押しかけ女房「美嘉ちゃん」
チガサキ君との恋に破れた美嘉ちゃんは、再び青年にターゲットを絞ってきます。
これ、何度かあったんですけど…最大のチャンスは3回です。
1度目は「もう田舎に帰る!」みたいになった時。
恋に破れ、役者としても上手くいかず、根ヶ谷さんも家から出ていったので、2人で住む用の部屋ってもう要らなくなっちゃったわけじゃないですか?
だから、美嘉ちゃんも東京での生活をあきらめて遠い実家に帰る気満々だったんです。でも、そこで最後の勝負を仕掛けてきました。
この物語の主人公である青年に「家に来て欲しい!」と頼み込んできたのです。で、しぶしぶ行ったわけですよ。例のごとく。
そしたら、部屋に布団を敷いて待ってるんです。もう明らかにそういうコトですよね?
でも、断っちゃったんです。っていうかあいまいな態度を取っちゃった。代わりに思わせぶりなセリフをはいちゃって…
「ああ~あ、君が田舎に帰ったら寂しくなっちゃうな~」みたいなセリフです。この辺が、青年の持つ特殊能力「ハンズ・オブ・ミダス」の迷惑なとこでもあるんですけど…
「物語としておもしろくしよう!」とし過ぎて、人間関係をどんどんややこしくしていっちゃうんです!
そんなコト言われたら、あきらめきれないでしょ?
だから、美嘉ちゃんも田舎に帰るのはやめにして、近くに安いアパートを借りて東京に住み続けることに決めちゃいました。4畳半風呂なしのやっすいやっすいアパートの1室ですよ。以前に青年が住んでたような。
で、着物着てお酒を出すようなお店で働き始めて。そこそこのお給料とかもらってたみたいです。
それから、夜の公園を2人で散歩してると「こんな夜には人肌恋しくなっちゃうな~」みたいなコトを言い始めるわけです。
これ、まさにドラマですよ!青年が望んだ通りの展開!「物語」が生まれてるんです!
元々、美嘉ちゃんってギャルっぽい感じの子だったんですけど。キャミソール(露出度の高い服)とか着てて、性的に男を誘っちゃうみたいなとこがあって…
で、青年よりも、むしろ他の男たちの方が性的フェロモンにひかれて近寄っていくんです。確かキザオ君も「美嘉ちゃんいいな~」みたいに言ってたはず。
でも、美嘉ちゃんが好きなのは青年!だから、ますますややこしいコトになっていっちゃう!(同時に物語としてはおもしろくなっていく!)
ところが、それが行き過ぎちゃって、段々エスカレートしていきます。
ある時、演劇の話をするためにボランティアのメンバーが集まる会合があったんですけど…
みんながいる前で「あたし、押しかけ女房でしょ?」みたいなコト言い始めるわけです。
青年は内心「困ったな…」みたいに思ってるんです。だって、ほんとに好きなのは「あの人」の方なんだもの。今やってる演劇だって、最終的にはあの人に認められたくて一生懸命に準備を進めてるんだし。
さらに次の機会はですね。もっと酷いです!
ある夜、美嘉ちゃんが青年の家に泊まっていったんです。でも、手を出さなかったんですよ!隣に寝てるのに!
もうフツーに考えて、あり得ない事態でしょ?でも、結果的にそうなっちゃった!
あんまりにも強引に迫られちゃってダメ過ぎたのか、心の底であの人のコトを想い続けてるので、最後のガードが突破できなかったのか。いろいろ複雑な心境だったんですけど、事実だけ語ると「手を出さなかった!」
「据え膳食わぬは男の恥」と申しますが…どうやら青年は男ではなかったようです。