「トミー富田さん」と「ハーレムのピカソ」
さて、あんなに怖い目にあったハーレムなんですが。実はツアーで訪れたこともあるんですよ。
ことの発端は、旅に同行してた「竹ちゃん」でした。
基本的に青年と弟と竹ちゃんは別行動を取ってたんですけど、たまに一緒にどっか行くこともあったんです。「キャッツ」とか「ミス・サイゴン」を見に行った時みたいに。
で、竹ちゃんが「ゴスペルが聞けるツアーがあるから、ゴスペル聞きに行こうよ!」って言うわけです。当時、青年はゴスペルが何か知らなかったんですけど。「おもしろそうだな~」と思って、ついていくことにしました。
それで、「地球の歩き方」っていうガイドブックがあって、海外を訪れる日本人なら、大抵誰でも持っていくヤツなんですけど。その「地球の歩き方」に3つの「ゴスペルツアー」が載ってたんですよ。
1つは大手の旅行代理店が主催してるヤツ。もう1つは中堅の旅行代理店が紹介してくれるヤツ。最後の1つは、明らかに個人がやってるんですよ。しかも、「トミー富田」とかいう怪しい名前で。
みなさんだったら、どれを選びます?
この物語をここまで読んできた読者の皆さんならわかると思いますけど、コンマ数秒で青年はトミー富田氏に決めました!
「竹ちゃん!これしかないだろう!絶対、ここ行こうよ!」って。
確か料金も結構安かったんですよ。しかも、怪しげな個人のツアーでしょ?トミー富田っていう名前からして、絶対何か起きそうなんです!もう3択じゃなくて1択ですよ!
「やっぱそうなる?そうだよね?」って竹ちゃんも笑ってました。
で、交渉の方は竹ちゃんにまかせっきりだったんですけど。ツアー当日、案の定、いろいろ起こるんですよ。
青年が眠い目をこすりながら、弟と竹ちゃんと一緒に集合場所のホテルロビーに集まると、いきなり遅刻してる人とかいるんです。日本人も旅先だと結構いい加減なんです。
で、「もう、しょうがないから置いてくか…」みたいな話になったんだけど、15分くらい過ぎてどうにかこうにかメンバーが集まって、貸し切りのバスに乗って出発したんです。
最初に連れて行かれたのが、「アポロシアター」ってとこで。外から見たら古ぼけた建物なんですけど、実はここ超有名な劇場で、名のあるアーティストたちが舞台に上がって演奏してきた場所なんです。
アポロシアターは外から眺めただけだったんですけど、次に連れて行かれたとこはちゃんと中に入れてもらえました!どこかっていうと…近所のレコード屋さんなんです。
「は?なにこれ?なんで個人がやってる商店街のレコード屋なんかに観光に来てるの!?」って思ったら、そこに別のおじさんがやって来て、トミー富田さんが「いや、この人は凄い人なんだ!」って言うわけですよ。「この商店街のシャッターに絵を描いて回ってる偉大な人物で『ハーレムのピカソ』と呼ばれてるんだ!」って言うんです。
で、「このお店でレコード買ったら、今ならハーレムのピカソがサインしてくれるよ!」とか言ってるんです。
怪しさ満点でしょ?
「それトミーさんが勝手に呼んでるだけなんじゃないの?最高過ぎるw」って思っちゃって。この時点ですでに「ツアー料金分、回収したな!」「やっぱ3つの中でトミーさんのツアー選んで正解だった!」って思ってたんですけど…
こんなの序の口でした!本番は、ここから!(次回に続きます)