桜の木
桜はあんなにも清く美しく咲き誇るのに、どうしてそれを散らしてしまうのでしょう。
私は思います。
桜が咲くのは、それを見る人々の思いを受け取るからです。
桜が散るのは、その一つ一つの思いに共鳴し、涙するからです。
それは、今を生きていることへの、喜びの涙。
それは、嬉しいことも、悲しいことも、苦しいこともあったという、過去を慈しむ涙。
それは、離れ離れになってしまうけれど、貴方のことはずっと忘れない、どうかお元気で、という別れの辛さを堪える涙。
それは、いつかまたこの場所で会おうという、交わす約束の涙。
そんな個々の尊さの特異点、それが桜の木。