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2024ベストアルバム 今年の10枚(+1)
さて、前置きもなくいきなりですが10枚です。と言いつつ11枚です。
ほんとは次点を挙げていったほうを先に上げたかったんですが(そっちでは序文めいたの書いてる)もう少し書きたいなということでこっちからで。
それでは行きましょう。
今年のベストアルバム10枚
10位 Galileo Galilei MANTRAL / MANSTER
まさかのアルバム2枚同時発売、14曲ずつ合わせて28曲。余程バンドの調子が良いだろう事が伺える。アルバム自体も本当に良くて、MANSTER収録の「CHILD LOCK」ではパチンコ店の駐車場に置き去りにされた子どもが暑さで天国に行く様をたっぷりの皮肉を効かせて見せる問題提起も起こしたり、MANTRAL収録の「オフィーリア」では2分の短編小説のような淡く切ない物語が展開される。それらをギターロックにエレクトロを自在に混ぜ合わせながら自由に繰り広げられるガリレオワールド。高校球児が主人公と思しき「ブルペン」なんて来年の甲子園のテーマソングにしたら絶対ハマる。本当に尾崎雄貴の歌声にはどうしようもなく青春が宿っている。「5」では”2+2=5”や”2+2+2+2=愛”と歌われる。Radioheadだろうか、あるいはSupercarストロボライツだろうか、どちらも関係はないかもしれない。
いずれにしろ、今バンドは絶好調であるという事がハッキリと伝わる良作。
そんなわけで2枚合わせて選出ということにしました。
9位 Vampire Weekend Only God Was Above Us
この人たちて、いつの間にか世界的なバンドになったように感じる。別にそんな事無いのかな。とにかく、このアルバムは素晴らしい。
ピアノが結構存在感あったり、ゴスペルが入ったりいわゆるロックという枠から逸脱したイメージが全体的に広がっている。
なのでバンドというより、一種のプロジェクトめいたとこもあるんだけど(実際、現在はフロントマンのソロプロジェクトみたいという意見も見た)ここまで完成度高いと、そこに拘る必要もあまりないなと感じる。
アホみたいな感想として、洋楽ロックてやっぱかっけえよなあという結論になる1枚。
8位 柴田聡子 Your Favorite Things
元々、同業者や音楽メディアから高い評価を得ていた方だと思われるが、ここに来て大衆にも広がるようなアルバムが出た、という感じでしょうか。
結構びっくりしたのが有志が選んだオールタイムベスト邦楽アルバムで、オザケンLIFEや大瀧詠一ロンバケなど名盤が並ぶ中本作がランクインしていた事。
#邦楽アルバムオールタイムベスト100in2024
— JMX (@JmxMbp) December 15, 2024
ありがとうございました。100位から1位までのまとめです。 pic.twitter.com/4krmjyoAXh
いまどれほど多くの人が指示しているかが良く分かる事実であるが、不思議といえば不思議ではある。例えばSNSでバズったみたいな話は聞かなかったし、みんなどういう経緯で聞いたんだろうか。
まあ聞いてみれば、そういうトレンドのような物とは無縁であることはすぐに分かる。このちょっと甘く気だるい声は昔聞いた覚えがあったと思ったら原田知世だ、それもトーレ・ヨハンソンがやってた頃の。
アコースティック主体の良質なサウンド・プロダクション。元々の楽曲が良いのは勿論で、そこに加わるアレンジも必要最低限の絶妙な采配。
表題曲の歌詞で”君の好きなロックンロール”を”ろくんろーる”て歌うとこ、耳が気持ち良すぎる。この声が嫌いな人はあんまりいないんじゃないかな。
こういう書き方は限定されるからしたくないんだけど、とても音楽的なアルバム。こういった作品が評価されるのって凄く健康的だと思う、きっと彼女は今後もっと大勢の人間に長く愛される人になるでしょう。
7位 米津玄師 LOST CORNER
