モタ狼が語る林森林神話 #01
まず始めに断っておくと、これはフィクションやらノンフィクションやらで考えないでいただきたい。
キリストやヘラクレス、オーディンなどを実在したか否かで語るようなものである。
これから皆さんが読み進めていく話は、モタ狼という筆者を通して伝えられる、いわば神話なのである。
さて、林の話を始めるには少し時代を遡らなければならないだろう。
これからしばらくは筆者も伝え聞いた話になるので、信憑性という点では定かではないのだが、今でもこの話には西欧の一部に強い信者がいるとのことなので一概に否定することはできないのではないだろうか。
時は紀元前1世紀。世界ではローマが地中海を統一し、日本はまだ弥生時代である。その頃、林は前述したローマにいたと言われている。
激変のローマにいた林であるが、その頃これといって特に歴史的事件に関わっていたわけではない。当時の林はまだいわゆる打楽器には出会っておらず、自身の持つ使命に気づかないまま日々をあてもなく暮らしていたのである。
しかし、そんな林にも密かな楽しみがあった。それは林が拠点を置いていた小さな町に住む若い娘を見ることであった。その娘、名をリウィアといった。
林は当時、ハヤシンティウスと名乗りながら木や花の苗を売る行商人をしていた。リウィアは度々ハヤシンティウスから苗を買っていた客だったのだ。
「あぁ、なんて美しい人なのだろう。しかし身なりもきちんとしている。きっといいところのお嬢さんなのだろうな。僕なんかでは相手にしてもらえない。」
そう自分に言い聞かせて、行動する前から諦めるハヤシンティウス。彼の性格は2000年以上前から変わっていないようだ。
ある日、そんなハヤシンティウスに絶好の機会が訪れる。
<ローマ帝国初代皇帝にピッタンコ(最適な)のヨイツー(強い)な苗を求む!>
ちょうどその頃、アウグストゥスがローマ帝国初代皇帝の座に就く直前であり、そのお祝いとして立派な木に育つ苗を募集しようというのだ。
これに選ばれるのは大変な名誉であり、国中の注目の的になる。
「こ、これだ…!僕の植物に対する知識は誰にも負けない!皇帝様に選ばれるような苗を探し出して名誉を手に入れれば、リウィアに想いを伝えられるような男になれるはずだ!」
こうして下心オンリーで苗を探すことを決めたハヤシンティウスであった。
次回!
ハヤシンティウスと黄金の苗
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