、シソなどを乗せてから、包丁で粘り気が出るまでたたいた漁師料理。ねっとりとした青魚に薬味の味が絡まって、数あるイワシ料理の中でも大好きな一皿。このお店では尾頭付きでやってきた。
もちろんメインには、お刺身定食も。つぶ貝、分厚い切り身のマグロ、メダイ、イワシ、マグロの角煮の小鉢にあおさのお味噌汁と、九十九里の恵みをたっぷりといただいた。
こんなに幸せなお昼ごはんは久しぶりだなぁ。
九十九里ではもう一つおいしいものを食べたのだけど、それはまた次の機会に。