11曲という大量の発表済みの楽曲をまとめ上げるのに米津が行ったのは同じくらいの数の新曲を作るというストロングスタイルな手段だった。
当然ながら制作は中々に苦労したようだが、それだけの力作に仕上がった。
先行配信された1曲目の「RED OUT」からゆったりとしながらも焦燥感を募らせ、海外で再生数の記録を作ってしまった「KICK BACK」ではガナった歌声にチバユウスケがチラつく。アルバム恒例の客演ものでは、アイナ・ジ・エンドとの「マルゲリータ」は一度聞いたら忘れない彼女の声が彩りを与えている。
CMソングで散々聞いた「LADY」、フルだと割と印象変わった。めっちゃいい曲。
朝ドラ虎に翼の主題歌として、朝のお茶の間に流れた「さよーならまたいつか!」はドラマにハマりまくっていたし、改めて聞くと”空に唾を吐く”のフレーズが虎に翼と韻を踏んでる事に気づき、仕掛けの細かさに笑ったり。
シン・ウルトラマンのエンドロールで流れた時は椅子から転げ落ちそうになった「M八七」はやっぱり素晴らしく、”壊れていても構わない、僕のそばで生きていてよ”と包み込むような優しさを覗かせる同じ映画主題歌となった「がらくた」、壮大な「地球儀」から表題曲、ラストの「おはよう」の曲というよりSEを聞き終えた頃には大作映画を一本見終わったような満足感がある。
恐らく平凡な自分には想像もつかないようなプレッシャーとかあるんだろうな・・・と思う。大変だ、あまり身体に無理しないで末永く活動していって下さい。
6位 Number_I No.1
今年「GOAT」で鮮烈なデビューを果たした3人組、早くもアルバムである。
結成当初より世界標準を掲げており、日本的な要素を取り入れた「BON」などにそれが見て取れる。それからどこか人を食ったというか、どことない挑発的な態度も他のグループには余り見られないもので威勢の良さも好きな理由である。
今回にしろ、1stにして「俺たちがNo.1だ」という高らかな表明である。先行の「INZM」は初めて聞いた時は余りのダサさに腰が抜けたものだが、不思議と何度も聞
いているとそれが一周回って癖になる。
そんな中届いた初のアルバム、実はもっと攻め切ったトラックばかり並ぶのかと思っていたが、そこは前歴ありのグループでキッチリとそういうファンに向けられた甘めのミディアムなども用意して抜かりない。
地を這うような低い声で獰猛にラップしてみせる「HIRAKEGOMA」で幕を開ける始まりがまずカッコよく、「INZM」では気づいたらズマ、ズマ、ズズズ、ズマ・・・と口ずさんでしまう。”消したいと思ったことない過去 全部背負って突き通すGo”の堂々とした宣言は何度聞いても痺れてしまう。
前述したミディアムが続いたあとは再び攻撃モード、「Numbers」での畳み掛けるラップが気持ちいい。「Recipe」ではレイドバックしたバンドに乗せてスムーズにフロウしていく。ってこれ作曲岸優太て書いてるんだけど!?いい曲作るね…。そしてデビュー曲の「GOAT」、改めてこれは衝撃だった。ついこないだまでキラキラアイドルやってた人たちがめちゃ治安悪い音でラップブチかましてくるんだもの。どうした突然!?てなるよ。祇園精舎とニューヨークの路地裏が正面衝突したような「BON」はこの国でしか生まれないであろう、実にユニークな一曲。最後の「INZM」バンドバージョンはちょっと思ったより躍動感が無かったのが残念かな。
とにかく今は自分たちのやりたい事をやり続けていってくれたらそれでいい。そんでもって世界制覇するその時を今から楽しみにしてます。
5位 エルスウェア紀行 ひかりを編む駐車場
これはSpotifyから勧められて知った。男女二人組らしいが、音はしっかりとバンドサウンドになっている。これがめちゃくちゃ良い。
一曲目の静かな始まりから、一気にバンドが入ってくる所は非常にスリリング。温かみのあるボーカルの声もとても合っている。と思って聞いてたら、突然に「素直」では”僕ら心臓投げ合った仲なのに”などドキッとする言葉が飛び出してくるのが面白い。にしても「イマジン」に漂う名曲の匂いはなんだろう。
