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Femtech Focus:fermata Amina登場回、抜粋翻訳

ポッドキャスト『Femtech Focus』では、起業経験もある Dr. Brittany Barreto が、エンジニア、研究者、医師など、あらゆる専門知識を駆使してフェムテック業界を牽引している専門家を招き、女性の健康とウェルネスの過去と現在、そして未来について語ります。

この記事では、5月13日に fermata, inc. COO & Co-founder の Amina が受けたインタビュー内容を翻訳したものを、かいつまんでお伝えします🌿

訳者:Haruna.K (fermata) 

原文(英語)で聞きたい方はこちらから。


Dr. Barreto: まずは、Amina が今までどんなことをしてきたのか、何がきっかけでフェムテックに出会ったのか教えてください。

Amina: 公衆衛生学で博士号を取得後、3 年前までずっと医療政策畑にいました。私自身は日本人とマレーシア人の両親のもとに生まれて、アフリカで育ち、ヨーロッパで教育を受けました。Brexit (イギリスのEU離脱) が起こったころ、日本に戻って働こうと思ったときに、みんなに結婚の話をされてビックリしたんです。20 代に論文を出しまくって、30 代は子育てをして、といった「女性研究者のキャリアプラン」を突きつけられて、愕然としました。

「住みたい社会とは程遠い」と思い、社会を変える一助になれれば、と孫泰造さん率いるベンチャーキャピタル『Mistletoe Japan 合同会社』に参画しました。そこで初めて、妊孕力を家で測れるキットを開発する『Modern fertility』の存在を知りました。プライベートな空間で、自分で自分の人生を決めるための情報を与えてくれる。政策などで「女性のエンパワーメント」がトップダウン的に押し付けられる傾向にありますが、人生に新たな選択肢を与えてくれる商品との出会いで視点が変わりました。


Dr. Barreto:女性としての生きづらさを打破してくれるプロダクトとの出会いが原点だったんですね。それから fermata をすぐ立ち上げたんですか?

実は 2017 年に Mistletoe 内部のプロジェクトとして動き出して、そこで『Bloomlife』に初めての投資をしました。パートナーとの間でたび重なる妊娠・出産トラブルを経験した Bloomlife 代表の Eric が「すべての家族が幸せで健康な生活をはじめられるように」との思いから、妊娠中の母体と胎児の健康状態をモニタリングできるウェアラブルデバイスを開発している企業です。


Dr. Barreto:これまでに何社に投資したんですか?

Amina:それがですね、Mistletoe のメンバーはみなさん協力的だったんですが、私のベンチャーキャピタルでの経験が浅いこともあって、社内で他の人を巻き込みながらフェムテック投資の勢いを保ち続けるのは非常に困難だったんです。「好きにやってみないか」という泰造さんの声かけもあり、独立に至りました。

Dr. Barreto:なるほど。他の人から調達してきた資金で投資を行う、というベンチャーキャピタルの特徴を考えると、Mistletoe のポートフォリオを多様化させる必要があって、フェムテック一色に刷新するのは難しいですよね。

Amina:おっしゃる通りです。それで、投資経験も浅いので、最初は妊孕力測定キットを作ろうと思ったんです。Modern Fertility のような商品って、日本に当時まだ無くて。ビジネスプランについて考えてたんですけど、やっぱり他のマーケットにあるものをただコピーするだけじゃダメだと気づいたんです。どうしようかと悩んでいたときにメンターから掛けられたのが「じゃあ、まずはフェムテック業界を知るところから始めたら?」という言葉でした。

そこで、co-founder のヒロコと一緒に海外のフェムテック企業を調査し、200 を超える企業に「日本でフェムテック製品を展示するイベント開くから商品送って!」と声を掛けました。すると、驚くことに 100 社ほどから返信がきたんです。そのうちの多くはまだ開発段階とのことでしたが、製品ができたらぜひ協力したいと。一部の企業はアプリなどのサービスを提供していたので、言語の違い等もあり、展示は難しいだろうとの話になりました。残りの 26 社が、ありがたいことに無償でプロダクトを送ってくれて、渋谷で第一回の『Femtech Fes!』の開催をするに至りました。

そこでは生理用品からプレジャーアイテムまで、様々なプロダクトをアートギャラリーのような見せ方で展示して、参加者の方が談笑を楽しめるようにお酒も用意しました。その中で 20 〜 30 分ほど私が登壇し、フェムテックとはなんぞや、という話もしました。ありがたいことに、当初 60 名の参加を想定していた 2,500 円のチケットが完売し、合計でおよそ 100 名もの方に足を運んでいただきました。


Dr. Barreto:それだけ関心があったんですね。日本にもフェムテック企業ってあるんですか?

