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よみがえる迎賓館

 訳あってしばらく東京を・・・日本を離れることになった。
「今のうちに東京の色々な場所に行っておきたい!」
と思って、時間があるときに、ちょこちょこと行きたかった場所に出向くことにした。

 リストアップには全然困らなかった。10年以上住んでいるのに、行けていない場所が山ほどある、という自覚はもとよりあったからだ。
 スマホのグーグルマップに、思いつくたびに印をつけていた。もちろんこれは、東京にとどまらず日本全国、国外にも及んだ。文化施設や遺産、カフェやレストランも。
 いつか。いつか。と思っていた、「いつか」が、いま来たわけだ。

 そして迎賓館。迎賓館赤坂離宮(国宝)である。
 もともと明治や大正に建てられた西洋建築を見るのが好きなので関心があった。きっかけは福岡県北九州市の旧松本邸を訪れてから。しかし事前予約が必要ということもあって、なかなか重い腰があがらなかった・・・。

 チケットの種類は「本館だけ見られたり、本館も和風別館も庭園も全部見られたり、と料金体系がさまざま。
 私は和風別館も観たかったので、すべて参観できるチケットを購入。入場時に、空港でおこなわれるようなベルトコンベアが回っていて、手荷物検査をおこなっているのは少し驚いた。包丁買った帰りとか、そんな日でなくてよかった・・。

 それにしても、色々なところに行こう!というタイミングでこの暑さ。予想外の猛暑に、外を歩く人もほとんど日傘をさしている。庭園には日陰は一切ないどころか、砂利の照り返しで目の前がかすむ。今思い出しても、記憶の中ですら景色がまぶしい(笑)
 ところどころに休憩用のテントがあり、巨大な扇風機が回っていたけど、やっぱり見学にベストな時期は春か秋でしょう。

 赤坂離宮は世界で最後に造られた西洋宮殿、だそうだ。
 当初は迎賓館ではなく東宮御所(大正天皇のお住まい)として造られた。
 当時の日本としては、西欧諸国に引けをとらないぞ!という気持ちで建てたものの、そのころすでに建築の世界では、宮殿は段々造られなくなっていたそう。悪く言うと、流行りに乗った時期にはもうその流行は廃れていた、という感じ。
 ちょっと悲しい気もするし、具体的には思いつかないけど、今もどことなく同じようなことを繰り返してはいないだろうか?「西欧をずっと追いかける日本」という構図。
 東宮御所として造ったものの、明治天皇が「豪華すぎる」と言ったことが原因なのかそうでないのか、結局大正天皇がお住まいになることはなかったそうだ。その後、国立国会図書館や裁判所、1964年のオリンピック開催時の事務所など、様々な用途で使用され、1974年に大改修がおこなわれて迎賓館としてよみがえった。

 和風別館のガイドツアーは1時間ほどだった。
「耐震技術がきちんと施されており、関東大震災でもびくともしなかった」とか「大改修時に『日本らしい迎賓の場所を』という思いで和風別館が建てられた」「庭園の噴水も国宝指定されている」などなど、ガイドの方も暑さに息を切らしながら、懸命に説明してくださる。
 私のなかにふつふつと、ある気持ちが沸きあがってきた。
「ああ・・!メモを取りたい・・!」

 なんかこんな感覚、前にも経験したような?そう、観光のような、でも勉強のような。でも学校の勉強とは違うような。
・・・社会科見学やん!
 しかし残念なことに、本館も和風別館も館内での写真撮影禁止。メモはOKかもしれないが、調度品に触れることが一切NGなので、安全を期してやめておいた。
 屋外に出たときに、忘れたくないことだけ簡単に書きつける。
 小学校の時は、次の日に「まとめ」とか称して後日レポートを書いたっけ。絵日記みたいに、イラストをつけるのが好きだった。新聞風にまとめたりするのも。

 和風別館の池は、水面が建物の庇にゆらゆらと映って、とても美しい。教室で、誰かが鏡を天井に反射させたりするとできるあれです。
 空中のプールみたいで、「ゆらぎ」というそうだが、見入ってしまった。

和風別館の入り口からも「ゆらぎ」がちょっと見えます

「鯉が120匹もいて、月に1回池の清掃をおこない、鯉の健康状態もチェックしているんです。実はもともとこちらに鯉はいなかったんですが、とある総理の、鯉がいないと寂しいなア・・の一声で鯉を飼うことになりまして・・・」という説明なども。 飼えっていわなくても飼うんだ。私だったら「そうなんです・・鯉はいないんです・・」って言って流しちゃうけどな、クビかな?(笑) 日本の文化の源流はやはり忖度(そんたく)なのかな、なんて半分面白く思って聞かせて頂いた。 ガイドさんがいなかったら「わー、なんか和風ですごーい!きれーい!」くらいでさらっと見て終わっていたと思うので、歴史的にも現在でも、大切にされている様子を具体的に知ることができてよかった。

和風別館(遊心亭)のようす。

 ツアーが終わったら、いよいよ本館の中を見学。
 ヴェルサイユ宮殿などをお手本にしたというだけあって、中に入るとさながら外国に来たかのよう。
 しかしこちらはガイドなしなので、私は「わー、すごーい、きれーい」で大体終わってしまう。でもボランティアの説明員さんたちがところどころにいらっしゃるので、質問などすれば答えてくれた。

私「あの、宿泊もできたとのことですが、お部屋はこの建物のどのあたりに位置するんですか?」
マダム説明員「この部屋のすぐ隣にありますよ。ただ、入ってすぐお部屋ではないんですね。セキュリティの観点から、扉を入ったらまた廊下、途中に警護のかたの詰所などがあって、やっとお部屋、という造りになっております」

 一体どちらのご出自なのか・・?と思うほどきちんとして、お綺麗なマダム説明員にお礼を言って、その場を後にした。

 写真が撮れないので、目に、心に、焼き付けるしかない。金色、金色・・なんで人間って行きつくところ金が好きなんだろう?(笑)などと考えながら、黙々と歩く。
 日中韓サミットで使用しました、と当時の写真のパネルが、まさに彼らがその時立っていたであろうその位置に、ところどころ設置されていた。

前庭。迎賓館の写真として出てくるのは大体こっち側ですね。

 本館を出たら、最後に前庭をまわってそのまま前庭の門から帰る。正直、この日は猛暑過ぎて戸外でくつろぐという感じの陽気ではまったくなかったが、巷では迎賓館の前でアフタヌーンティーを楽しむ、というのが人気のようで、パラソルの下でお茶を楽しむ若者が何組かいた。
 ライトアップも綺麗だそうなので、今度は夜に行きたいな。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※訪問の際は、オフィシャルな情報を必ずご確認ください。

【今回訪れた場所】
 迎賓館赤坂離宮(国宝)
 アクセス:JR、地下鉄各線四ツ谷駅から徒歩10分程度

【所要時間】
 平日11:00~13:30くらいまで、2時間半ほどいました
※ガイド付きコースにしたので、時間指定で事前予約が必要でした。
※終わったあと、めちゃお腹が空きました(余談)

迎賓館赤坂離宮 | 内閣府 (geihinkan.go.jp)




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