「天国暮らし」の短いながらも余韻の残る佇まい、「天才は今度」の軽快なリズム、ホーンが弾む「ロマンチックサーモス」…ダメだ、こんなん好きに決まってるじゃないか。
ラスト「ひかりの国」では”音のない革命ののろしも遠くへは届かない”というフレーズがある。美しいメロディーにストリングス、僕はこれはもっと届くべき音楽だと感じた。
何だか近いうちにタイアップとか取ったりして物凄くブレイクしそうな気配がするけどどうだろう、よくわからない。ただ、これから長く付き合っていきそうなバンドが見つかったことだけは確かなようだ。
4位 三浦大知 OVER
この手の企画では総じてダンスボーカルのアーティストは無視されがちで、かつてその中で例外的に殴り込みをかけたのが三浦大知の「球体」だった。
アルバム自体相当に完成度が高いのだけど、それ以上に驚いたのがそれをツイートした時のファンからのいいねの嵐。みんな評価されることに飢えているのだと肌で実感した。そんな三浦大知の6年ぶりのアルバムは、球体とは違うベクトルで、またしても傑作に。「Pixelated World」からやたらと不穏な空気が流れ始めるオープニングから低音ボイスのラップにゾクリとさせる「能動」、盟友KREVAのキレキレのラップが光る「全開」でのマイクリレーなど、全体的にとにかく初期衝動というか前しか向かねえぞ!という侠気が最高。
その後はクラブ映えするトラックに乗せて音楽とダンスが好きなだけ、やり尽くしたいと歌う「好きなだけ」やハイトーンボイスが冴え渡る「羽衣」など聞き所は数多い。チルアウトな「Sheep」や「Everything I Am feat.Furui Riho」の終盤の落ち着いたトーンも味わい深い。
タイトル通りではないが、完全に自己最高記録を更新してしまった。次は一体どんな景色を見せてくれるのか・・・三浦大知はヤベえっぞてとこもっと教えて欲しいし、その興味は尽きない。
3位 香取慎吾 Circus Funk
全曲コラボで固めた香取慎吾、これが本当に良い。
何が良いかって「音楽って楽しい!!」てエネルギーがずっと鳴り響いてるのが良い。
普通、こういった作品だとどこか企画ものめいた空気が漂ってしまうものだが、それを回避しているのはひとえに主役の声の強さ。
決して上手ではないんだけど、声がひとつのアイコンなんですよね。
LEO(ALI)やChevon、KroiやYaffleなどの人選には
一介の音楽好きの顔が滲んでホッコリするし中森明菜(!)とのコラボも◎
曲もバラエティーに富んでいて、おもちゃ箱をひっくり返したような~という形容がピッタリなカラフルなアルバム。捨て曲無し。
今年聞いた中で一番音楽と遊んでいたのは、他でもなく香取慎吾だった。
2位 BUCK-TICK スブロサSUBUROSA
フロントマンが突然いなくなってしまったバンドはどう進むべきか。
ニュー・オーダーのように名前もジャンルも変える場合もあるが、BUCK-TICKの場合はどうか。それが元々曲を書いていた今井寿と星野英彦が作詞とボーカルを兼任するという、シンプルだが中々勇気のある決断。
櫻井敦司がこの世を去ってまだ1年である、例えばゲストボーカルを呼んでアルバム1枚作ることくらいそう難しくはなかっただろう。
しかし、彼らは4人でバンドを続けることを選択した。まずはこの勇気に賛辞を送りたい。それから全体的に前向きな内容なのも素晴らしい。
冒頭の曲から今井が歌う『俺たちは独りじゃない』はどうしたって胸を打つし、アルバムのタイトル曲ではテクノ調の音に角張ったラップで『夢物語の実行犯 明るい未来の確信犯』と聞き手を鼓舞していく。
櫻井が愛して病まない猫が出てくる金属的な音が鳴る「夢遊猫SLEEPWALK」もファンには堪らないだろう。先行シングルの「風神雷神ーレゾナンス」で
『この世界で生き抜くことだ Boys don't cry ハートに火をつけろ』で前を向かせた直後に「冥王星で死ね」といきなり突き放すのも実にらしい。
「paradenomori」では星野がかつての盟友に向けたメッセージを発信して、優しげな今井の声が響く「絶望という名の君へ」ではまさに絶望しているファンに向けて語りかける。
