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AIと著作権-4
今回は、「類似性」と「依拠性」についてです。
著作権について争われる時、主にこの2つが重要になってきます。
「類似性」というのは、元の作品にどのくらい似ているか?
「依拠性」は、過去に元ネタの作品に触れたことがあるか?
…といった意味です。
類似性。
こちらはわかりやすいです。
たとえば、前回例にあげたドラえもんであれば、自分が描いた絵がドラえもんにそっくりだと類似性ありと判断されますです。
問題は、依拠性の方。
簡単に言えば、「あなた過去にドラえもんのマンガを読んだり、アニメを見たことがありますか?」という質問に「はい」と答えれば、依拠性ありと判断されます。
ただし、チラッと見たことあるだけだと、正確に再現するのは難しいだろうし、子供の頃に見ていてそのことを忘れていて、潜在的に影響を受けているだけならセーフになることもあって、結構ややこしいです。
たとえば、ドラえもんのマンガを横に置いて、それを見ながら絵を描いて、自分の作品として発表したら、これは完全にアウトです!もろに依拠性ありです!
で、重要なのは、著作権侵害で裁判に訴えた時に認められるには、類似性と依拠性の両方を満たさないとダメという点なんです。
類似性だけでもダメだし、依拠性だけでもダメ。
たとえば、ドラえもんの絵を横に置いて、それを見ながら自分なりのイラストを描いたとします。
ところが、完成した絵がドラえもんとは似ても似つかぬしろものになってしまった。
この場合は、著作権侵害にあたりません。
なぜなら、依拠性あるけど類似性がないから!
逆に、偶然にも自分の描いた絵がドラえもんそっくりになってしまった。これまで、原作のマンガもアニメも見たこともないにもかかわらずです。
この場合も著作権侵害にはあたりません。なぜなら、依拠性がないから。
…とはいえ、ドラえもんなんて日本人なら誰でも知ってるし、有名過ぎるキャラクターなので、大抵はこのいいわけは通りません。
ウルトラマンとか仮面ライダーとかガンダムなんかを勝手に描いて発表すると、やっぱり裁判になった時に負けてしまうでしょう。
ただ、インターネット上に無料で公開しているイラストや小説など、依拠性を証明するのは非常に難しくなります。
「そんなもの見たこともないし読んだこともないよ」と言われたら終わりですからね。
また、類似性に関しても、元の絵にそっくりなのに著作権侵害に当たらない時があります。
なぜか?
たとえば、ポケモンにカモネギというキャラが出てくるんですけど、カモネギに非常によく似たキャラクターが別のゲームに登場しても、著作権侵害を認めさせるのは難しいです。
なぜなら、誰が描いてもカモをモチーフにしたらこういう絵になるよねと判断されるから。
同じようにイヌとかネコとか金魚をモチーフにしたキャラは、誰が描いても似たような絵になってしまう。
だから、自然界に存在するものをモチーフにしたキャラは、著作権侵害になりづらいです。
あとは、だるまさんだったり、こけしだったり。誰が描いても同じような絵になってしまうものは。
なので、実際に著作権侵害にあたるかどうかを判断するのは難易度が高いんですね。
最終的には、裁判官のさじかげんひとつで決まることになります。
しかも、裁判を起こす方も大量に資料を用意しなければならない。まず、元の作品を自分が作ったと証明するところから始めないといけないので。
…というわけで、「著作権!」「著作権!」と、世の中ではよく騒がれているんですけど(特に生成AIが本格的に使われるようになってからは)
実際に、裁判まで起こされて敗訴になることは、ほとんどありません。
「な~んだ、じゃあ、何も心配することないじゃん!どんどん人の作品をパクってやれ!」と思ったそこのあなた!
そりゃ、よくないです。
よくないですけど、現実にはこういうことがよく起こっているんです。特に二次創作と呼ばれる世界では!
この二次創作が、また複雑です。
なぜなら、法律には違反しているけれども許されているという状態が長く続いているからです。
というわけで、次回は二次創作のお話です。
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