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岸田文雄×小川榮太郎「緊急事態対応・自衛隊明記は正に喫緊の課題」

【初出:『湊合』令和六年夏号(2024年6月刊)所収「特集 憲法改正――各党党首に訊く」より】

憲法改正への思い

小川 本日はよろしくお願いいたします。総理は就任以来、国政全体について、強力な体制全体の転換、改革を図ってこられたと思います。そして、その仕上げの一つの大きな転換点として、憲法改正について、御自身の総裁任期中の実現への意欲を再三表明されています。私どもから見ても、ある意味で「王手」一歩前までは来たという印象です。

 実は国民世論も憲法改正について「王手」に近づいているのです。今年の憲法記念日の読売新聞の世論調査で憲法改正賛成が63%、朝日でも53%と過去最高です。読売に至っては9条2項改正についてさえ53%が賛成ですし、一方の朝日で自衛隊の憲法明記がやはり51%。

 そこでお尋ねします。日本政府の長、特に自衛隊の最高指揮官でもあられます。そのお立場と、それから自由民主党総裁、ここの切り分けは難しいとは思いますが、あえて国民に率直な言葉で分り易く、憲法改正への思いをお話しいただければと思います。

岸田 憲法は、あるべき国の形を示す国家の基本法です。社会が大きく変化していく中で、現行憲法が今の時代にふさわしいものであり続けているのか。これを考えていくこと、考え続けていくこと、これが大変重要だと思っています。我が国が民主主義、そして平和主義国家として礎を築く上で、大きな役割を果たしてきた現在の憲法の三大原理、すなわち国民主権、基本的人権の尊重、そして平和主義。この基本理念は今後も揺らぐことはないと考えておりますが、現行憲法が施行から77年の間、一度も改正されていない中にあって、時代にそぐわない部分、あるいは不足している部分、これについては果断に見直しを行っていかなければなりません。

 また、自民党の立党の精神――「政治は国民のもの」という立党の精神ですが、憲法は日本の法典の中で唯一、国民投票が定められた法典です。その憲法改正、これは国民自らがあるべき国の形を真剣に考える、そして政治に直接参加して意見表明を行う、こうした改革を実現していく最大のチャンスであり、国民の政治参加、国民主権という観点からも大変重要な意義があると考えています。

 小川さんから立場の話がありましたが(笑)、内閣総理大臣の立場からは、憲法改正について具体的な内容や進め方について直接申し上げることは控えなければならないと考えています。しかし、今般の憲法改正の議論では、安全保障や緊急事態の対応など、政府として重要なテーマが取り上げられています。これらについて、自民党としても引き続き改憲に向けた議論をリードしていきたい考えです。社会が大きく変化し、憲法改正がますます先送りできない重要な課題となる中、安全保障に関わる自衛隊、統治機構のあり方に関する緊急事態条項、これは今まさに国民に問うふさわしいテーマであると思っています。

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