北神圭朗(有志の会)×小川榮太郎「憲法制定権は国民の強い権利 必要な改正をきちんと国民投票にかけるべきだ」
【初出:『湊合』令和六年夏号(2024年6月刊)所収「特集 憲法改正――各党党首に訊く」より】
小川 本日は宜しくお願いいたします。北神さんは有志の会の事実上の幹事長役との事で、政党党首ではないのですが、憲法改正を牽引するホープと思っています。安倍晋三元総理とも近い御関係でしたし、憲法審査会でも大いに発言されていますね。今日は有志の会の憲法改正についての見解を率直に伺えればと思います。それにしても憲法審査会は実に進まない、遅いですね。
北神 何回も同じ事を言わないと話が元に戻るんですよ。この間の四月補選で立憲民主党が議席を増やしたでしょう。すると憲法審査会でも形式上、立憲民主党の委員を一名増やすことができるようになって、その分、少数会派から一名委員を減らす、という状態になったんですね。それでありていに言うと改憲派の私を追い出そうとしてきた、と聞きました。そこはうまく各党と協議して最終的に残ることができましたが、とにかく憲法審査会が得てして改憲阻止勢力の攻勢に受け身になっている現状があります。
小川 立憲民主党が、議論を戦わすより北神さんのように議論ができる議員を外そうとする。議論を封殺するという傾向ね。しかし、今や国会も憲法審査会も改憲派が多数じゃありませんか。護憲派というのも死語みたいな気もするけど、この特集で、その護憲派という側と言える立憲民主党と日本共産党は私との対談インタビューを断ってきました。
北神 そうでしょうね……。
小川 私としては、憲法改正にあくまで反対だという政党の発言もしっかり掲載して、全会派の現時点での主張を全て公にしたかったのです。
私のやり方は簡単明瞭です。言論人としては自分のスタンスを隠さずはっきり発言する。しかし主催する言論空間は反対意見も含め、多様な言論が交差する公平な場にしたい。彼らに出て頂いたとして、彼らに不利な議論をあえて振ろうとは思っていませんし、まして彼らの発言を歪めることなど考えてもいない。
互いに堂々と議論の土俵に乗る。その上で国民に判断してもらう。この民主主義の原則が、国民最大の権利である憲法改正議論で脅かされている。議論自体を妨害したり、議論を戦わすことから逃げたりという姿勢は許されないのではないでしょうか。
私自身が憲法改正推進派の言論人ですから、憲法改正に前向きの会派のみに応じていただく結果となったのは大変残念です。
しかし改憲阻止勢力が、自分の憲法観を堂々と披歴するつもりがないというのが今回明らかになった。戦後政治史の大きな転換期だという証明にもなったように思います。
今まで改憲しようというのは自民党だけで、野党は皆改憲に反対。マスコミとアカデミズムはみんな「九条を守れ」の大合唱。
だから自民党は改憲という党是を努めて隠してきました。安倍元総理がやっと自衛隊を憲法にしっかり書き込もうと発言されたのがたった七年前です。
ところが、その後の七年間で、こうした孤立した自民党という状況からあっという間に改憲派が主流になりました。自民、公明、維新、国民民主、有志の会と五会派が改憲派となった。
なぜ審査会の与党枠に入っているかの真相
北神 私は民主党で当選した時から改憲派だったんです。初当選から日本国憲法に関する調査特別委員会(当時)に所属していた。ところが当時の民主党も今と同じく憲法問題で駆け引きばかり。そもそも審議しない。そういうことも一因となり無所属になった経緯があります。今回も、本当なら野党枠で憲法審査会の幹事会に入るのが普通ですけど、私は与党枠に入っているのです。
実は、維新も国民民主党も与党枠。これはなぜかと言うと、野党枠に入ると立憲民主党と共産党に仕切られてしまう。審議入りしても野党枠では最初から審議にさえ顔を出すなと言われます。それで与党側に入った。
小川 実に怪しからん。そういう話は国民誰も知りませんよ。内幕のそういうのも今日はしっかりとお伝えください。
北神 民主党――今の立憲民主党――の中には今でもそういう党のあり方に疑問を抱いている方はかなりいると思います。ちょっとでも議論を進めようとしたり、独自の憲法改正案を出そうとしても、それを止められてきた。
小川 立憲民主党の中でそういう事が起きるんですね。
北神 そうです。
小川 立民の憲法審査会の有力メンバーは改憲阻止派ですよね。
北神 今は完全にそうですね。
小川 やる気がないと言うより積極的に国民投票に持っていくこと自体を阻止する意図があるように思いますよ。
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