アルバムのラスト、「黄昏のハウリング」ではBUCK-TICKのキーワードの一つでもある”PARADE”が登場する。まるでパレードは続くと、終わらないと歌っているかのようだ。インストも含めて17曲、実に72分もの大作である。
そして第2章にして、こんな凄い作品を作り上げたバンドの底力に心底唸らされる。
個人的には、チバユウスケと櫻井敦司が去った去年のあの時期はかなり憂鬱であって、まさかこんな風にバンドが続くだけでなくこのような傑作が聞けるとは全く思ってもいなかった。悲しかったけど、今はそれがとても嬉しい。
BUCK-TICK現象は続いていく。ワインとタバコとバラ、それから猫も一緒に。パレードは終わらない。
1位 SixTONES THE VIBES
アルバム『1ST』を聞いて以来、彼らをずっと追い続けてきたが、
4年目の4枚目でついにやってくれた!決定打でしょう、これは。
例えば、2枚目の『CITY』のような明確なコンセプトは無い、ただただいい曲を並べたらいいアルバムになりました、みたいな内容。
ド頭の大ヒット曲「こっから」で派手に始まり、”成功も失敗もAlright”と威勢のよい「Alright」からタイトル通りの「アンセム」になだれ込み、続けざまに「ABARERO」で暴れ倒していく様は内心そんな強い曲ばかりかましてマジで大丈夫か?という心配になるが、それは杞憂に終わる。
「Something from Nothing」で激しくシャウトしてみせたかと思えば、擬音シリーズ「DON-DON-DON」「Bang Bang Bangin'」ではケロケロボイスも楽しく踊り狂う6人の男たちを思い浮かべる。
横ノリが気持ちいい「SPECIAL」、コーラスワークが光る英語詞の「Seize The Day」もいいが、本当に好きなのが新鋭Zembnalが手掛けた「君がいない」
FIRSTTAKEでやった、ソリッドなバンドに乗せてやったこれが凄まじくカッコいい。
それぞれの盤に入ってる曲もどれも強力で、ライブでは悲鳴が上がる「DRAMA」やユニット曲ではジェシー×髙地優吾の”この歌で無かったことにならないってわかってるよ それでも届くように歌を歌うよ”のラインが心に沁みる「Blue Days」や青春ロックな京本大我×森本慎太郎の「希望の唄」もいいがやはり松村北斗×田中樹の「スーパーボーイ」を挙げないわけにはいかない。
動画が公開された際に一部のファンからスチャダラパーのクラシック「サマージャム」との類似性を指摘する声もありましたが、これは確信犯。
気だるげに交わされる会話のようなリリック、誰にもあった若かりし頃の無敵感、全能感をポップに切り取ってみせた佐伯ユウスケの手腕が光る。
全員が高身長でリードボーカルも取れるだけの歌唱力もある、最近はドラマにバラエティにと活躍の場を広げ続けている。この6人こそがまさにスーパーボーイでしょう。最近はこーちくんの声がお気に入りである。
こんなに褒めちぎるほど良いアルバムなのに、お察しの通り配信などで聞くことが出来ないのは非常に残念なことである。TSUTAYAもどんどん潰れてるご時世、レンタルして聞いてと言うのも何かなあとなるし、今の御時世数千円もCDなんて時代遅れのもの買ってくれなんてとてもじゃないが言えない。
せめて過去作でいいから、順次何かしら動いてたりすると嬉しいのだが。
途中変な感じになったけど、間違いなく今年一番聞いたのはSixTONESだったし、初めて見たライブもエンタメど真ん中でとにかく最高だった。
来年はグループ結成から10年という大きな節目を迎える。既に恒例になっているアルバムも年明けに発売、更に規模を拡大したツアーも行われる予定だ(僕はチケット持ってません涙)
この先もこの男たちには目を離すことが出来ない。どんどんデカくなっていく姿をこっから先も見せて頂きたい。
終わりに
さて、2024年の僕はといえば、こんな気分でした。あなたはどうでしたか?
来年も素敵な音楽とたくさん出会えることを祈って。