Amina:fermata が今年 4 月に行った最新の調査では、日本に 51 社存在しています。ただ、生理や妊娠など、生殖に関わる企業が多く、セクシャルウェルネス分野におけるプロダクトを提供する企業はまだ少ない印象を受けました。

まずは、フェムテックの市場を日本に根付かせることが必要だと実感したので、当初予定していたプロダクト開発の路線ではなく、別の角度からアプローチすることにしました。そこで、アジアにおける女性の健康を再定義しようと、スタートアップのエコシステムと消費者の双方をサポートする方向に舵を切りました。


・・・


Dr. Barreto:この前 お話しした時に、言語の壁で苦労することがある、というふうに伺いました。視聴者の方のために詳しく教えていただけますか?

Amina: 日本国内でセクシャルウェルネスをテーマに展覧会を開くことになって、関係者の方とお話ししていたところ、fermata 内で当たり前に使っていた言葉が通じないことに気づきました。たとえば「セクシャルウェルネス」という言葉そのもの。fermata のメンバーはみんなバイリンガルということもあり、「セクシャルウェルネス」は性の健康だけでなく、セックスやセルフプレジャーを通じて「性を楽しむ」ことも内包していると捉えていました。でも、日本語ではそもそも「セクシャルウェルネス」の定義が定められてない上に、「性を楽しむ」という解釈はされないことが多いんです。同じ言葉を使っていても、スタート地点が違うことに気づかされました。

それから、英語の “female power” という言葉。日本語に直訳すると「女子力」なんですが、どれだけ「理想の良妻賢母」に近いか、という文脈で使われます。


Dr. Barreto:英語の意味と全く違いますね。英語では「リーダーシップ」や「たくましさ」を持っている女性というふうに解釈されるのに...

共通認識のある言葉もまだ存在しない中で、これからどうマーケットを盛り上げていこうとされてるんですか?

Amina: 確かに難しい道のりですが、むしろやりがいのある仕事だと思ってます。fermata は「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」というビジョンを掲げています。まだまっさらの畑に、一から新しいカルチャーを根付かせるのが私たちの使命だと思っていて、それには地道な努力が必要だと痛感しています。

ファッション誌などが徐々にフェムテック用品を取り上げてくれるようになりましたが、地域によって受容度は全く異なります。長崎の五島列島にある唯一の産婦人科で Femtech Fes! を行った際、最初の一時間半の間、誰も発言しませんでした。でも会の終わりにかけて、年配の女性が閉経の体験について話し始めてくれたんです。ざっくばらんに性の悩みについて話しあえる安全な場所を提供してあげることの重要性を感じました。

新型コロナウィルスの影響で2020年に予定していた Femtech Fes! の全国行脚は中止となりましたが、現在でも週 2 回、オンラインでイベントを開催しています。産婦人科の先生を招いてセクシャルウェルネスについて議論した回には、180 人もの方が参加しました。これからも、女性の悩みを女性自身が気づくきっかけを作っていきたいと思っています。


Dr. Barreto:これからのfermataとしてのゴールを教えてください。

海外の製品をただ持ってくるだけでは、日本ないしアジアにフェムテックの文化を根付かせることはできません。

Femtech Fes! 内で参加者の方が「このバイブレーター、アジア人の私たちのカラダに入るかな?」と心配しているのを見かけました。個人差はあるものの、膣のサイズは国ごとで大きく変わらないというデータがありながら、世間では誤った認識が広まっています。また、セクシャルウェルネスの概念のみならず、もっと広義に「ジェンダー」との付き合い方を再定義する必要があります。これからもコミュニティとの対話、そしてフェムテック企業への支援を通して「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」邁進していきます。


■fermata info■
2019年10月にスタートしたfermata株式会社は、「あなたのタブーが ワクワクに変わる日まで」をヴィジョンに掲げ、Femtech市場の活性化、および多様性のある社会を実現するコミュニティ育成を行います。

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