先見の明はあるけれど…
この時の青年は、会社にとって非常に有用な人間にもなり得たんです。それは、このような能力を持っていたから。
「長期に渡って、会社に利益を生み出し続けるシステムそのものを構築できる」
ところが、扱い方を失敗すると、組織を内部から破壊するガン細胞にもなりかねない。そういう存在。
これは、この後ず~~~っと続いていきます。世界中を飛び回り、どのような人と出会い、どこに行こうとも、同じコトを繰り返し続けます。
「うまく扱えれば、人や組織に大きな利益を与える。けど、扱い方を間違えると逆に害を与える」
そういう人間。
それに加えて、青年には致命的な欠点がありました。何かというと…
「先見性はあるけど、行動力が伴わなかった」
簡単に言うと「口だけ人間」だった!
青年に与えられた資質は、イノベーター。遥か遠くに燃えている灯(ともしび)を発見し、人々に伝える役割。
確かに、物を見る目はありました。早くから最新の技術に目をつけ、人々が気づかない抜け道を目ざとく見つけ、才能ある隠れた人材を発掘する。そういう能力。
でも、自分で行動するのは苦手だったんです。「あ、もう攻略法はわかったからいっか!次、行こう!次!」ってなりやすい。
青年が最大限力を発揮できるのは「その空想力や発想力を実行できる人」と出会った時。実務能力の高い人と組んだ時に初めて能力が生かされる。1人でいる時は「ただの空想癖のある人間」に過ぎなかったんです。
だから、仲間を必要とした。たとえば、舞台「苦悩教室」の時、そうであったように。1人じゃ無理なコトも、何人もの優秀な仲間たちと協力することで成し得たのです。
少年時代に夢見た「伝説の悪魔の物語」で、魔界の王が仲間を必要したのは、そのような理由からでした。
※この時のエピソード
どんなに強大な力を持っていたとしても、1人ではできないコトがあるんです!仲間と協力しないと!
それに、破壊するのは簡単だけど、創造するのは難しい。
世界を破壊するだけだったら、もしかしたら、たった1人でも実現できたかもしれません。けれども、何かを生み出すには仲間を必要とします。見ている夢が大きければ大きいほど、現実のものとするためには、より多くの優秀な仲間を集めなければなりませんでした。
…というわけで、この時の青年は能力をいかせませんでした。
会社が求めているのは「時代の遥か先を見通す力を持った者」などではなく、目の前の仕事を淡々とこなし、他の人たちよりも「ほんのちょっとだけ売り上げを伸ばしたり利益を出したりできる人」だったからです。
あるいは…
あるいは、潜在的に会社が必要としたのは「先見の明のある人間」だったのかもしれません。でも、誰もそのコトに気づいてはいませんでした。店長も、他の社員たちも、パートさんたちも。誰も、誰も。
よって、青年の持っている特殊能力は握りつぶされ、凡庸な能力へと塗り替えられていきました。
世界的に見れば、実にもったいない話ですけどね。ま、仕方がありません。会社ってのはそういう所なんです。1企業にできるコトなんて、そんなものなのですから…
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。