5分で読める読書感想シリーズ1『日本の貧困女子』
5分で読める読書感想シリーズ、今回紹介するのは中村敦彦の著作『日本の貧困女子』。
読者の中には、この名前を聞いたことがある人もいるのではないだろうか。
彼は、東洋経済オンラインにて「貧困に喘ぐ女性たちの現実」を連載し、1億2000万PVを超える人気を博し注目された。そして、2019年4月に東洋経済新報社から連載の取材をもとにした書籍『東京貧困女子。』が発売され大ヒットを記録した。
日本では考えられない、まるでドラマか何かのような下流階級の女性たちの現実。。。それは、読者たちを驚愕させたことだろう。
『日本の貧困女子』は、その大ヒットを受け、地方貧困女子バージョンとして始まった企画として北関東や沖縄県に住む貧困女子の方々を中心にインタビューを行っている。
まず、本作から私が感じたことは、著者が地方暮らす多くの貧困女子へのインタビューを通して語られた状況には、まるでテンプレートであるかのような決まった”型”が存在するということである。
著者は、本書の中でこう述べる。
"貧困は経済的貧困を基底として、関係性の貧困、情報の貧困のどちらかが重なる、また3つとも該当してしまうと、抜け出しようのない深刻な状態となる"
実際、世界の貧困には一般的に「相対的貧困」と「絶対的貧困」の2種が存在していると言われる。前者は、その国の文化水準、生活水準と比較して困窮した状態、後者はある最低必要条件の基準が満たされていない状態と定義されている。
一方で、日本では、後者の貧困は存在しないと言われている。しかし、上記の3つが該当したことによって絶対的貧困に陥ってしまった人間もいることを本書は示している。
実際、職を失い収入が底をついたことを想像してみてほしい。あなたの手元にあるのは100円玉1枚。そんな状態で、明日を生き抜くためには誰かの手を借りるほか手はないだろう。あなたなら、誰に相談するだろうか。兄弟?親?恋人?はたまた仲のいい友人だろうか?
関係性の貧困に陥った人間は、助けを求めるあてすら持たない。
一方、もう一つだけ手段を挙げるならば、「国」に助けを求めることだろうか。現在では、憲法25条の定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために「生活保護制度」というものが設けられているが、本書に登場する人の中には、情報の貧困によってこれすら知らない人も少なくなかった。
本書で貧困を抱える女子のほとんどが、「アル中」「DV」「不倫・浮気」「育児放棄」「ギャンブル」「いじめ」「男性依存」といった問題に関わっている。私は、これらの問題が絡み合って日本の女子の貧困問題を生み出していると感じた。そして、この問題は、奇しくも親から子へと受け継がれていくものであるのだ。
私は、地方から上京し、貧困地域と言われる国でも数か月間生活し、現地の人々とも交流した。そんなある日、私はひったくりに会い、スマートフォン以外の持ち物全てを紛失するというトラブルに直面した。その時、もし自分にこのスマートフォンや家族、友人がなかったらとゾッとしたことを思い出した。
実際、日本で生活をしていて、貧困で命を落とすということは滅多にあることではないだろう。しかし、今尚この国にも貧困が存在していることは事実であり、その現実から私たちは目を背けてはいけない。
そして、彼女たちの現状を自己責任で終わらせることはいかに安直で冷酷な態度であるかを痛感した。
私自身、決して裕福な家庭で育ったわけではないが、普通の生活ができたことに感謝し、常に彼女たちのような存在がいることを忘れずに生きていこうと感じさせられる作品であった。
そして、自分の育った、地方の地域、また日本にこのような人々が少しでも少なくなるようにこの国に貢献できる人になっていこうと思う次第だ。