移りゆくもの
昼間は暖かだったが、午後になって急速に気温が下がってきた。
私のバイアスかもしれないが、櫻の開花が進むと急に寒くなる夜があったりして軽い風邪をよく引いていたような記憶がある。
櫻はあまり好きな花ではなかった。
子どもの頃は、小学校から自宅までの帰り道に大きな櫻の木があってその下を通ると大量の毛虫に降りかかられてきたり、大人たちが花見に興じるのを鼻白みながら見ている少しひねくれた子どもでもあった。
それでも少し大きくなってからは、自宅の裏山にあった浄水場の山道を櫻絨毯を一人歩いて物思いに耽ったりしたこともあった。
どちらかというと、物寂しくなる思い出の方が多いようだ。
今年は櫻を見ながら少し急かされるような思いがしている。
それは盛期短い木々に煽られるせいなのか、自身の中に湧きあがる何かのせいなのか、よく分からないが、少し年を経てきて思うようにサクサクとは動けなくなってきたことによるものなのかもしれない。
心に花を。移りゆくものを追いかけ過ぎず、自分だけの花をゆっくりと咲かせてゆこう。